長期滞在者
赤坂・東京写真文化館の設立の頃、当初は、ウェストンとアダムスの作品だけを展示すれば良いギャラリーとして構想されていました。少し遅れてその話に加わったぼくとしては、それは面白くない、どうせやるなら、評価のガチガチに定まったものを扱うからこそ、評価の定まっていないものを紹介する場を設けるべきだ、ということで、25坪程の[STAGE]という貸し/企画のスペースを設けることが決まりました。海外の著名な作品…
長期滞在者
偏頭痛が続いている。しかも不調感が体に充満していてタバコを吸う気にならない。 日課の水泳も休んでいる。別に望んでいるわけではないのだけど引きこもり状態である。 どう考えても異常事態である。10日ほど前に酷い悪寒を伴った風邪をひいて、それがまだ治りきっていないらしい。頭痛薬もあまり役に立たないので明日は医者に看てもらおうと思う。 ということで、この2週間近くはもうほとんど寝たきりである。そして寝てる…
長期滞在者
___そのネコは足ふきの上にすわったのです。足ふきの上にすわるネコはたくさんいます。だれでもそれをしっていますね。べつにちっともふしぎなことではありません。ところが、ある足ふきの上に、あるネコがすわったら、ふしぎなことがおこったのです。(「足ふきの上にすわったネコ」より)___ 煙猫のお気に入りの1つが、濃い赤に幾何学模様、そのまま空を飛びそうな雰囲気の玄関マットで、妹曰く「上等のものだからネコの…
長期滞在者
小学校を卒業した春、家族とともに一週間ほどの里帰りをした。8年ぶりに会う母方の祖父や、いとこたち、おばたちは、まるで初対面の他人のようだった。だけど、彼らはきちんとわたしをおぼえていて、わたしたち姉弟の成長を喜んでくれているようだった。日本での暮らしぶりを知らない彼らは、当たり前のように、わたしをMaysaと呼んだ。不思議なことに、それまでわたしをKeikoと呼んでいた両親までもが、ブラジルではわ…
長期滞在者
はじめて海外で作品が売れたときのことを覚えている これはNYのアートフェアでカップルが買っていったって – – これはコロンビア大学の麻酔科医のところに – – – 意識してアウトラインをひかなくなった 輪郭なんて曖昧なものだから 私と世界が交流している限りは —- —– 増殖しては結びついて こと が…
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東北 I 県の T 知事にツイッターで無邪気な質問が飛んだ。 「知事は若い頃、聖子ちゃん派でした? それとも明菜ちゃん派?」 T 知事は答えた。 「戸川純派です」 読んだ瞬間、もう I 県に引っ越そうかと思ったね。 僕の住む H 県の知事は、大河ドラマ『平清盛』の濃度の乗った重厚な映像表現を見て「海が汚い」と文句を言った男だし、隣の O 府の(元)知事は文楽劇場なんか要らないと吐き捨てた輩である。…
長期滞在者
この題名を打ち込むときに「曇のち雨」が「曇のち飴」に変換されたのを見て、たとえ本当に飴が降ってきても曇り空からではあんまりわくわくしないだろうな、とぼんやりと思った。 パリの冬はグレーだ。 色というものがない。 今年は暖冬で雪も降らなければダウンジャケットさえ着る必要がないので、それだけが救いだ。 一年だけ住んだドイツの冬は暗くて寒くて、思い出しただけでも鬱々としてしまうくらいだったのだから。 寒…
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2月に入ると、ぼくの仕事場は卒業制作のための額装の仕事でフル稼働になる。この仕事は、応対の件数が多く、点数は少なく、大抵の人がプリントの完成がギリギリ、という感じで、ぼくもこの仕事を始めてもうすぐ20年になるけれど、昔も今も学生のやることはあまり変わらないなぁって思います。 額装をする時にまず一番最初にやることは、お預かりしたプリントの画面サイズを全て計測することです。画面は必ず縦横4四辺全部測り…
長期滞在者
前回同様、締め切り直前の早朝である。本来、何か書くときには大体一週間前からちょっとずつ準備して書くようにしているのだが、前回同様、ドトーの様な一ヶ月をなんとか溺れずに乗り切っているうちに、あ、明日月初めの月曜日じゃん…、となったのであった。そうはいいながら、早寝早起きを旨としているぼくとしては昨日の夜はさっさと寝ることにして、早朝水泳の前にささっと書いてしまおうという魂胆なのである。 去年の年末に…
長期滞在者
そこにも ねこ、あそこにも ねこ、 どこにも、かしこにも、ねこと こねこ、 ひゃっぴきの ねこ、 せんびきの ねこ、 ひゃくまんびき、一おく 一ちょうひきの ねこ 本日は2月2日、にゃんにゃんにゃんの猫の日には2が1つ足りませんが、猫の日前哨戦といきましょう。 とかく猫好きというものは、そこに猫がいると我を忘れるものらしい。道端で寝ている猫を見つけてはしゃがみ込み、塀の上に手を伸ばし、上級者ともな…
長期滞在者
昨年の大晦日、伯父の家に集まって年越しをした。久々に会った伯母に、Keikoちゃんと呼ばれたとき、あぁ、この人はわたしが言ったことを、いまでもずっと守ってくれているんだ、と思いながら、恥ずかしさと言いようのない居心地の悪さに駆られて、その場から逃げ出したい気持ちになった。 海外では、ある人物にちなんでその人と同じ名前をつけることがある。例に漏れず、わたしにもそのようなミドルネームがある。わたしが生…
長期滞在者
なかなか進まないことと 反面 勝手に恐ろしい速さで見えてきてしまうことと ぐるぐる周りながら 巻き込み巻き込まれ 吸い込み吐き出して 自分自身で作った渦なのに翻弄されてしまうことばかりだけど 目をまわしながらもかろうじて見つめる先は一点に かすかに光を感じるあの方角へ定めるように 吸って 吐いて すって はいて 気も狂わんばかりに 外気を求めても 身体に取り込むことができるのは その中のごくごく一…