長期滞在者
メリーゴーランド京都でやった、夏の個展が無事に終わって、次を描き始めたいのに空回りが続いていた。ただ疲れていて、励まされても誉められても、自分の中の部屋がどんどん狭くなる感じを何に喩えればいいのでしょう。大袈裟だが、これっぽっちも余裕のない自分があるだけだった。 わたしは、ちょうど逃げ出したリンゴのように母から逃げ出して、別の穴にストンと落ちる。アリスのウサギ穴に見立てたいところだが、母は、わたし…
当番ノート 第17期
マルはいつも、呼ぶ前にそばに来てくれます。 目が合うか気配を察するかして、すぐに来ます。 そして、遊んでほしい時はボールをくわえており、おやつがほしい時は手をなめます。 私はとりあえず頭をなでてあげます。 呼ぶ前に来るので、マルに「マル」と呼ぶことがあまりありません。 家族との会話や友人にマルについて話す場合に「マル」と口にすることがほとんどです。 その時本物のマルはたいていその場にいません。 本…
当番ノート 第17期
これまでの連載をお読みいただきありがとうございました。 はじめてアパートメントの連載のお話しをいただいたときは「書店員はひとり言を話す人が多い」だとか、奇人変人が書いたマニアックな本の紹介だとか、そういったくだらないことを書きたいなと思っていたんですが、ツマが妊婦になってから考えたことを連載のテーマにしました。 なぜこのテーマで書くことにしたかというと、同じ状況にある人の話をあまり聞いたことがなく…
Mais ou Menos
ーーーーーーーーーーーーーーー 2014.11.9 (日) まちゃんへ まちゃんと往復書簡を始めるに当たって、自分はまちゃんの文字を初めて見て、その文字のことをとても好きになったんやったな、ということを思い出した。自分は、こういうとおかしいと思われるかもしれないが、他人の文字を見るのが好きである。字を見ると、その人のことが見えるというか、文字には“その人”が表れるからである。だから、まちゃんの書く…
当番ノート 第17期
世界の片隅の扉の向こうに、その町があり、その三叉路がある。 ”ある化け猫” 住所:ツバメ町 L地区 卵の小路 ツバメ町は、曲がり角だらけだ。複雑に折れ曲がった小路の数々は、幾重にも連なる角を成している。一つ手前の角を曲がるか、もう一つ先の角を曲がってみるか、左に折れるか右に折れるか、それで辿り着ける場所は全く違ってくるので、旅行者はくれぐれも留意されたし。 しかしながら”外”からの干渉や出…
当番ノート 第17期
僕と彼女は休日になると、大抵どこかにご飯を食べに行くのだけれど、その日はふらっと高速に乗り、京都まで行った。その帰り、やっぱり何かご飯を食べて帰ろうということになった。なんとなく二条か三条通りあたりにしようと決めて、駐車場を探すためにくるくる車で周っている時に、店の明かりだろう、なんとなく雰囲気の良さそうな店を見つける。そして、その店からそれほど遠くないところに車を停める。 夜の河原町通りは、三条…
長期滞在者
強く雨の降る朝、女子学生たちが乗った自転車が十台ほど次々と、全員学校指定らしい同じグレーに赤のラインのレインコートを着て、透明の傘を差して、ゆっくりと僕を追い抜いていった。 じっとり沈んだ湿度の中を、続々と通過していくグレーの集団の後ろ姿が幽玄で映像的にとても美しく、思わず大雨の中足を止めて見送った。 見惚れることしばし、彼女らが雨の向こうに遠ざかってから、あ、カメラ、と馬鹿な顔して僕は突っ立って…
当番ノート 第17期
マルの散歩はいつも日が暮れてからです。 暗くなると犬の散歩をしている人がぐっと減るからです。 マルは全くしつけがなっていないので、よその犬に近づいたとき吠えるとか噛むとか 何をするのか不安なので、犬とすれ違う時は極力近づかないように綱をぎゅっと引っ張ります。 それがなかなか疲れるなぁと思っていて、人のいない夜の散歩がほとんどになりました。 ときどきなんとなく夕方散歩に行くと、同じように散歩している…
当番ノート 第17期
結婚の報告をしたとき、祝福の言葉と同じぐらい多い反応が26歳という年齢で結婚を決めたことへの驚きと、哀れみの声だ。 「男はもっと遊ばなきゃ」 「30ぐらいまではふらふらしてたいじゃん」 「もっと色んな人と恋愛しなきゃ」 表現はどうあれ、大方「もう結婚しちゃっていいの?」というような意味で言われることが多い。こういうことを言ってくるのはほとんど男性で、女性からは言われたことがないというのもおもしろい…
ショートな絵本
シンデレラはかわいそうな女の子 料理の魔法の力を手に入れた、シンデレラ 健康的なお料理で、芯から美しくなったシンデレラ 何でも作れちゃうシンデレラ 王子様さえも、シンデレラの料理で恋に落ちる いつの間にか、幸せになっていたシンデレラ 料理は女の子なら誰でも使える魔法なのです めでたし、めでたし
当番ノート 第17期
みなさん今晩は。妄想J-POPのお時間です。 私の担当は10・11月なので、もう次回で最後なのですね。ほっとしたような、さみしいような。 「毎週楽しみにしているよ!」の声に支えられてきました。ありがとうございました。 さて、今週も元気よく行きましょう。 この妄想J-POPは私typhoon soupの妄想の世界で作られたお話です。 ご紹介する全てはフィクションですので、みなさんも思いっきり妄想して…
長期滞在者
頭のなかでずっと廻っている言葉があって その答えが言い切れるものでないことに、後ろめたさを感じる 不足しているものを補うために 不足していないものを失っていることを 前に進むことだけが、正しいことじゃない たまには見失ってしまってるかもしれないものを確かめるために 前がどこなのか見えるとこまで、戻ってみてもいいと思うの 写真は現実の偽物 紙の上の過去 だからこそできることがあるんじゃないか と 見…