当番ノート 第55期
こんにちは、mopoka です。アニメーションを作ったり、絵本の画を描かせていただいたり、時々、大学や小学校にお邪魔して、先の読めない道の糧は、実は今日こしらえてる、的な話をして、感性と夢と、他人との交流により明らかになる個性(武器)を知る為、人と生きましょう… なんてことを強気にお伝えしたりしなかったり。 それもこれも、人との違いを感じるごとに、戸惑っていたし、いまだ戸惑っているから…
当番ノート 第55期
ずっと、なにか決定的な書き出しを探している。 それは永遠に手に入らない青い鳥のようなもので、ときどき、酔っぱらったときとか走っているときとか風呂に浮かんでいるときとかに、ぼわんと影を見せる。これはっ! と羽をつまんでばばっとスマホにその片言を記しても、身体の紅潮がさめたあと、メモアプリに残された言葉からは結局何も始まらない。 ・ ・ ・ 小さいときから書くことが好きだった。好きだと思いすぎて、「書…
当番ノート 第55期
貧困なんて遠い世界のお話だったタワーマンション育ちの私は、現在顔馴染みの警備員の代わりにクモが玄関先の天井から挨拶してくれる木造アパートに住んでいる。 ミネラルウォーターを買うのが怖いのでケトルでお湯を沸かして、100均で買ってきた水差しに注ぎ、冷蔵庫で冷やす。引っ越してからしばらくはケトルなんて文化的なものもなく、鍋で沸騰させていた。3日も経てば完全にその味に飽き、白湯が甘いなんて大嘘だ、そんな…
当番ノート 第55期
何気なく放った言葉も、ふと目があったお散歩中の犬も、受け取り方が難しかった出来事も、生きることについて考えてみた日も、ただお茶が美味しかった瞬間も、ぜんぶぜんぶ「角度」をもっている。 そのときの自分に”それ”がどんな角度をもって入ってきたのか、そのときも、振り返っても、なかなかわからないものなのかもしれない。鋭い角度だと感じたことも、何かと混ざってクロスステッチみたいに新しい模様を描くのかもしれな…
当番ノート 第54期
黄色の増殖に最近気づいた。 去年の春は、レモンイエローのネイルばかりしていたし、秋にはターメリックのネイルを買った。どちらももうだいぶ減っている。そしてこの間、からし色のセーターも手に入れた。 レモン、ターメリック、からし。黄色は食べ物の名前で構成されているらしい、と思ってはたと気づいた。 名前がある。 当たり前だけど、意識していなかった。名前が違うのは、「黄色」という枠でくくられていても、それぞ…
当番ノート 第54期
「一粒万倍日」というものが、暦にあるらしい。 2020年のうちに婚姻届を出したいね、と同居人と相談していたものの、二人の記念日もだいたい終わっていたから、いつ出してもよくない? となっていたところに、同居人の友人から教えてもらったのが「一粒万倍日」だった。正確に言えば「一粒万倍日かつ大安の日」だ。なんだそれ。 調べてみると、大安や仏滅などの六曜とは別の暦注で、一粒のモミが万倍の稲穂に育つように、小…
当番ノート 第54期
引っ越すことにした。 とはいえ同じ区内での引っ越しなので部屋が増えるくらいのささやかな環境の変化だ。引っ越しまで一週間を切った。荷造りやら何やらをして、少し疲れたらお茶をいれる。いつものようにこの部屋の窓から外を眺める。 毎日目にしてきたありふれた風景がそこにある。 今よりも少し若かった私は、逃げ出す理由もないほどいい暮らしをさせてもらっていた実家から逃げ出すようにしてここへやってきた。そのきっか…
当番ノート 第54期
「カレーで世界は幸せになりますか」 先日、カレーを食べ歩く方のYoutubeを観ていたところ、動画内で、視聴者からそんな質問が来ていた。 その方は、はっきりとした口調で答えた。「なります。少なくとも、僕の周りはそうです。」 私は、一瞬、唇を噛みしめて考え込んでしまった。 世界って、幸せって。それは壮大で漠然とした問いだ。しかし、対象が限定されていない問いは、それゆえに、解釈の余地がある。 地球やこ…
スケッチブック
星座を結び直す。ふとそんな言葉が降りてくる。 12月の前半を、私は沖縄で過ごした。 大切な友人、えりの結婚式に加えて、現地でまた仕事をすることになった。 3年前。産後の体調不良で私がにっちもさっちも行かなくなっていた時、 「旅がしたい」と呟いた言葉を拾ってくれたのが、えりだった。 私としおは初めてふたりきりで飛行機に乗って、えりのところに行った。しおのリズムに合わせて動く旅の時間。 あの時間を経て…
当番ノート 第54期
みなさんこんにちは、イラストレーターの高松です。 この連載は神奈川県の西の、山の途中にあるあなぐらのような自宅にて、ボイスレコーダーに録音したトーク内容を書き起こして投稿しています。 – 連載も最後になりました。 連載が始まる前までは、よし!やるぞー!と意気込んでいたのですが。いざ書いてみると、こんな話題で楽しんでもらえるだろうか、とか。話があっちこっちへ行ってしまい収集がつかなくなっ…
長期滞在者
年末年始は遠出もせず、特に大きな買い物もしなかったが、唯一1500円ほどのコーヒーポットを買った。これまではやかんを使ってコーヒーを淹れていたが、やかんは棚の下にしまい、キッチンのコンロには常にコーヒーポットが乗っているようになった。 朝起きて、コーヒーポットで湯を沸かし、冷凍庫からコーヒーの粉を取り出し、ドリッパーに付けたフィルターに1杯強の粉を落とし、「の」の字を描くように湯を1周させ、21秒…
当番ノート 第54期
大相撲を見る楽しみは取組以外にもたくさんある。例えば、土俵下の審判部の親方に懐かしい顔を見つけてみたり、解説の親方とアナウンサーの相性チェックしてみたり、裏方一切を仕切る呼出の動きや行司の衣装に注目してみたり、はたまたお客さんを定点観測してみたり。その中でも個人的に一番は、力士の化粧まわしだ。 化粧まわしは、十両と幕内力士が土俵入りので身につける特別なまわしで、腰エプロンに絨毯やタペストリーのよう…