当番ノート 第46期
8月に入りずっと、肌がぺたぺたとしている。 空気は水を孕んでのろのろと重いし、 日差しは強く体の中も暑く このまま蛙にでもなってしまうんじゃないかと思う。 水族館に行くのが好きだった。 薄暗く長いエスカレーターを降りていくと 空気が徐々にひんやりとしていくのがわかる。 同時に少し生っぽい、潮の匂いを舌に感じる。 家族旅行で行ったちゅらうみ水族館の大きなガラスの水槽や 佐賀のうみたまごの色とりどりの…
当番ノート 第46期
まだ私は、他人と向き合う準備ができていない。だから誰にも会いたくない。それは目やにがついているからでも、鼻毛が出ているからでも、自分の息が臭いからという理由でもない。 朝、外に出て、呼吸のしづらい暑さに朦朧としながら、仕事に向かう。電車が来る直前に自販機で割高なお茶を買ってしまう。電車にしばらく揺られると寒暖差がつらくて目をつむる。 マンションの一室にあるオフィスに着き、いくつかmtgに参加する。…
当番ノート 第45期
絵を描いていると、テーマはなんですか、と聞かれることがたまにあるのですが、一貫したテーマはあまりなく、描くことによってなにかを目指すというよりは、描くことを続けていくことで自分とまわりとの関係をあぶり出しているようなところがあります。 美術系の大学にいっていたときに、とりあえず真面目な美大生だったし、内から湧き出るものはあるから、わーってなってつくってて、でも、わーっていうのを微妙にセンス良くなん…
当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の中の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 出口はないけど、入り口も見えない人生へようこそ! はい、私は店長のミス・モモコ。 暑くて暑くて頭がぼーっとしちゃうわね! ぼーっとした頭でお知らせなんだけど、 残念なお知らせなんだけど、このスナックは立ち退きなの。 じゃっ、そんな感じで今回も最後までよろしくね! 前回のセクハラ問題もある…
長期滞在者
【始めに】本稿は、2014年に発表した記事を改編・再執筆したものです。 文中には性的な写真表現が含まれますことを予めご了承ください。 写真集としては大ぶりなB4サイズの上製本を、赤いベルベット生地が包み込む。その表紙には、金色で大胆に彫られた「Bible バイブル」という文字。装丁といい題名といい、挑発的と言っても良い出で立ちだ。 2014年に刊行された『Bible』。東京を拠点に活…
当番ノート 第45期
ある1人の少年と現在生活している私は、何かと自分の生活圏を彼の存在で掻き乱される日常にいた。それにしても、この少年と私は、いつから親しく関わり、一緒に生活を共にしているのか経緯が全くわからない。ただ、あの日 家の前に雨の中びしょ濡れの仔猫が捨てられていた事。その少年の幼い顔がどこか昔愛していた人の面影を連想させる事だけしか確かなものはなく、名前も 理由も得体の知れぬまま私の側にその少年は存在してい…
当番ノート 第45期
行きつけのカフェというやつがある。 いろんな仕事の山場を秘めやかに乗り越えてきたこの店こそ、アパートメントの全8話を締めくくるに相応しいと(そもそも家かここしかないのだけど)鼻息荒めに、今これを書いている。 今は昔、最初は普通の接客だったのだが、仕事が詰まってほぼ毎日通った時期があった。それからというもの入店1番、店長はじめ店員さんまでもが快活に「おつかれっすー」と言う始末。いらっしゃいませという…
Native Language
長期滞在者
先月末、仕事の関係でシンガポールに滞在していた。 滞在中何気なくSNSを見ていると、インドネシアでMarjinalが出演するイベントが土曜日にあることを知った。 Marjinalはインドネシアのパンクバンドで、4年前に来日した際は見に行ったし、彼らのドキュメンタリー映画の上映にも足を運んでいた。日本が誇るVivisickを通じて、Marjinalにのめり込んでいた。 出張中の休日を使って、シンガポ…
当番ノート 第45期
いつも歩いている道の、いつも見ていた建物が、急になくなったり、違う建物になったりしていると、それがなんの建物だったのか全然わかんなくなっちゃうことがよくあります。 昨日も、家の前の商店街のいつものならびにあったお店が急になくなって、壊されかけの建物のところに八月上旬にタピオカ屋さんがオープンします、って貼り紙が貼ってあったんですけどそこがいったいなんのお店だったのか、毎日とおっていたのにさっぱり思…
当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある日常の非常口「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。 私は店長のミス・モモコ。 あら、皆様投票帰りかしら? 雨の中お疲れ様! 雨降って地固まる!っていうけど 無用な涙は見たくないというもの。 散々今ニュースで「パワハラ」が叫ばれているけれども ママは昔テレビ業界で働いていたことがあるのよ。 な…
長期滞在者
雨の日はべつに嫌いではない。写真を撮るという点からすれば、雨はいつもと違う光の様態を色々見せてくれるし、見慣れた町の表情も変わって見える。 ただ、遅めの梅雨入りをして、この先一週間以上雲と雨の絵ばかり週間天気予報に並ぶのを見、九州の方では大変な水害が起きたなんてニュースを聞くと、さすがに気持ちは沈む。 去年は僕らの住んでいる地域でも異常な長雨と降水量で大変な目に遭ったのだった。 そう、ちょうど一年…