長期滞在者
先週のある日、友人のダンサーで振付家のダミアン・ジャレに 数日前に編集が終わったという新作ダンス映像が見せたいと 彼の自宅に招待されたので、お邪魔してきた。 彼とは音信不通な時期が長かったのだが、 妙な縁で、アクセル・ヴェルヴォールト氏を介して 最近また会って話すようになった。 大の日本好きになっていた。 ダミアンはP.A.R.T.S.というダンス学校の出身で、 彼が学生だった当時、その学校の母体…
長期滞在者
自由であることは大切だと思う。様々なことから自由になって、思いのままに動けたら最高。その点、自分はほんとうに自由奔放に生きていると思う。好き勝手に生きているし、本能のままだし、体だけ大きくなった子どものよう。自分の親世代とはまったく違う価値観を持っていると思うし、今自分のまわりにいる人の多くとも多分どこか違うけれど、それはそれでいいと思う。経験が違えば考え方だって違ってくる。それはごくごく自然な…
長期滞在者
空港やホテル、ショッピングモールといった場所にどうしようもなく惹かれることがあります。共通点は清潔で広く、誰の居場所でもないところ。国内線よりも国際線、旅館よりもホテル、商店街よりもモール。不特定多数の人々が出入りし、様々な商品と最新の設備が揃い、デザインは常に現代的にアップデートされ、夏でも冬でも体感温度は一定に保たれている。お金がなければ何もできませんが、お金さえあれば様々な商品を買い、様々な…
長期滞在者
わたしの調子の良くないときに限り、妹のなんとなくモヤッと暗い電話が掛かってきます。お化け屋敷でこんにちは。 いつも良い反射が出来るわけではないので、今回は、キズバンを貼るのに失敗しました。良い反射ができるときは、会話の中で何かがほぐれるのですが、魔法使いでもないので毎回そうはいきません。つれない態度になってしまい、敵対は良くないという学習まではできているので、電話はあっという間に切れました。 母に…
長期滞在者
昔一時期、ペンタコンシックスという東ドイツ製の中判カメラ(6×6)を使っていたことがある。ビオメターという名の標準レンズの写りが美しく、カメラのデザインもなかなかかっこよかったのだが、肝心のカメラボディが一癖も二癖もある大変な代物で、フィルム1本(12コマ)に1~2コマは必ず妙な露光ムラが出るとか(シャッター幕の走行に変な癖があるらしい)、そもそも露出自体安定しないとか、コマ間隔が適当でたまに重な…
長期滞在者
大阪と奈良を分ける二上山麓の小さな田舎町がぼくの一人暮らしのスタートでした。部屋は7畳半でグレーのパンチカーペットが引いてあるだけのただの四角い部屋で、北側に腰から上へ半間の窓が1枚。部屋の隅っこには申し訳程度の小さな流し台があってトイレは共同でした。それで家賃15,000円が安いのか高いのかよくわからないのですが、とにかくぼくはここで写真の勉強を始めることになりました。東京湾岸の埋め立て地で、植…
長期滞在者
「無限ホテル」をご存知だろうか。 「無限ホテル」はその名の通り、無限の部屋があるホテルだ。 ある日、「無限ホテル」に無限にある部屋は、すべて満室になっていた。 そこへ一人の男が部屋を求めてやってくる。 「無限ホテル」の支配人は、慌てずにこう言う。 『ご心配には及びません。1号室のお客様を2号室に、2号室のお客様を3号室に、とすべてのお客様を移動すれば、一つ空き部屋が出来ます。何せ、このホテルには無…
長期滞在者
一体全体、おれにどんなカルマがあるというのだろう、 と書き始めてみて、ふと思う。 この「一体全体」という言葉は一体全体どうして疑問文を強調するための副詞として使われているのだろうか。 というか、なんでこの言葉がそういう機能を持たされているのか、 見れば見るほど良く分からない。 検索してみても、その由来なんかは出てないようだし、 仕方ないので久しぶりに三省堂の新明解国語辞典を引いてみたが、 期待して…
長期滞在者
家の中にあるたくさんの本。日本に戻ってきたばかりのころは、本を増やすものかと思っていた。本だけじゃない、物も増やしたくなかった。でも、十年もいたら物も増えるし、本には本当にたくさんお金を使った。中学生のころから、ファッションやメイクには目もくれず、本と音楽ばかり。ものは増やさないと思っているくせに、本は買ってしまう。本を全部読んでいるわけでもないのに、本屋に行くとわくわくする。まるで、本の中には…
長期滞在者
若い人へ こんな書きだしではじめると、いかにも自分が歳をとったように感じます。研究者としては未だに若手とされますし、立派な中年になる覚悟が定まっているわけでもないにしても。放っておいても心身が回復し成長していく時期が過ぎ、「おぅ、あとは死ぬだけだなぁ」と体感したのが数年前。とはいえ、生きていることがいずれ訪れる消滅の瞬間へのカウントダウンだという事実は、年端も行かぬ子供であったころの中心的なテーマ…
長期滞在者
もうりひとみさん アパートメント当番ノート第13期/絵描き・絵本作家
長期滞在者
都心のあるホテルのラウンジの一角とか、大きなタワービルのエントランスに、写真集を含むアートブックがこれでもかと詰め込まれた棚が、空間装飾の一環として使われている場面を時々見かけます。あるホテルのそれは、本の選定から棚に収まる位置に至るまでデザイナーさんが、全部決めているのだそうです。ちょうど新人の従業員研修の場面に出くわして、先輩社員がそういう風に説明をしていました。主に、海外のファッションカメラ…