朝起きると、何も着て無く、朧げに昨晩初めて会った人と飲んで一緒にホテルに入ったことを思い出す。
急いで会社に行く用意をしなあかんと思ったが、今日は土曜日だったのでホテルの近くにあった喫茶店でモーニングを一緒に食べる。

昨晩のアルコールが抜けない身体にコーヒーが効いて、前日の記憶を辿りながら、若干の照れくささと共に喫茶店にふさわしいような会話をして相手の職業も知る。昨日既に同じ質問をしていたかもしれないが。
改札で別れた後に連絡先を交換していないことに気付く。
夜に高校時代の同級生が上京するから会う約束をしていたことを思い出す。
家に1回帰るのは面倒だからと、通勤ラッシュの無い休日の電車に乗って知らない街に向かう。
ほどよい陽気とほどよい車内の空調でうたた寝をしていて、気付くと県を跨いでいた。

降りたことの無い駅で降りて、歩いていると真っ昼間からやってる銭湯を見つける。
タオルをレンタルして、男湯に入り湯船につかる。
なかなか入ったこと無いような熱さで、うぉーと声を上げそうになるがこらえる。
長居できそうにない熱さだなと思っていたら、和物の入れ墨が背中にびっしり入った関西弁のおっちゃんに話しかけられる。
出身を告げると、「昔はよくその近くでブイブイ言わせてたわ」という回答が返ってくる。
母校の通学路の傍に日本最大の組事務所があったので、自動的におっちゃんもその組だったんだろうと思った。
震災のときは誰よりも早く動いてくれて有難うございましたと御礼は伝えなかった。
身体と脳がふやけるくらい湯に浸かった後に銭湯を出ると、これまた昼間っから開いている立ち飲み屋があり、ついつい引き寄せられ、暖簾をくぐる。
とりあえず赤星の瓶ビールを頼んでいると、カウンターの奥にさっきの関西弁のおっちゃんがいて、目線で挨拶する。
湯船の中よりもおっちゃんが粋に感じた。
旅先で訪れると沈没してしまいそうな平和な街だ。

銭湯でのぼせた後の酒は回るのが早く、やってもうたなーと思いながら歩いていると芝生の公園があり、そこで昼寝をした。
とてつもなく目覚めがよく、スマホを見ると1時間近く寝ていたことに気付いた。
そこから電車で都内に戻り、学生街にあるミニシアターでロシア映画の「動くな、死ね、甦れ!」を見る。
自分の日常が小さく感じられ、バイタリティと活力をもっと付けなければと思う映画だった。とりあえず、毎日亜鉛を飲もうとなぜか思う。
映画館を出るとパスモを落とした女性がいたので、急いで拾って渡す。
渡したらとても感謝された。そこからせっかくなら映画の話をすればよかったと思った。
最近落とし物を届けたい欲が強く、それは自分がよく落とすからその罪滅ぼしなのか、もしくは人の安堵した表情を見たいからかよく分からない。
夜、新宿で高校の友達と数年ぶりに再会して、今日銭湯で会った墨の入ったおっちゃんの話をしたら、「そんな口の軽いヤクザ、組でやっていけへんやろ。パチもんやろ」と一蹴された。
そういえば小指はしっかりと付いたままだった。
子どもが生まれた友達や転勤で海外に行った友達の話をひとしきりして、話が心地よく盛り上がる程度の数杯のお酒を楽しみながら、終電まで1時間以上も余裕を持って解散した。
数年前までは終電関係なく飲んでいたのに少し寂しさを感じる。

土曜だしそこから1人でもう一軒行こうかと思ったが、朝の不意の目覚めからの熱い銭湯や重いテーマの映画やらで色々身体が疲れていたので、早めに家に戻り、そのままベッドに倒れ込んで翌日の昼まで寝続けた。
みたいな、約束と偶然が重なり合うようなどうしようもない日々を経験して日記として綴りたいなと思う今日この頃。
