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3F/長期滞在者&more

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長期滞在者

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表現とは世の中の常識からちょっとはみ出たりして、多くの人の無関心なことにさざ波を送るようなもので、ある種の違和感を生じさせるようなもの。それなのに、展示構成や、セレクションの助言の現場では、会場全体のバランスを重視する傾向が強い印象を持ちます。はみだすことを是としていたはずが、なぜ土壇場の発表直前に急にバランス感覚を持ち出してくるのか不思議で仕方がないのです。もちろん、練り上げられた構成、配列も含め、論理的に構築された見事な展示に息をのむこともあります。しかし、それは、展示構成の検討材料の中で、最も重視する部分ではないと思います。調和を起点に作品の編集をはじめると、本質がぼやけてしまうことの方が多い気がするのです。

ギャラリーにおける展示構成の検討は、写真集の並び順とは違って、壁面をひとつの単位として考えていくつかのゾーンを作り、最も適切だと思う組み合わせを検討しています。企画展であっても貸し展であっても、作家さんとの打ち合わせでは、まず、絶対に外せない1~3枚程度のメインイメージを固めることを考えてもらいます。
会場の広さによって展示枚数が変化する写真展の場合、15枚でも40枚でも、あるいは、雑誌に2頁掲載が決まったときなどは限りなく1~2点でそのシリーズを言い表さなければならないのが、写真作品の宿命なので、数が多くても少なくても必ず含まれるイメージは何なのかを最初に考えてもらうことはとても大事なことだと思っています。

展覧会に足を運び、いくつかのイメージが頭から離れないときがあります。足を運んだ翌日には、きれいにすべて忘れてしまう展覧会も数多いですが、2、3枚の写真が次の週になっても、翌月になっても、自分の心に落ちてざわざわとする、そういう展覧会もあります。しかし、どんなに良かったと思う展覧会でも、30~40枚にもなる作品の集合体を、展示順序からすべて、ちょっと小一時間観ただけで、スキャナーのように記憶できる人はいないでしょう。であるならば、これだけは最低限他人の心に落としていくぞと、決めた数点の核になるイメージを明確に持つということ。重要なポイントをどこに置けば適切なのかを考えることから、構成を立ち上げていくと、手がかりが掴みやすいのです。

たくさん並んでいる中から、最終的にいくつかの枚数のイメージが誰かの心に届くのであれば、結果として見てくれが揃っていてもいびつでもどちらでも良いと思います。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

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