当番ノート 第45期
「文章を寄稿してみませんか」と当アパートメント編集長からお誘いを受けた。 快諾した数日後、後悔した。 これが仕事やアートショーのためのプロモーションならば、是が非でも期日内に何らかをひねり出して命と引き換えにでも差し出すのだけど。何もないところに自分事をポンと置くことの行為。当件に関しましてはビジョンもゴールも報酬もない。自由意志で自発的に書きたいことなど持ち合わせていないのだと、自分の空っぽさに…
当番ノート 第45期
昔から、これだな!となにかをさだめることが苦手です。 ものごとを決断するってとても難しい。 くだりのエスカレーターとか、小さい頃ほんとむりでした。 乗るときにどちらの足から出せばいいかわからなくて。 混んでるところだとどんどん後ろから人が来ちゃうし。 大学生の頃は、映画が好きで、よくDVDを借りにいってたんですけど、 なかなか何を借りるか決められず、 これを借りることによって私の2時間はなくなって…
当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 ふらりとたどり着けたあなたはラッキーね。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコです。 ゆっくり腰掛けてハイボールでも飲んでいってくださいね。 さてさて、今日はこないだ来たお客さんについてお話でもしましょうか。 まず、スタンダードの量産型新宿お…
当番ノート 第44期
けっきょく、わたしにとって町とはなんだったか。 アパートメントの連載の話をいただいてから二ヶ月のあいだ、これまで訪れたいろいろな町をよすがに、経験したこと、考えることを書いてきた。わたしはまちがいなく「町」というトピックに惹かれていて、どうにかそれを自分を通して書いてみたかった。 思い入れのある町とない町のこと。同じ町に重なったいくつかのできごとのこと。町に紐づく、あったかどうか不確かな記憶のこと…
当番ノート 第44期
手紙「 この手紙を読んでくださっている皆様へ。」 こんにちは。ハヤシミユウです。 このお手紙が最後のお手紙となりました。 まず、わたしのあっちゃらこっちゃらに散るわがままお手紙を 読んでくださりありがとうございました。 今回初めて読んでくださる方は、 「ああこの人は好きなようにお手紙を書いていたんだ!」 と思っていただけると嬉しいです。 実は、こうやってちゃんとした場で文章を書かせていただくのは …
長期滞在者
私は心配性である。 えぇ? と言われてしまいそうだが、 一人でいる時の私の心配性はそれはもうひどい。 石橋の上を叩いて叩いて、その下に船を用意していないと怖いくらいの心配性だ。 番組やイベントの台本を自分で作成する時も、 書いていなくても大丈夫かなと思うことも、 「いやいや本番でど忘れするかもしれないし」と、ちょっとでも不安が頭をかすめることは詳細に書く。 友人とのLINEのやりとりでも、送信をし…
長期滞在者
定期的に流れてくる町内放送を聞くと、「その場所にいる」という感覚を強く意識する。なかでもふたつ、好きなものがある。 —— ここ数年間、8月のお盆のあたりには、いつも北海道の礼文島にいる。礼文島では遺跡の発掘調査が継続しており、各地や各国の学生や研究者たちが集まって、8月に調査を進めている。わたしも毎年この調査に参加しているのだ。 真夏とはいえ、北海道の北端の島は、本州と比べ…
当番ノート 第44期
「大切とは」についてそろそろ真剣に考えないと、このさき生きていかれないかもしれない。何かを大切にすることとは、わたしにとって生きることとイコールだとわかったから。 大切だと感じられるものを守ること。「守る」というのは、「庇護する」という意味だけでなく、「遵守する」という意味も含めて。目に見えるもの、見えないもの、全部。生きていく上で必要な、もっというと、死なないための矜持とエナジーは、大切なものを…
当番ノート 第44期
嵐のような雨風の火曜日から一転、爽快な快晴となった水曜日。 朝、いつものように大学の門を通り抜けると、右手に賑やかな雰囲気がある。 近所の保育園児と保育士さんが、のびのびと戯れていた。10数人の園児と、3人くらいの保育士さん。何をしているとは形容しがたいが、とても穏やかな場であることは確かだった。 穏やかな気持ちを分けてもらい、ちょっといい気分で自分の場所へと向かった。 お昼ご飯を調達しに出か…
長期滞在者
日本のビートルズと称されたザ・フォーククルセダーズ。通称フォークル。 フォークルは1965年に京都で結成され、結成メンバーは加藤和彦、北山修という2人の天才と、はしだのりひこ(通称”のりちゃん”)の3人。 帰って来たヨッパライ、悲しくてやりきれない、青年は荒野をめざす、イムジン河など、その他多くの名曲、迷曲、珍曲(多くが作曲:加藤和彦、作詞:北山修)を残してわずか数年で解散。 私の母親曰く、ラジオ…
当番ノート 第44期
目的地のある足が 異なる拍の足音を 道へ打ちこんでゆく スニーカーの四分の四拍子と ハイヒールの八分の六拍子とは 倍数ごとにふれあっては ふたたびはなれる それから革靴のアレグロを聴いたりする 打たれた足音を まちはすべて記憶しているが思い出すことはない ぼくは座って停まっている 座る身体にも目的地はあって 活動はどれもおわりを既に含んでいる いま_にしか打たれない拍 むじゃきな個別のあらわれ ひ…
当番ノート 第44期
手紙「これからのわたしさんへ。」 これからのわたしさん、こんにちは。 これからのわたしさんは、一体どのようになっていくのでしょう。 人間のまま?水になる?それともトマトになる…? 今のわたしさんは、きっと、 「人間でも水でもトマトでも、なんでもいいよ」って言うと思うんだ。 つらいこと、苦しいこと、いやなこと、たくさんあったね。 わたしJr.のときから生きづらさを抱きかかえて ずっと社会に馴染んでき…