長期滞在者
ギャラリーの白い壁とは、無を意味すると、ある美術館の学芸員の方から聞きました。何もない純粋な白い平面であることが、それは、作品ではなくただの壁なのだ、ということになる。そこにうっすらでも、線のようなものが出ていたら、美術の場合は、何かの作品ではないか、という見方をされる可能性があるのだそうです。 四谷のギャラリーの壁は、前の借主の小林紀晴さんの時代から数えれば、15年ほど使い続けて、無数の釘が打た…
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絵本が大好き. (「いねむりのすきな月」 絵・文 石崎正次 ブックローン出版 1990年) 「ある国に、いねむりばかりしている月がいました。 昼はもちろんのこと、 夜になってもいねむりをしているものですから、 おかげで、この国の夜はまっくらです。」 好きな絵本を挙げろと言われたら、あまりに多過ぎて紹介しきれないけれども、「いねむりのすきな月」は、その画の美しさから、設定の自由さから、展開のチャーミ…
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どうもウェブメディアが騒がしい。議論されているテーマはさまざまだが、「情報を正しく伝える」というメディアの最低限の役割について考えてみたい。 早速だが、弊六(へいろく)をご存知だろうか。姿は赤鬼のよう、*御幣(ごへい)をふりかざして走る妖怪である。御神託と称しては、偽りの情報(いわゆる、デマ)を流し、人々を混乱に陥らせ、世を騒がせたと存在とされる。 (*御幣・・・紙や布を細長く切って、細長い木に挟…
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昨夜、友人のコンサートがあり、招待してもらったので行ってきた。2,3年に一度くらいしか会わないけど、会えば時間を忘れて忌憚なくなんでも話せる仲間だ。彼は今や世界をまたにかけて活躍するアーティストで、音楽作品だけではなく、映像や音響インスタレーションも精力的に発表し続けている。その極度に洗練されながらも、ある意味暴力的でもある作風と、その筋における第一人者的存在でもあるのも相まって、マニアックな信奉…
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最近、思い出すということにハッとさせられることが多い。多分、本当は胸の奥にしまいこんでいたほうが楽なことばかりなんだけれど、思い出してしまったら、なんでこんな大事なことを忘れていたんだろうって、逆に不思議に思うことばかり。 人間は辛いことを忘れると聞いたことがある。心は自然とそういうメカニズムになっていて、精神のバランスをとるために、本当に辛いことは忘れるんだって。もしかしたら、そういう感じで忘れ…
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熱く沸騰した血が私の身体を駆け巡っていく。 試合のテンポは、まるで曲のリズムに乗っているような気分になる。 選手の動きを追い、ボールの音に耳を澄ませ、呼吸を共に走らせ、 プレイに合わせて、ここだというタイミングで言葉を発する。 秋はバスケットボールのシーズンの始まりだ。 私は、今シーズンも日本のバスケットボールのリーグで、試合のMCとしてコートサイドにいる。 バスケットボールの試合でMCをやってみ…
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梅田にあるジブリショップの前を通ったら、『天空の城ラピュタ』公開30周年記念セールとか書いてある。 ジブリにはあまり興味がないのだが(最近まであの「バルス!」ていうのも知らなかったくらい 笑)、それでも30年と聞けばちょっとびっくりする。 そんなこというなら僕も見ていた『未来少年コナン』は38周年だし、別にジブリじゃなくたって、YMOだ結成38年とか、戸川純だってデビュー35年、といくらでも驚くこ…
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17歳の頃、池袋のセゾン美術館で開かれた「表現としての写真150年の歴史」展でエドワード・ウェストンの「Pepper,1930」を見たときの衝撃は今でも強烈です。それから10年と経たない後に、カリフォルニア州カーメルのウェストン邸に自分が足を運ぶことになろうとは、当時は全く想像できないことでした。 ぼくのギャラリーディレクターとしての一番最初の仕事が、ウエストンの作品を100枚買うので、それを使っ…
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先日、妖怪検定を受けるべく、鳥取の境港に行ってきた。 言わずもがな、境港は鬼太郎がいる町である。1993年に、「水木しげるロード」と名付けられた道路には、現在100体を超える妖怪の銅像が並んでいる。ここに、鬼太郎の銅像がいくつか設置されているというわけだ。 その名の通り、鬼太郎がいる町、境港であるのだが、”鬼太郎”がいない町について話をしてみたい。 そもそも鬼太郎とは、水木しげる氏が創…
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先月はついに連載に穴をあけてしまいました。不覚。 というわけで、ちょっとそこんところの言い訳じみたところ辺りから。 先月12日に、友人のマルニクス・ルーメンスがディレクターを務めるワークスペースブラッセルズ(以下WSB)という主にパフォーミングアーツに関するアーティストのサポート組織のイベントのオープニングがありました。日本・ベルギー修好150周年にまつわるイベントでもあり、日本に関連した作品を中…
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“Anniversaire”. 男性名詞.ラテン語の“anniversarius”(毎年訪れるもの)から派生した言葉. 毎年迎える誕生日.私はこの10月に、また一つ歳を重ねた. 誕生会はいつだって楽しいものだと決まっている.楽しいものにする意志が、祝う側にも、祝われる側にもみなぎっているから.少なくとも、その姿勢を失いたくないと思いながら生きているので、友人の誕生会だろうが母親の誕生日だろうが、容…
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うちじゅう,よとれた おさらや ――よごれた うえ木ばちや ――よごれた はいざらや ――よごれた キャンデーざらや ――よごれた なべや ――よごれた せっけんいれで いっぱいです。 本は どこやら―― めざましどけいは どこやら―― ベッドでさえ,どこにあるのか,わかりません! いすまで おさらでいっぱいなので, すわって かんがえることも できません。 おまけに,ながしも どこにあるか わか…