9月18日 解体間近のみすずビルで
暗くなった部屋に踊り子によって灯りがともされる。瓶の中の灯り。ここは水の底か奥深い洞穴か。ゆっくりとたゆたうような動き。もうすぐなくなってしまうというビルで交わされたであろう幾多の人の思いと向き合っているのだろうか。突然はじける。音、音、音。しなやかな腕、踏み出す一歩。力強さ。佳央理さんのダンスは軽やかだが地面にしっかりと立っていて、古来踊りが自然や神々との交流のためにあったことを思い出させる。音楽もまたしかり。北さんが音を鳴らすごとに、ビルに残っている記憶が解き放たれていくように思った。
私に映る佳央理さんは、伝承のお話に出てくる女の子のよう。自らの力で前へ前へときっぱりと進んでいくそんな女の子達。(もちろん迷いや悩みもあるのだろうけど、ね。)魔物に捕まってしまった仲間を勇気と知恵を持って救い出した豆粒のように小さいマメ子。魔女バーバヤガーの家で母親の祝福を持って立ち向かうワシリーサ。そして、羊頭にされてしまったアンの手を引き、幸せを手に入れるために旅に出たケイト。私は世界各国の昔話を読むたびに、その端々にかおりさんを見かけるのです。
(もう2週間前になるのですが、四谷三丁目にあるルーニィで、ここの管理人である佳央理さんのダンスを見ました。学校のことはひと休み。)
☆今月の本:
『子どもに聞かせる世界の民話』(実業之日本社)より「マメ子と魔物」イランの昔話
『うるわしのワシリーサ』(ほるぷ出版)ロシアの昔話
『おはなしのろうそく10』(東京子ども図書館)より「くるみわりのケイト」イギリスの昔話