当番ノート 第43期
7 芸術、あるいは無。批評、あるいは死。 革命が「やっぱり無理だ」という時、人は何によって諦めるのだろう。20世紀の間、諦めの態度は批評によって表明されてきた。であるが故に批評的であることが一つの芸術たりえた。前回の連載に対する友人からの指摘「アリストテレスいわく『社会をつくることができない者か、完全に自足しているので社会を必要としない者は、野獣か神であって、都市国家の一員にはならない』」は、無と…
長期滞在者
藤田莉江との写真の二人展『Strangely beautiful』(ギャラリー・ライムライト/大阪)、おかげさまで盛況、たくさんの方にご来場いただきました。 ありがとうございます。 この奇妙なタイトルは、相方の藤田がちょっと理屈っぽい(笑)そして長いタイトルを考えてきたので、もうちょっとまとめられないか、と僕が無理やり最大公約数的な言葉に置き換えたのです。 藤田は「だからといって、そうとはかぎらな…
長期滞在者
新しいバンドに出会えた時はわくわくする。 メンバーはどんな音楽が好きなんだろう? この楽曲にはどんな思いを込めたのだろう? レコーディングの時にはどんなことがあったのだろう? インタビューをしていて、音楽の話で盛り上がれることが1番楽しい。 それぞれの音楽への思いが交差した時に高まる気持ち。 その時に、彼らから溢れ出す言葉を、私は一人でも多くの人に届けたい。 ミュージシャンとのコミュニケーションで…
長期滞在者
2月に入ると、各所で学校の卒業制作展や、ワークショップの修了展が数多くひらかれます。限られたスペースの中に、時間をかけて取り組んできたものの一端を示そうと、撮影やプリントばかりでなく、写真の並べ方や、額装なども慎重に検討して、まとめあげていきます。年末からこの時期にかけていろいろ相談に乗っていますと、自分の写真の選び方に苦労されている方が多いのです。先週飾る写真を選んで、本プリントに入ると打ち合わ…
長期滞在者
人生は一度きりだけど、本を読んでいるときには、読んだ物語の数だけ、別な誰かの人生を生きているような錯覚を抱く。時間も空間も飛びこえて、ときにはヒトという種の縛りさえ飛びこえて (イヌやタコが主人公の物語だってあるのだ)。本を開いて最初の一文を読んだ一瞬の後、わたしの意識は、梅雨の街並みの見える車窓から、暗い雪国の静かな朝に飛んでいたり、眠りつけない深夜の部屋から、いつまでたっても出ていけないカリブ…
当番ノート 第43期
関東のいくつかの町を転々とした後、小学校の高学年になって岡山県に引っ越した。 岡山には難波(なんば)という苗字が多い。関西弁ネイティブの私にとって「なんば」は「なんば・道頓堀・アメ村」のなんばであり、「サンバ」の発音なのだが、苗字の「なんば」はどうやら「さんま」と同じらしい。サンバじゃなくてさんま!と訂正され続け、正しい難波さんの発音を習得するのに二週間かかったが、逆に二週間すると流…
Mais ou Menos
まちゃんへ 今日は雪が降ってむちゃくちゃ寒いね。 寒すぎてつらい。指が動かない。頭も痛い。でも、もうちょっとであったかくなると信じて待っています。 ここ最近起こった変化について、今日は書きます。 今の仕事は、毎月すごく忙しくなる時期があるんやけど、自分は責任感が強いから、毎回遅くまで残って仕事をやってたんや。でも、今回は連勤の上に、長時間労働でほんまにつらくなって「無理!」となったんや。それで、仕…
Do farmers in the dark
表題:暫く立ち止まり、お漏らしをする人 最近はというと、自分の圧倒的な能力不足によりいつも半ベソをかいて過ごしています。何をするにも目にうっすらと涙が滲んできます。しかし脳や体は健康と思います。健やかで、半ベソをかいている生活を送っています。後はビタミンCのサプリメントを飲んでいたのですが、一切飲むのをやめました。かなり健康です。 また今月も娘との話をただ書いてしまいま…
当番ノート 第43期
こんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいです。 精神科看護師を楽しんでいる自称文学少女です。 みなさんは 憧れている人っているでしょうか。 妬ましい人っているでしょうか。 アニメにもなった筒井康隆の人気小説『パプリカ』の中で、 主人公の美人サイコセラピスト・千葉敦子に対し、妄想に取りつかれた後輩セラピストの柿本信枝さんが 『美人だからって調子乗んな』(意訳) とぶん殴るシーンがあ…
当番ノート 第43期
音楽家を志そうと決心した時に、私は人生の森に自ら迷い込んだ。 勤めていた高校教諭の職を辞し、退職金を当てにして、欧州音楽留学、そしてリスト音楽院大学院修了まで辿り着くことができた。しかしその頃までには、10年働いて貯めた留学資金を使い果たそうとしていた。 お金が無いので、もちろんこれから住む家も無い。4年間の留学生活で連れ添ったピアノも置く場所が無く、泣く泣く知人に譲った。残ったのは大量のオーケス…
当番ノート 第43期
4 魅力のなさ、さみしさ、壊れかけていること アパートに住んでいると隣人には関心を向けないが、一方たとえば存在しないように振る舞うことで存在しないことにできるという存在の毀損は私たちを無へと追いやる。日本語の問題として言うならば芸術と無は森羅万象に含まれない何かであるが、森羅万象に含まれないことは芸術と無を毀損する。グローバリズムと産業の終わり、または全ての資本主義が単なる運動、あるいは全ての運動…
長期滞在者
今月は3週間程、出張で家を空けていた。 私は生まれてこのかた一度もホームシックにかかったことがない人間なのだけれど、一人暮らしだったらこんなにも帰宅を楽しく思えなかったなかっただろうと思う。 出張の合間、パリまで列車で出かけた。アパートメントの管理人、かおりさんに会いに。 私達はなんて世界に住んでいるのだろう、と言い合える人がいるだけで、心の澱が消えていくような気がする。 そして、私達はどんな世界…