長期滞在者
個人的には、今年は何事に対してもmais ou menosな年だった。転職やら引越しやらでバタバタしたけれど、荷物も少なかったし、なんやかんや平和に過ぎて、振り返ってみたら大したことではなかったような気がする。大きなピークもなければ、谷もないような。 でも、社会の動きはそうでもない。大波小波の差はあれど、社会は大きく乱れた。それに、たくさんの偉人たちが亡くなった。一年の終わり、反省モードになる中で…
長期滞在者
親しい人にかける言葉が見つからなかったり、信じていたことがぽっきりと折れたり、違和感を感じながら留まり続けたり、2016年は今まででいちばんつらいことが多い1年だった。楽しいことも数え切れないほどあって、それらがなかったらここまで来れなかったかもしれないと考えるけれど、反射的に思い浮かぶのは息苦しい朝だ。 正直、まさか24歳でこんな日々がやってくるとは思っていなかった。高いところで足がすくむ感覚に…
長期滞在者
松本大洋の漫画『花男』(傑作ですよねぇ!)の中に、茂雄が鏡を目の下に構えて360度青空状態で歩いて感動するシーンがある。 クールな茂雄が感動しているのである。真似してみたくなるではないか。 やってみたのである。 お・お・お 凄い。確かに感動する。 眼下に青空、天にも青空。360度真っ青である。 太陽が足の下にあるんだぜ! 花男「空、飛んでる気分なの」。 しかし感動した直後、恐怖が来る。 ふわっと重…
長期滞在者
写真から声が聞こえる。 彼女はもうこの世界にいないと。 今、自分だと認識している私は、 本当はもう死んでしまっているのではないだろうか。 ワタシハモウイナイ 私が死んでも、明日も普通に時間は流れる。 それが当たり前だ。 明日には死んでしまっているかもしれない、この世界の点である私へ。 12月の今、今年を振り返った時。 苦しさの記憶量が多くて、愕然とした。 特に、6月以降の私というのは、ほとんどの日…
長期滞在者
ギャラリーの白い壁とは、無を意味すると、ある美術館の学芸員の方から聞きました。何もない純粋な白い平面であることが、それは、作品ではなくただの壁なのだ、ということになる。そこにうっすらでも、線のようなものが出ていたら、美術の場合は、何かの作品ではないか、という見方をされる可能性があるのだそうです。 四谷のギャラリーの壁は、前の借主の小林紀晴さんの時代から数えれば、15年ほど使い続けて、無数の釘が打た…
長期滞在者
絵本が大好き. (「いねむりのすきな月」 絵・文 石崎正次 ブックローン出版 1990年) 「ある国に、いねむりばかりしている月がいました。 昼はもちろんのこと、 夜になってもいねむりをしているものですから、 おかげで、この国の夜はまっくらです。」 好きな絵本を挙げろと言われたら、あまりに多過ぎて紹介しきれないけれども、「いねむりのすきな月」は、その画の美しさから、設定の自由さから、展開のチャーミ…
長期滞在者
どうもウェブメディアが騒がしい。議論されているテーマはさまざまだが、「情報を正しく伝える」というメディアの最低限の役割について考えてみたい。 早速だが、弊六(へいろく)をご存知だろうか。姿は赤鬼のよう、*御幣(ごへい)をふりかざして走る妖怪である。御神託と称しては、偽りの情報(いわゆる、デマ)を流し、人々を混乱に陥らせ、世を騒がせたと存在とされる。 (*御幣・・・紙や布を細長く切って、細長い木に挟…
長期滞在者
昨夜、友人のコンサートがあり、招待してもらったので行ってきた。2,3年に一度くらいしか会わないけど、会えば時間を忘れて忌憚なくなんでも話せる仲間だ。彼は今や世界をまたにかけて活躍するアーティストで、音楽作品だけではなく、映像や音響インスタレーションも精力的に発表し続けている。その極度に洗練されながらも、ある意味暴力的でもある作風と、その筋における第一人者的存在でもあるのも相まって、マニアックな信奉…
長期滞在者
最近、思い出すということにハッとさせられることが多い。多分、本当は胸の奥にしまいこんでいたほうが楽なことばかりなんだけれど、思い出してしまったら、なんでこんな大事なことを忘れていたんだろうって、逆に不思議に思うことばかり。 人間は辛いことを忘れると聞いたことがある。心は自然とそういうメカニズムになっていて、精神のバランスをとるために、本当に辛いことは忘れるんだって。もしかしたら、そういう感じで忘れ…
長期滞在者
熱く沸騰した血が私の身体を駆け巡っていく。 試合のテンポは、まるで曲のリズムに乗っているような気分になる。 選手の動きを追い、ボールの音に耳を澄ませ、呼吸を共に走らせ、 プレイに合わせて、ここだというタイミングで言葉を発する。 秋はバスケットボールのシーズンの始まりだ。 私は、今シーズンも日本のバスケットボールのリーグで、試合のMCとしてコートサイドにいる。 バスケットボールの試合でMCをやってみ…
長期滞在者
梅田にあるジブリショップの前を通ったら、『天空の城ラピュタ』公開30周年記念セールとか書いてある。 ジブリにはあまり興味がないのだが(最近まであの「バルス!」ていうのも知らなかったくらい 笑)、それでも30年と聞けばちょっとびっくりする。 そんなこというなら僕も見ていた『未来少年コナン』は38周年だし、別にジブリじゃなくたって、YMOだ結成38年とか、戸川純だってデビュー35年、といくらでも驚くこ…
長期滞在者
17歳の頃、池袋のセゾン美術館で開かれた「表現としての写真150年の歴史」展でエドワード・ウェストンの「Pepper,1930」を見たときの衝撃は今でも強烈です。それから10年と経たない後に、カリフォルニア州カーメルのウェストン邸に自分が足を運ぶことになろうとは、当時は全く想像できないことでした。 ぼくのギャラリーディレクターとしての一番最初の仕事が、ウエストンの作品を100枚買うので、それを使っ…