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2F/当番ノート

お直しカフェ-お直しをする人の溜り場をつくる試み (7)染め直し

当番ノート 第35期

こんにちは!今日は、会社の下のディーンアンドデルーカからお届けしはじめます。うちのビルの1階には、スタバとディーンアンドデルーカが向かい合わせで入っていて、いつも10:1ぐらいでだいたいスタバにコーヒー買いに行くのだけど、でもディーンアンドデルーカはシーズナルのドリンクがかっちょいいので(「ラムレーズンクリームラテ」とか「ソルティレモンフラッペ」とか)時々、マーケティングリサーチ気取りで来店する。今日について言えば、毎年クリスマスシーズンに登場する「ホットアップルサイダー」を楽しみにやってきた。スパイシーであったかいリンゴジュース、美味い(昔はスタバもクリスマス時期にこれを出していたこともあったが、近年は見なくなってしまった。ちなみにアメリカのスタバには、これにさらにホイップクリームとキャラメルを足した「キャラメルアップルスパイス」というメニューがあって、テイクアウトして寒い街中で飲むと本当に美味い)

なんだか、意図せぬまま、毎回の投稿の前座部分にカフェの話が挟まるようになって、この連載タイトルのお直し”カフェ”の部分がやっと出現してきたようにも思ったりもする。私はやはりカフェが好きだし、浅い考察を重ねてしまうし、カフェという言葉を”溜まり場”や”場としてのメディア”的なニュアンスで頻出させがちでもある。ひと息つく、人と会う、家でも職場でもできないことをやる、言い尽くされた都市の中の”サードプレイス”的なニュアンスで、お直しをする人の溜まり場たるカフェを、突発的にはたまた半永久的に作っていけたらいいなとも妄想する。

さて、そろそろ終わりが見えてきた本当番ノートですが、今日は前回歓藍社での藍づくりの活動にやや関連し、染めによるお直しの話をしたいと思います。「色には音色があるからいい」とは、歓藍社のリーダー野内彦太郎さんの言葉ですが、色によって新たな命が注がれる、染め直しの世界をどうぞご堪能ください!

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染め直し、とはその名の通り、染色によるお直しのことを指します。日本の農村では、古くから藍を育て、自分たちの着ている服や布を染める習慣があったと聞きます。藍で染めることにより布が強くなり、また防虫にも役立てられる。新しい布やつむいだばかりの糸(これも昔は各家で綿花を育てていたはず)ばかりでなく、長年着て汚れがついたり色あせてしまった服や兄弟や両親、祖父母からのお下がりも、染めを施すことで、新しい色合いとともに、そこからまた長く着用できるように生まれ変わることができます。
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ここで、福島県大玉村での藍づくりの活動の初年度、はじめて夏に染めをやったとき、染めたいもの持参というアナウンスに対して、無印良品に行き無地の白Tを買って持参し、惨敗したときの日記が残っていたので引用したい。

ーとかく村のお母さん達が圧倒的だった。おそらく「何か染めたい白いものを持ってこい」という呼びかけがあったのだろう。Tシャツ、ハンカチ、ブラウス、帽子、ありとあらゆる ”長年身につけて飽きたor黄ばんでしまったもの” をほいほいと染めて、割にご満悦の表情で持ち帰る様。白Tを新しく購入して挑んだ私、完敗である。お直しに染料、、、知識としてはあったけど、完全に失念してた。ぴったりじゃん! 気軽な藍染、、持ち物総藍色化、、、これは探求したい。村の人たちの経験に基づいた軽やかな創意工夫、ものとの付き合い方も、もう少し観察したい。

(「大玉村と藍のこと」2016年8月12日)

このときに見て感動した、お母さんたちの染め直しの服は、その後少しの間の貸し出しをお願いし、大阪や東京で開催した展示と販売の会でも発表した。

このときに見て感動した、お母さんたちの染め直しの服は、その後少しの間の貸し出しをお願いし、大阪や東京で開催した展示と販売の会でも発表した。

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ここから、歓藍社の活動中に染めたものを一挙に紹介したいと思う。夏場は特に、だんだんみんなの服が総藍色化してきた感があって、空のような海のようなこの青い色でなければ、きっと多くの人を巻き込んだ活動にはなってないだろうなとも思ったりする。

