長期滞在者
今週末(7月12日)まで、関西で主に活動する林 直さんの個展「みつめる写真舘」を開催しています。 もうすぐ終わってしまいますが、もっとこの写真に囲まれて過ごしたいと感じる素晴らしい展覧会でした。 この作品は、林さんがいろいろな方の愛着のある品物を見せていただき、持ち主との歴史を偲びながら丁寧に撮影を進めてきたモノのポートレートと呼びたくなるシリーズです。 被写体に宿る持ち主の想いと、伝統的な写真技…
長期滞在者
対象を知ることは、対象の構成要素を知ることなのだろうか? なにかをじっと見つめるとき、その対象と自分との距離感について考えるようになりました。 物事を見つめると、その構成要素、それらが成り立つ仕組みや理論が見えてきます。それはとても興味深く、自分の持っていたはずの前提条件さえ覆されてしまうことがあります。物事を知るためには欠かせない行動です。しかし、対象に近づきすぎると、自分が「何を見ているか」見…
長期滞在者
いとうせいこうの『想像ラジオ』を読んだ。 4年前、震災の一ヶ月後に被災地を訪れた時のことを生々しく思い返しながら。 今から思えば、津波の映像を見続けたせいで自分もいくらかショック状態のまま、なぜそこに行かなければならないのか、そこで自分に何ができるのかも不確かなまま、ただあの映像で見せつけられた途方もない惨事が本当にあったことなのかどうか自分の目で確かめなければ気が済まない、というか、何か途方もな…
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そうだむらの そんちょうさんが ソーダのんで しんだそうだ 「そうだ村の村長さん」詩:阪田寛夫 より どんよりとした空。ぽつぽつと雨が降り出した。開いたビニール傘にあたってははじける雨粒に、きりっと冷えたソーダ水を飲みたくなる。 子どもってなんであんなにソーダ水が好きなんだろう。コップに注がれるときのしゅわっという音。ぷちぷちとはじける泡は口に入れると踊りだす。甘いけどさわやか、カラフルな水はより…
長期滞在者
日本にいると忘れてしまいそうになるけれど、本来わたしたちはとても多様で、とても違っている。イギリスのヒースロー空港に着いたとき、肌の色もちがう、信じる宗教もちがう、バックグラウンドもちがう、そういう人種の多様性に驚いた。だけど、わたしだって本来そういう多様な組み合わせの中から生まれた一つの個。忘れたらいけないことを、日本の中にいるときには呆れるほど華麗に忘れてしまう。 最初は戸惑いすら覚えたそ…
長期滞在者
以前、先鋭的なポートレート写真家である大先輩K氏に、ぶしつけながら「ポートレートってそもそも何でしょう」と質問してみたら、K氏は 「撮られたいと思っている人を、撮りたいと思っている人が撮ること」 とシンプルに答えてくれた。シンプルすぎて奥深すぎる。 人が人を写せば何らかの人物写真は成立する。誰が誰を撮っても写真は残るが、「誰に撮られたい」と「誰を撮りたい」の「誰」と「誰」が一致すればそれは最強の引…
長期滞在者
数年前から地方都市をこまめに回ることを意識してやっているので、例えば新幹線の「のぞみ」が停車する各都市と東京の違いを考えると、まず最初に目につくのは、街路を行き交う外車の多いこと。地方ではあまり見かけない名もわからないクルマや、単にガソリンを喰いまくる怪獣ではないか、と思わせる不思議なものをしばしば見かける。ぼくの仕事場の前は、貸駐車場で、月々の家賃は5万5千円だという。10年前ぼくがここに仕事場…
長期滞在者
ちょうどよかったわ。いっしょに おやつをたべてって 『おまたせクッキー』より 小学生の頃、家庭訪問の時期が待ち遠しかった。学校から家庭訪問の日程表が配られると仲の良い子4、5人で集まって作戦会議を開く。14時半にともちゃんち、つぎはひろえちゃんちだね、と先生が各自宅を訪れる時間を確認する。学校から先生にぞろぞろくっついてみんなの家をはしごしたり、時には先回りして待ち伏せしたりと、先生にも親たちにと…
長期滞在者
5月はほとんどの時間を作陶に費やした。 1年ほど前に無謀にもホテルの食器を引き受けてしまい、散々な思いをしながらいろいろ学びもしたのだが、 1ヶ月前にまたかなりの数の食器の注文が来たので、1年前のトラウマを抱えながらもそれに取り組んでいた。 去年とは違い、自分が好きに使える工房があるので、楽になった部分もあるのだが、 場所が狭いので、成型の終わった器を乾燥させる場所を確保するのに手間取ったりもした…
長期滞在者
日々の仕事が忙しいと、日常生活のあれこれが疎かになる。わたしの場合、料理を作ったり、掃除をしたり、きちんとした睡眠をとるために必要なことができなくなる。こういうのはよくないと思いつつ、なかなか思い通りに仕事と生活の両立ができなくて困る。 5月は少しつらい月だった。ここ数ヶ月の疲れが溜まっていたせいもあるけれど、突如任された仕事に振り回されてしまい、右往左往。上司と同僚の間を右往左往。人と人との…
長期滞在者
* 夢の中でエレベーターに乗ってしまうと いつも強制的に別の夢に連れて行かれてしまう 夢の続きに戻れるだろうかと たまに 階数を思い出したり数えなおしたり エレベーターを乗り換えたりするけれど 知らない人たちが次々と乗り込んできては ぎゅうぎゅうと私を奥へ奥へと押し込む エレベーターが消えると それはもう あの夢の終わりでこの夢の始まり またいつかあの場所に戻ろうと かろうじて記憶の崖を霞め留め…