長期滞在者
この家は2011年の12月に生まれた。 震災があった年。 誰もがそう記憶している。 振り返ってみれば、この家は絶望しないために生まれてきたのじゃないかと思う。 便利な場所にあるから、誰かと住む方が経済的だから・・・ この家が必要とされてきた理由はたくさんある。 けれど実は、希望をつなぐ場所として生まれてきたのではないかな。 近頃、そんなふうに思う。 今、この家はどう変わっていけるだろうかと考えてい…
長期滞在者
毎年12月は、その年のまとめのような記事を書いてきた。今年、わたしの人生は、「自己肯定感」と「病気」を軸にして、目が回るほど様々なことが起きた。「自己肯定感」については、山ほど書きたいことがあって、到底一つの記事には書ききれない。だから、今日はつい最近考えたことについて書きたいと思う。 つい先日まで、アパートメントのリニューアルのためのクラウドファンディングが行われていた。多くの方のご支援のおかけ…
長期滞在者
今年11月、東京からオランダはアムステルダムに移住をした。 計画を立てたのは今からちょうど1年前のこと。妻と2人で、リビングのテーブルで将来設計を話し合った。彼女はイギリスで幼少期を過ごし、オーストラリアの大学を出て、東京の大学院に入るために帰国してから早15年以上が経っていた。彼女の周りは多国籍であることはさることながら、誰も彼も1か所に定住することなく、一定の時間が経てば次の場所へと移り、新し…
長期滞在者
花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社) 店に行けば真っ先に小説・エッセイのコーナーをチェックする。そんな人で、この表紙に見覚えがない人はきっといないだろう。 花田菜々子さんの『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』、通称『であすす』。発売されたのは2018年4月のことだけど、…
長期滞在者
もうりひとみさんを撮っていたら、いつのまにかもうりさんに描かれていました。 写真もクロッキーも目の前のものを盗みとるようなものだから、この二人はお互い同意の上で、何を盗みあっているのかしら。 (もうりひとみ・画家/絵本作家 https://apartment-home.net/author/hitomi0apartment/) ・・・・・・ [ 告知 ] ここ(アパートメント)に書かせていただい…
長期滞在者
買ったばかりの本を読みながらコーヒーを飲むようなお店は都内に限らずあちこちにあると思うけれど、今日は図書館で借りてきた本をその場で読みながらコーヒーを飲むという経験をしました。ここは、外部持ち出し不可で、全て開架式になっているライブラリーで、各所に配置された学習スペースで読むスタイルなのだが、併設のコーヒーショップには持ち込んでも良い、ということなので、早速いくつかの本を手に座りごごちの良いソファ…
長期滞在者
地元新宿の酉の市で熊手を買うと、年末という実感が一気に押し寄せる。 小さい頃から我が家では父親が商売繁盛の熊手を買っていて、 私もラジオDJの仕事を始めた頃から、自然に買うようになっている。 名前を入れた熊手を握りしめて、お店の人の拍子木の音に合わせて、三本締め。 「来年も良い年でありますように!」と言葉を交わす。 また来年ここで熊手を買えるように、仕事をがんばってしっかり稼ごうと気持ちを引き締め…
長期滞在者
わたしにとって、言葉はこの世界の真実であり、冷たい輝きを放つ美しいものである。言葉を口に出そうとするときには、それが自身の思いや世界の景色を正確に映しとったものであるかが気になり、頭のなかで何度も反芻した言葉を、けっきょく口に出すことなく、押し戻してしまうことがほとんどだったりもする。 人と1対1で話しているときには、頭のなかでじっくり言葉を転がして吟味する時間をとれるけれど、3人以上になると、わ…
長期滞在者
家を作ったら、その次は生活を作らねばならない。 ひとつひとつのことが当たり前で、時に退屈に、時に尊く感じられる。 何十年も経った時にこの日々を振り返ったら、きっと温かな記憶として取り出されるだろう。 キラキラと輝くのではなく、ステンドグラスのように柔らかい光を呼び起こさせてくれるはずだ。 だから私はその輝きをひっそりと思い描きながら、生活している。 11月1日(木) 燻製のために網を100円ショッ…
長期滞在者
わたしは服をつくるのが好きだ。事実、日常的に身につけているワンピースは、すべてミシンを踏んでつくったものだ。服をつくると、心底楽しいし、わくわくする。服をつくる前の工程も楽しい。何色の、どんな布で作るか、どんなアレンジをしようか、どんな風にしたらより似合うものになるのか、考えを巡らせることは、なんとも言えない幸福感を与えてくれる。 それに、自分自身の技術が少しずつ上達していくのがわかるし、自分にと…
長期滞在者
若い頃自分に期待していたようには、どうやら僕の感覚というのは鋭敏でも特殊でもなくて、きわめて凡庸なものであるということを悟った(ようやく最近 笑)のだが、きわめて普通の人間である僕が、写真みたいなものを撮る意味があるのだろうかと自問したときに、凡庸であるということは、実はけっこう写真にとって必要なものではないかと気づいたのである。 僕がキレッキレに鋭敏で奇矯で天才的な感覚の持ち主であったとして、そ…
長期滞在者
UNHCRの首席報道官のメリッサ・フレミングが来日した。 彼女はこれまでTEDに出演し、 2014年に「ただ生き残るだけではなく、難民が豊かに生きる手助けを」、 2015年には「500人の難民を乗せた船が海に沈んだ―2人の生存者の物語」を語った。 2018年11月14日、彼女の話を直接聴くことができる機会に呼んで頂いた。 この時に話してくれたストーリーは、シリア難民の19歳の女性、ドーハの物語だっ…