職人の作業着、半纏をざぶんと染めた大工。粋である。頭のタオルも同様。

職人の作業着、半纏をざぶんと染めた大工。粋である。頭のタオルも同様。

同じく、藍の葉を干す大工の写真。着ている長袖シャツは滋賀の紺屋(こうや)にお邪魔したときに染め直したもの。ぎゅっとしぼっただけの絞りが荒々しい。

同じく、藍の葉を干す大工の写真。着ている長袖シャツは滋賀の紺屋(こうや)にお邪魔したときに染め直したもの。ぎゅっとしぼっただけの絞りが荒々しい。

ざる染めという手法でまだらな模様をつけた。コカ・コーラとの対比もまた気にいっている。

ざる染めという手法でまだらな模様をつけた私のエコバック。コカ・コーラとの対比もまた気にいっている。(写真:竹内吉彦)

これは、第3回でも紹介した、私お得意の靴下お直し。割り箸で挟んで柄をつけた。

これは、第3回でも紹介した、私お得意の靴下お直し。割り箸でぎゅっと挟んで柄をつけた。

縫製の仕事もしていたことがあるという官野さんは、綿のシャツを染めて、染まらなかった化繊の糸を水色の糸で縫い直すという手の込みようだった。それから、大手ブランドの下請けで服を作っていたときの余り布で何か作りたいと、廃棄布を染めての、衣服づくりにも挑戦していた。

縫製の仕事もしていたという官野さんは、綿のシャツを染めて、染まらなかった化繊の糸を水色の糸で縫い直すという手の込みようだった(着ているもの)それから、ブランドの下請けで服を作っていたときの余り布で何か作りたいと、廃棄布を染めて見せにきてくれた。

藍の乾燥葉で空の色に染まった布に、元の布地にあった白い花柄が浮かび上がった。

1ヵ月後に見せてもらった菅野さん作ブラウス。藍の乾燥葉で空の色に染まった布に、元の布地にあった白い花柄が浮かび上がった。

えれなさんの裾グラデーション染め。おしりのところだけ汚れるのはよくある。

えれなさんの裾グラデーション染め。おしりのところだけ汚れるのはよくある。

ちょっと変り種、須貝珈琲のコーヒー染め+藍のたたき染め。元の手ぬぐいの柄と合ってて楽しげな幹事である。

ちょっと変り種、須貝珈琲のコーヒー染め+藍のたたき染め。元の手ぬぐいの柄と合ってて楽しげな幹事である。

こちらはさらに進化バージョン。いらなくなった布を染めて、裂いて、織ったもの。なべさん作のラグ。

こちらはさらに進化バージョン。いらなくなった布を染めて、裂いて、織ったもの。なべさん作のラグ。

それからこれは、歓藍社の活動拠点のシンボル的な暖簾を「1年経ったから・・」とえれなさんが染め直しを試みている途中経過。ここから文字の部分は白く抜く。

それからこれは、歓藍社の活動拠点のシンボル的な暖簾を「1年経ったから・・」とえれなさんが染め直しを試みている途中経過。ここから文字の部分は白く抜く。

ちなみにこれがbefore。

ちなみにこれがbefore。

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歓藍社にジョインする前、「福島で藍染をはじめた」と軽い飲み友達だった佐藤さんから聞いたときは、こんなに多様なものを身軽に染めるような活動は微塵も想像していなかったけど、暮らしの中に染料があることが、今はだんだんと当たり前の風景になりつつある。お直しの術や、持ち物に手を加える術を少しずつ覚えることで、ダメになったから捨てる、ときめかなくなったから捨てるという考えから、少しずつ距離が生まれてきた。

(おまけ)
その1:歓藍社では、福島県大玉村や近郊の方々に、藍の種の配布を行っています。対象は、歓藍社の活動に参加したことがある方です。今月末、11月26日にも「藍の種の収穫 / 葉っぱこぎ / 種のおすそわけ の会」を実施予定ですので、よければ!

その2:藍なんかねえよ、ないわ、という方、玉ねぎがあります!玉ねぎの皮、とっても手軽ですてきな染料なので、ぜひほいほい染めに使ってみてください。私は汚れしまったシャツやパンツを台所でぐつぐつ染めてます。やってみてね!では!

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はしもと さゆり

はしもと さゆり

お直しデザイナー。企画と広報、ときどきカフェ店員。落ちているものとお直し、マッサージとマイケルジャクソンが好き。

Reviewed by
キタムラ レオナ

はしもとさんの連載も、早いことに今回が7回目。

今回は、前回の藍づくりのお話に続いて「染め直し」に関する記事。
(前回の記事が未読の方は是非6回目の記事から読んで頂きたい)

ひとえに、「藍染め」といっても、決して画一的ではなく、荒々しいものや、繊細なもの。
全体を染めたもの、一部分に絞って染めたものなど、染め方によって、まったく違う印象の仕上がりになる。

自分なら、どんな物をどんな風に染め上がるだろうと、妄想しながら、文章と写真を楽しめる記事。

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