長期滞在者
2月に入ると、各所で学校の卒業制作展や、ワークショップの修了展が数多くひらかれます。限られたスペースの中に、時間をかけて取り組んできたものの一端を示そうと、撮影やプリントばかりでなく、写真の並べ方や、額装なども慎重に検討して、まとめあげていきます。年末からこの時期にかけていろいろ相談に乗っていますと、自分の写真の選び方に苦労されている方が多いのです。先週飾る写真を選んで、本プリントに入ると打ち合わ…
長期滞在者
人生は一度きりだけど、本を読んでいるときには、読んだ物語の数だけ、別な誰かの人生を生きているような錯覚を抱く。時間も空間も飛びこえて、ときにはヒトという種の縛りさえ飛びこえて (イヌやタコが主人公の物語だってあるのだ)。本を開いて最初の一文を読んだ一瞬の後、わたしの意識は、梅雨の街並みの見える車窓から、暗い雪国の静かな朝に飛んでいたり、眠りつけない深夜の部屋から、いつまでたっても出ていけないカリブ…
当番ノート 第43期
関東のいくつかの町を転々とした後、小学校の高学年になって岡山県に引っ越した。 岡山には難波(なんば)という苗字が多い。関西弁ネイティブの私にとって「なんば」は「なんば・道頓堀・アメ村」のなんばであり、「サンバ」の発音なのだが、苗字の「なんば」はどうやら「さんま」と同じらしい。サンバじゃなくてさんま!と訂正され続け、正しい難波さんの発音を習得するのに二週間かかったが、逆に二週間すると流…
Mais ou Menos
まちゃんへ 今日は雪が降ってむちゃくちゃ寒いね。 寒すぎてつらい。指が動かない。頭も痛い。でも、もうちょっとであったかくなると信じて待っています。 ここ最近起こった変化について、今日は書きます。 今の仕事は、毎月すごく忙しくなる時期があるんやけど、自分は責任感が強いから、毎回遅くまで残って仕事をやってたんや。でも、今回は連勤の上に、長時間労働でほんまにつらくなって「無理!」となったんや。それで、仕…
Do farmers in the dark
表題:暫く立ち止まり、お漏らしをする人 最近はというと、自分の圧倒的な能力不足によりいつも半ベソをかいて過ごしています。何をするにも目にうっすらと涙が滲んできます。しかし脳や体は健康と思います。健やかで、半ベソをかいている生活を送っています。後はビタミンCのサプリメントを飲んでいたのですが、一切飲むのをやめました。かなり健康です。 また今月も娘との話をただ書いてしまいま…
当番ノート 第43期
こんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいです。 精神科看護師を楽しんでいる自称文学少女です。 みなさんは 憧れている人っているでしょうか。 妬ましい人っているでしょうか。 アニメにもなった筒井康隆の人気小説『パプリカ』の中で、 主人公の美人サイコセラピスト・千葉敦子に対し、妄想に取りつかれた後輩セラピストの柿本信枝さんが 『美人だからって調子乗んな』(意訳) とぶん殴るシーンがあ…
当番ノート 第43期
音楽家を志そうと決心した時に、私は人生の森に自ら迷い込んだ。 勤めていた高校教諭の職を辞し、退職金を当てにして、欧州音楽留学、そしてリスト音楽院大学院修了まで辿り着くことができた。しかしその頃までには、10年働いて貯めた留学資金を使い果たそうとしていた。 お金が無いので、もちろんこれから住む家も無い。4年間の留学生活で連れ添ったピアノも置く場所が無く、泣く泣く知人に譲った。残ったのは大量のオーケス…
当番ノート 第43期
4 魅力のなさ、さみしさ、壊れかけていること アパートに住んでいると隣人には関心を向けないが、一方たとえば存在しないように振る舞うことで存在しないことにできるという存在の毀損は私たちを無へと追いやる。日本語の問題として言うならば芸術と無は森羅万象に含まれない何かであるが、森羅万象に含まれないことは芸術と無を毀損する。グローバリズムと産業の終わり、または全ての資本主義が単なる運動、あるいは全ての運動…
長期滞在者
今月は3週間程、出張で家を空けていた。 私は生まれてこのかた一度もホームシックにかかったことがない人間なのだけれど、一人暮らしだったらこんなにも帰宅を楽しく思えなかったなかっただろうと思う。 出張の合間、パリまで列車で出かけた。アパートメントの管理人、かおりさんに会いに。 私達はなんて世界に住んでいるのだろう、と言い合える人がいるだけで、心の澱が消えていくような気がする。 そして、私達はどんな世界…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
「まずはひたすら真っ直ぐ、平たく、均等にできるようになるところから。間違えたら丁寧に解いて、そこからまたはじめましょう」。ロンドンの唯一無二な老舗百貨店「リバティ」の手芸フロアの店員さんはそう私に念を押した。確かに基礎はどんなことをはじめるにしても肝心に違いない。でも、ピアノならハノンの練習より楽曲の練習をしたかったし、編み物なら単調なスヌードよりティーコゼーがつくりたかった。私の飽き性や堪え性の…
当番ノート 第43期
10。生まれてからこれまでにした引っ越しの回数。ほとんど二年に一回のペースだ。 ある場所から別の場所へ住居を変えるというのは、なかなかに労力の要ることだと思う。荷物をつめたり、電気ガス水道を契約し直したりといった引っ越し作業はもちろん、お世話になったみなさんに別れを惜しむ挨拶をし、新しい土地に移ってからは、見慣れた景色へのノスタルジーを愛撫しつつ、そこにあるコミュニティーになるべく早く順応する。こ…
当番ノート 第43期
初めましてこんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいと申します。 どちらで呼んでくださってもかまいません。 まりこさんの紹介にて連載はじめさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。 慣れるまでちょっとどう書いたらいいか的なキョドりかたをすると思いますが通勤時の意識飛ばしや暇つぶしくらいには有用なことが書いてあるのでぜひついてきてください。 『フィルス』という映…