こんばんは。はじめましての人が大半だろうに、でも身近な人や、遠く離れた友人にも読んでほしいなと思って、それでどちらかというと近況報告のような心持ちではじめた連載も早3年目。遂にやってきた2020。新年なのと、アパートメントのリニューアル間近なのとで、少しだけ改めての自己紹介をします。
お直しをする人の溜り場をつくる試み
はじめてアパートメントで書かせてもらったのは、2017年10月から11月の当番ノート35期。それまでひとりでちまちまと、穴のあいた自分の靴下を繕いながら考えていたことを、何日も書いては消してを繰り返しながらはじめて言葉にした。「お直しカフェ-お直しをする人の溜り場をつくる試み （1）はじめに」もし、今日はじめてこの連載にたどり着いたという人がいたらこっそり読んでほしい。
この投稿を想像以上にたくさんの人に読んでもらうことができて、繕いをはじめてみませんかという会（便宜上ワークショップと呼んでいる）に人が来てくれたり、まさかのラジオ番組に呼んでもらったり、少しずつ色んな人とお直しの話ができるようになった。「みっともないからやめなさい」という祖母の言葉を笑って受け流す程度には確信を持ってやっていたけれど、上手く説明できないままでいたこの試行錯誤を、ここアパートメントでは、色んなモチーフあり、ゲストあり、素材、季節ありで毎回つらつらと言葉を重ねている。2018年からは、アトリエの滞在者として居場所をいただいた。
京町家をお直ししながら暮らしている
（中略）前厄本厄結婚引っ越し出産、この3年いろんなことがあって今は京都の西陣で、大工の夫と生後半年の坊や（かわいい）と3人で小さな町家をお直ししながら暮らしている。ほんの時々、東京、北千住BUoYでカフェの店番をすることもある。月に一度「お直しの日だから」と、家族を放ったらかして夜な夜なカフェに出かける。それで、日々のあれこれや、お直しについて関連してるようなしてないようなことを書き連ねている。「直す」いう言葉を辞書で調べると、「修理する、修繕する、整える、繕う、そこなわれた気持ちなどをもとの状態にする」などが出てくる。広い。この言葉の広さに守られて、自由に「お直し」を試行錯誤して、それを少しずつ言葉にしている。なんだって、試行錯誤はたのしい。今年は絵を添えてみることにした。
捨てるならください
年末年始、溜まりに溜まったお直し順番待ちの子達（穴の空いた靴下や手袋）をたくさん鞄につめて、静岡と大阪へ向かった。これは、静岡のじいちゃんの庭で頂いたレモンを描いたもの。静岡は京都と比べものにならないぐらい暖かくて、柑橘の木があちこちに生えていた。元ミカン農家で元ネギ農家のじいちゃんはレモンは特に何にも使わないらしい。毎年実がついて、落ちて、気づいたらなくなってると言っていた。それならばくださいと、そのとき木になっていたレモンを全部収穫してもらってきた。田舎版の捨てるならください。今、お年賀ばりに、会う人会う人にレモンを差し上げている。それから、レモネードを作って、フライに絞って（途方もない）、たくさんのレモンどうしようか考えるのも初めてのことなのでたのしい。
捨てずに取っておく
「ちょっとそこ開けてみてねえ」とばあちゃんに言われて納屋を開くと、センリョウのたくさん入ったバケツがあった。年末、植木屋さんに庭の木の剪定に来てもらったけど、これだけ別に取っておいたらしい。「お正月の飾りにいいじゃんね。好きなだけ持っていきなね」赤い実の枝と黄色い実の枝。これも、好きなだけ頂いた。大阪の実家で飾る分。それから、堀江に住む祖母の分。年の瀬恒例の餅つきの日、集まった娘たちもめいめいに持ち帰る。「みんなちょっとずつほしいかなと思って」と、私の新しいばあちゃんは笑って言った。
＊＊＊
夜になると、みんな部屋に集まって、可愛い可愛いと坊やの相手をしてくれた。私はその横で繕いに励んだ。そういうシーンで、母親がじっと傍にいるより、スマホに目を落としてるより、手元動かして何やら内職してるぐらいが、同じ空間にいるいい塩梅なんじゃないかと、自分勝手に想像して、おかげさまで、お直しはかなり捗った。年の終わりとはじめは、家族で過ごすのがいい。整った。
