当番ノート 第43期
こんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいです。 精神科看護師を楽しんでいる自称文学少女です。 みなさんは 憧れている人っているでしょうか。 妬ましい人っているでしょうか。 アニメにもなった筒井康隆の人気小説『パプリカ』の中で、 主人公の美人サイコセラピスト・千葉敦子に対し、妄想に取りつかれた後輩セラピストの柿本信枝さんが 『美人だからって調子乗んな』(意訳) とぶん殴るシーンがあ…
当番ノート 第43期
音楽家を志そうと決心した時に、私は人生の森に自ら迷い込んだ。 勤めていた高校教諭の職を辞し、退職金を当てにして、欧州音楽留学、そしてリスト音楽院大学院修了まで辿り着くことができた。しかしその頃までには、10年働いて貯めた留学資金を使い果たそうとしていた。 お金が無いので、もちろんこれから住む家も無い。4年間の留学生活で連れ添ったピアノも置く場所が無く、泣く泣く知人に譲った。残ったのは大量のオーケス…
当番ノート 第43期
4 魅力のなさ、さみしさ、壊れかけていること アパートに住んでいると隣人には関心を向けないが、一方たとえば存在しないように振る舞うことで存在しないことにできるという存在の毀損は私たちを無へと追いやる。日本語の問題として言うならば芸術と無は森羅万象に含まれない何かであるが、森羅万象に含まれないことは芸術と無を毀損する。グローバリズムと産業の終わり、または全ての資本主義が単なる運動、あるいは全ての運動…
長期滞在者
今月は3週間程、出張で家を空けていた。 私は生まれてこのかた一度もホームシックにかかったことがない人間なのだけれど、一人暮らしだったらこんなにも帰宅を楽しく思えなかったなかっただろうと思う。 出張の合間、パリまで列車で出かけた。アパートメントの管理人、かおりさんに会いに。 私達はなんて世界に住んでいるのだろう、と言い合える人がいるだけで、心の澱が消えていくような気がする。 そして、私達はどんな世界…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
「まずはひたすら真っ直ぐ、平たく、均等にできるようになるところから。間違えたら丁寧に解いて、そこからまたはじめましょう」。ロンドンの唯一無二な老舗百貨店「リバティ」の手芸フロアの店員さんはそう私に念を押した。確かに基礎はどんなことをはじめるにしても肝心に違いない。でも、ピアノならハノンの練習より楽曲の練習をしたかったし、編み物なら単調なスヌードよりティーコゼーがつくりたかった。私の飽き性や堪え性の…
当番ノート 第43期
10。生まれてからこれまでにした引っ越しの回数。ほとんど二年に一回のペースだ。 ある場所から別の場所へ住居を変えるというのは、なかなかに労力の要ることだと思う。荷物をつめたり、電気ガス水道を契約し直したりといった引っ越し作業はもちろん、お世話になったみなさんに別れを惜しむ挨拶をし、新しい土地に移ってからは、見慣れた景色へのノスタルジーを愛撫しつつ、そこにあるコミュニティーになるべく早く順応する。こ…
当番ノート 第43期
初めましてこんにちは。 そにっくなーす a.k.a. ひのはらみめいと申します。 どちらで呼んでくださってもかまいません。 まりこさんの紹介にて連載はじめさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。 慣れるまでちょっとどう書いたらいいか的なキョドりかたをすると思いますが通勤時の意識飛ばしや暇つぶしくらいには有用なことが書いてあるのでぜひついてきてください。 『フィルス』という映…
メニハ ミエヌトモ
先日、「参鶏湯」の作り方を教わった。 参鶏湯の作り方だけではなく薬膳の事も教わったのだが、韓国の薬膳の考え方も面白くて、日本にいる私達の生活にも共通して考えられる事ばかりだったし、何より「薬膳とはその人に合った食べ物を食べる事」という言葉に共感した。 人それぞれ体質も違えば体調も違う訳で、流行りのスーパーフードが万人に良いかと言えば必ずしもそうとも言えないと思うのだ。 因みに参鶏湯は韓国では主に夏…
当番ノート 第43期
ドナウ川の流れる街、ハンガリー・ブダペストで、私は音楽の勉強を続けている。 ハンガリーとの出会いはかれこれ24年前。高校時代に所属していた吹奏楽部で、ハンガリーへ演奏旅行に訪れたことが契機だった。デブレツェン、ケチケメート、そしてブダペスト。ハンガリー人のおおらかな人柄に惹かれると同時に、いつかここで音楽を勉強したいと夢を描く自分がいた。 高校卒業時、幼馴染みで高校も一緒に楽器を演奏していた仲間の…
当番ノート 第43期
0 ステートメント 従来の芸術には、大別して二つの系譜があったように思われます。 一つはある特定の社会や集団を素材に、存在する矛盾や運動ないしは抵抗や性質を、具体的かつ徹底的に批評していこうとする、いわば国民国家を前提とした芸術。 もう一つは本人の極端な経験や固有の知識、あるいは新たに発明された技術を踏まえ、我々人類が誰しも直面するほとんど暴力的なまでの人生の不毛さを共有するための、いわば質や精神…
長期滞在者
大変遅ればせながら、明けましておめでとうございます。 昨年末から2ヶ月ほど留守をしましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか? そういえば、年末にはアパートメントのクラウドファンディングが目標額を達成したという、 おめでたい(すでに懐かしい?)話が飛び込んできて、 ぼくも遠隔ライブイベントに参加しました。 ただのお喋りで時間があっという間にすぎてしまった感もありましたが、 なかなか楽しい時を過ごす…
長期滞在者
「人生は運ゲー、とにかく行動したほうが勝つ」。そんな言葉が妙に真理に感じてしまうのは、自分が勝っていないほうの人間だからだ。 サイコロを振ろうとすると、いつも不安に頭を支配されてしまう。1が出るのは恥ずかしいし、6が出てもなんだか後ろめたい。安心するのは3や4だけど、それが本当にほしいわけじゃない。あれこれと考えているうちに、タイミングを逃したり、棄権することを正当化してしまったりする。 出目がな…