長期滞在者
数年ぶりの引越しがもう数日後に控えているのに、わたしは心の準備がろくにできないままでいる。引越しはたくさんしてきた方だと思うし、わりと慣れっこのはずなんだけれど、今回はあまりにも実感が湧かなすぎて、変な感じがしている。数日後には、数年ぶりの東京。目が覚めたら、もう比叡山が視界に見えないのかとか、電車の車窓から琵琶湖が見えないのかとか、感傷的にはなりたくないのに少し気持ちがしゅんとしてしまう。後ろ…
長期滞在者
「帰る」というのは不思議な言葉だな、と思います。例えば宇宙空間から地球上を観察していれば、私たちはただ時に移動し、時に同じところに留まっているだけのように見えるでしょう。そうした無数のストップ&ゴーを、しかし私たちは「どこかに行き、どこかに帰ってくる」と認識します。言葉は多分あまり関係ないですね(「帰る」はおそらく人間に限定されない、動物としての「私たち」が共有する概念と思われます)。長年住み慣れ…
長期滞在者
先月、ペンタコンシックスというカメラのことを少し書いたけれども、ビオメターという名の標準レンズの他にも広角レンズのフレクトゴン、魚眼レンズのゾディアックというのを当時所有していた。 中判カメラに使える魚眼レンズというのは珍しかったので、このゾディアック30mmF3.5は特に愛用した。 いや、「珍しかったので」というのはいいわけであって、実は「ゾディアック」という名前が好きなのだった。 ゾディアック…
長期滞在者
寄席の世界では「つどまり」といって、お客様が一桁だとその日の出し物は打ち切りとなるのだそうです。 「つ」というのは、ひとつ、ふたつ、、、ここのつ、の「つ」で10人に満たないと、やらないということを高座に上がっている芸人さんから聞きましたが、本当にそういうしきたりがあるのかは、よくわかりません。 というのも、あの時の新宿末廣亭はお客様が5、6人しかいなかったのですから。 その日は、とにかく家にいても…
長期滞在者
先週のある日、友人のダンサーで振付家のダミアン・ジャレに 数日前に編集が終わったという新作ダンス映像が見せたいと 彼の自宅に招待されたので、お邪魔してきた。 彼とは音信不通な時期が長かったのだが、 妙な縁で、アクセル・ヴェルヴォールト氏を介して 最近また会って話すようになった。 大の日本好きになっていた。 ダミアンはP.A.R.T.S.というダンス学校の出身で、 彼が学生だった当時、その学校の母体…
長期滞在者
自由であることは大切だと思う。様々なことから自由になって、思いのままに動けたら最高。その点、自分はほんとうに自由奔放に生きていると思う。好き勝手に生きているし、本能のままだし、体だけ大きくなった子どものよう。自分の親世代とはまったく違う価値観を持っていると思うし、今自分のまわりにいる人の多くとも多分どこか違うけれど、それはそれでいいと思う。経験が違えば考え方だって違ってくる。それはごくごく自然な…
長期滞在者
空港やホテル、ショッピングモールといった場所にどうしようもなく惹かれることがあります。共通点は清潔で広く、誰の居場所でもないところ。国内線よりも国際線、旅館よりもホテル、商店街よりもモール。不特定多数の人々が出入りし、様々な商品と最新の設備が揃い、デザインは常に現代的にアップデートされ、夏でも冬でも体感温度は一定に保たれている。お金がなければ何もできませんが、お金さえあれば様々な商品を買い、様々な…
長期滞在者
わたしの調子の良くないときに限り、妹のなんとなくモヤッと暗い電話が掛かってきます。お化け屋敷でこんにちは。 いつも良い反射が出来るわけではないので、今回は、キズバンを貼るのに失敗しました。良い反射ができるときは、会話の中で何かがほぐれるのですが、魔法使いでもないので毎回そうはいきません。つれない態度になってしまい、敵対は良くないという学習まではできているので、電話はあっという間に切れました。 母に…
長期滞在者
昔一時期、ペンタコンシックスという東ドイツ製の中判カメラ(6×6)を使っていたことがある。ビオメターという名の標準レンズの写りが美しく、カメラのデザインもなかなかかっこよかったのだが、肝心のカメラボディが一癖も二癖もある大変な代物で、フィルム1本(12コマ)に1~2コマは必ず妙な露光ムラが出るとか(シャッター幕の走行に変な癖があるらしい)、そもそも露出自体安定しないとか、コマ間隔が適当でたまに重な…
長期滞在者
大阪と奈良を分ける二上山麓の小さな田舎町がぼくの一人暮らしのスタートでした。部屋は7畳半でグレーのパンチカーペットが引いてあるだけのただの四角い部屋で、北側に腰から上へ半間の窓が1枚。部屋の隅っこには申し訳程度の小さな流し台があってトイレは共同でした。それで家賃15,000円が安いのか高いのかよくわからないのですが、とにかくぼくはここで写真の勉強を始めることになりました。東京湾岸の埋め立て地で、植…
長期滞在者
「無限ホテル」をご存知だろうか。 「無限ホテル」はその名の通り、無限の部屋があるホテルだ。 ある日、「無限ホテル」に無限にある部屋は、すべて満室になっていた。 そこへ一人の男が部屋を求めてやってくる。 「無限ホテル」の支配人は、慌てずにこう言う。 『ご心配には及びません。1号室のお客様を2号室に、2号室のお客様を3号室に、とすべてのお客様を移動すれば、一つ空き部屋が出来ます。何せ、このホテルには無…
長期滞在者
一体全体、おれにどんなカルマがあるというのだろう、 と書き始めてみて、ふと思う。 この「一体全体」という言葉は一体全体どうして疑問文を強調するための副詞として使われているのだろうか。 というか、なんでこの言葉がそういう機能を持たされているのか、 見れば見るほど良く分からない。 検索してみても、その由来なんかは出てないようだし、 仕方ないので久しぶりに三省堂の新明解国語辞典を引いてみたが、 期待して…