当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 ふらりとたどり着けたあなたはラッキーね。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコよ。 今日は雨だから、暑さを吹き飛ばすモヒートなんていかがかしら? あら、いつも通りのジャックダニエルソーダ割り? 男は「定番が好き」なのね?もっと冒険してみたら?…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
「マネキンが動いたのかと思った」とお客さんが驚いたのは、1度や2度ではなかった。あまり変化のない表情には、ますますそう思わせるところがあった。当時働いていたインテリア・ファッションのお店の、後輩だった女の子のことだ。 しょっちゅう変わる髪の毛の色はパフェみたいに可愛くて、白い肌と淡いメイクが人形らしさを際立たせる。彼女が着るお洋服はどれも個性的に違いないのだけど、彼女の世界観とぴったりあっているた…
長期滞在者
日本に住む友人からの情報で、 ジョージ秋山の『アシュラ』がアニメ化されていた ということを初めて知り、驚いてすぐに検索してみたら、 とある動画サイトで案の定すぐに見つかった。 2012年の作品。監督は『TIGER & BUNNY』 『神撃のバハムート』などのさとうけいいち。 震災の翌年の公開というのも 何か思うところがあってのことだったのかもしれない。 原作の内容は物凄い、というか、 凄ま…
当番ノート 第45期
不思議なんだけれど、大人には何故か 妙な高さへの拘りがある気がする。例えばそれは、マンションに住むなら高い階がいいとか、ドレスを着る時はハイヒールじゃないと自意識が萎えるとか、高層ビルにある会社に勤めているから鼻が高いみたいな 「高い」に越したことはないという変な拘り。 まってまって。 確かにマンションの最上階に住んでれば自慢になるだろうし、10cmヒールを履けば、頭身も脚の長さも見栄えが良くなっ…
当番ノート 第45期
「文章を寄稿してみませんか」と当アパートメント編集長からお誘いを受けた。 快諾した数日後、後悔した。 これが仕事やアートショーのためのプロモーションならば、是が非でも期日内に何らかをひねり出して命と引き換えにでも差し出すのだけど。何もないところに自分事をポンと置くことの行為。当件に関しましてはビジョンもゴールも報酬もない。自由意志で自発的に書きたいことなど持ち合わせていないのだと、自分の空っぽさに…
当番ノート 第45期
昔から、これだな!となにかをさだめることが苦手です。 ものごとを決断するってとても難しい。 くだりのエスカレーターとか、小さい頃ほんとむりでした。 乗るときにどちらの足から出せばいいかわからなくて。 混んでるところだとどんどん後ろから人が来ちゃうし。 大学生の頃は、映画が好きで、よくDVDを借りにいってたんですけど、 なかなか何を借りるか決められず、 これを借りることによって私の2時間はなくなって…
当番ノート 第45期
いらっしゃいませ。 ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。 ありきたりのどこにでもあるようなお店。 ふらりとたどり着けたあなたはラッキーね。 期間限定でオープン中よ。 私は店長のミス・モモコです。 ゆっくり腰掛けてハイボールでも飲んでいってくださいね。 さてさて、今日はこないだ来たお客さんについてお話でもしましょうか。 まず、スタンダードの量産型新宿お…
当番ノート 第44期
けっきょく、わたしにとって町とはなんだったか。 アパートメントの連載の話をいただいてから二ヶ月のあいだ、これまで訪れたいろいろな町をよすがに、経験したこと、考えることを書いてきた。わたしはまちがいなく「町」というトピックに惹かれていて、どうにかそれを自分を通して書いてみたかった。 思い入れのある町とない町のこと。同じ町に重なったいくつかのできごとのこと。町に紐づく、あったかどうか不確かな記憶のこと…
長期滞在者
私は心配性である。 えぇ? と言われてしまいそうだが、 一人でいる時の私の心配性はそれはもうひどい。 石橋の上を叩いて叩いて、その下に船を用意していないと怖いくらいの心配性だ。 番組やイベントの台本を自分で作成する時も、 書いていなくても大丈夫かなと思うことも、 「いやいや本番でど忘れするかもしれないし」と、ちょっとでも不安が頭をかすめることは詳細に書く。 友人とのLINEのやりとりでも、送信をし…
長期滞在者
定期的に流れてくる町内放送を聞くと、「その場所にいる」という感覚を強く意識する。なかでもふたつ、好きなものがある。 —— ここ数年間、8月のお盆のあたりには、いつも北海道の礼文島にいる。礼文島では遺跡の発掘調査が継続しており、各地や各国の学生や研究者たちが集まって、8月に調査を進めている。わたしも毎年この調査に参加しているのだ。 真夏とはいえ、北海道の北端の島は、本州と比べ…
当番ノート 第44期
「大切とは」についてそろそろ真剣に考えないと、このさき生きていかれないかもしれない。何かを大切にすることとは、わたしにとって生きることとイコールだとわかったから。 大切だと感じられるものを守ること。「守る」というのは、「庇護する」という意味だけでなく、「遵守する」という意味も含めて。目に見えるもの、見えないもの、全部。生きていく上で必要な、もっというと、死なないための矜持とエナジーは、大切なものを…
当番ノート 第44期
嵐のような雨風の火曜日から一転、爽快な快晴となった水曜日。 朝、いつものように大学の門を通り抜けると、右手に賑やかな雰囲気がある。 近所の保育園児と保育士さんが、のびのびと戯れていた。10数人の園児と、3人くらいの保育士さん。何をしているとは形容しがたいが、とても穏やかな場であることは確かだった。 穏やかな気持ちを分けてもらい、ちょっといい気分で自分の場所へと向かった。 お昼ご飯を調達しに出か…