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《画家と7人の肖像》スピードワゴン 小沢一敬

画家と7人の肖像

例えば、ルノワールが描いたイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢の何を知っている?

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Photo by Kazuki Hiro

あなたの肖像画を描きたいという私の突然の提案に対し、小沢さんは何故とも問わず
また条件の一つも書き添えること無く「いいですよ」と返答した。

ゴールまでに越えるものがあるだろうと構え顔をあげたら、ハードルの取り払われたまっすぐな道が延びているような展開だった。

きっと、17歳の頃からだ。高校時代、放課後に友人と教材用のビデオデッキをこっそり使ってテレビ番組の録画を観ていた記憶がその根拠にある。あの頃から箱の中で見かける小沢さんには、常に独自の「構図」があるように感じていた。「この角度で、こう見て欲しい」と暗に提示する瞬間がある。そしてそれは発信された後、受け手の解釈に委ねられる絵画のようだった。私は結局、肖像画を仕上げ、この記事を書くに至るまで、彼について何も知らない。今回描かせていただくにあたっても、撮影に必要な条件以上に話し合うことはなく、私は10年以上持ち続けた彼に対する解釈を早々に梱包して制作に運んだのだった。

私の感じていた小沢さんの独特な世界観。例えば彼が頻繁に更新しているTwitterに綴られる言葉もそうだ。周りとの掛け合い、客席の笑い声が遮断された中で静かに脳に届く彼の言葉と字面は、お笑いタレントとして発されるものとは別の色を纏っている。あのアカウントに「スピードワゴンというコンビをやってます。」という自己紹介が書かれておらず、さらには「小沢一敬」という名前すら取り払われた時。

私は、その男性を絵にしたいと思った。

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Photo by Kazuki Hiro

彼が何者で、どんな声で話すのか、それらを知ることのない地球上のどこかで、私が独断で抽出したイメージによって描かれた小沢さんの肖像画を静かなギャラリーに展示してみる。彼がお笑いタレントとして、日々大勢の人たちを笑わせている。この写真1枚から、想像できるだろうか。

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Photo by Kazuki Hiro

小沢さんの発信している彼自身が映る写真には、前々から興味深いものがあった。

多くはほとんど笑わず、カメラから目線を外している横顔。アンニュイな表情だ。撮影には彼にベタなアイテムを渡したかった。黒いスーツに煙草、そして赤い花束。もちろん撮影用の造花ではなく、お気に入りの花屋にて早朝に手に入れた生花。赤い花だけのブーケを作ってもらった。これから愛する女性に渡すかもしれない。いや、もう渡せなかったかもしれない。渡せない人に、花を買ったかもしれない。とにかく暗闇で煙草を燻らせる哀愁漂う男。

彼にしか纏えない銀河がある。
それは「理解してくれ」というより、そっと発信される残像のようなものだ。

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Photo by Kazuki Hiro

あなたはどんな人間?

優しい? 怖そう? 近寄り難い?憎めない人?
あなたは人生をどう「ブランディング」している?

他者に自分をぶつけた時に返ってくる「音」の集合体が、私を象っている。つまり私は、他者の解釈の統計で自分がどんな人間か理解している。私という人間は、怖いらしい、優しいらしい、強いらしい。例えば私が画家だと言い張っても、周りが全員「否、詩人だ」と言うならば、私はそうか詩人なのかと思い始めるだろう。私が「自分は真面目にやってる」と主張しても、周りが「お前は怠け者だ」と指差すなら、私は真面目な人間として地球上に立てないように思う。自分がどう在りたいかだけの1本軸で生きていきたくても、他者が私をどう思うかで方向性は定まってしまう。「一人では生きていけない」というのは、そういうことでもある。

どうしてみんな日常の写真や出来事を発信したがるんだ?その答えは「私はこんな人生を送っている」というハイライトを他者にぶつけることで、自分の人生の形を確認したいからだ。「おしゃれなカフェで素敵なケーキを、かけがえのない友人たちと食べることが出来た自分」を、その他何気なく流れているであろう時間の中でハイライトとして残す。こんな時間を過ごせている。私は十分、幸せじゃないか、皆さんもそう思いませんか?「そうだね、いいね」

自分で自分の日常を認知して発信し、客観的にも深く考えることなくOKだと認めてもらう。
それが簡単に可視化出来るようになった。大勢が利用するだろう。

かくいう私も、記録に幸せを残すように努めるようになった。美しい景色を生きている間に捕まえることができた記録こそ、私の人生は充実しているという確信に繋がるのだ。昔は悲しくて怒りに溢れたドラマチックな自分が好きだった。残してきた記録は黒歴史になってしまったが、それでも消すことはないだろう。それもまたある時期貫こうとした「私をこう見て欲しい」という私という絵の構図なのだ。

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Photo by Kazuki Hiro

もう一度言うが、私は今日に至るまで小沢さんのことをほとんど何も知らない。

彼から平等に大勢に向けて放出された情報の中で、ある人は「面白い」と笑い、ある人は「会ってみたい」と感じ、私は「描いてみたい」と思ったのだ。彼にとって、この種の「音」は意外だったかもしれない。彼の人生を象るハイライトに、自身の肖像画が異国のギャラリーに飾られるという事実が刻まれるとしたら。この記事を発信した後、ぜひ訊いてみたい。

では彼に、この肖像画をおくろう。

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Painter: Maika Kobayashi
Material: Acrylic color/ Wooden panel / KENT paper

Model: Speed-wagon Ozawa Kazuhiro
Photographer: Kazuki Hiro
Corporation: PAKUTASO
Flyer design:Tsubasa Motohashi

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さて私自身は、作品群と共にイギリスに無事入国しました。
11月からのロンドン個展、12月からのアムステルダム個展に向けて、現地でプロモーションを始めていきます。

Maika Kobayashi Solo Exhibition in London
2-26 November 2017
Sundays 11am – 2pm
or by appointment
Private view Thursday 2 November 2017

Shipton Street Gallery
Shipton Street,
London, E2 7RZ
Tel: 020 7729 3739
Email: admin@shiptonstreetgallery.co.uk

GUEST ARTIST : KUNIKA (Sweets Artist)
Cooperation : Kazuki Hiro (Photographes)
Sounds: Nekodaruma & SHINJI-coo-K [MoNoGatari]
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浅草六区ゆめまち劇場 『Blood』
‪11月25日(土)13時〜/18時〜‬
‪11月26日(日)12時〜/17時〜‬

スマートフォンケース
《iPhone8/8 Plus/x》の発表に伴い、対応のハードケース34種類と手帳型ケース5種類の予約を開始しました!
その他iPhoneシリーズ、Xperia・Galaxy・AQUOSシリーズも引き続き取り揃えております。

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ミラー付きケース
ミラーだけじゃない、ICカードやSIMカードも収納可能
SuicaやPASMOなどの交通ICカードや、電子マネーカードをピッタリ収納可能。 自動改札や買い物もスマートにできます。電磁波干渉防止シートも付いているので、自動改札でのエラーを防ぐ優れもの。 おまけにSIMカード入れも、ケース裏面についているので、SIMフリーのiPhoneをお持ちの方は、ちょっとした海外旅行にも便利です。ミラーは特殊ポリカーボネート製を使用しています。【対応機種】iPhone7・iPhone6/6s・iPhoneSE/5/5s

スマーフォトンケースは以下の機種に対応しています。
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IQOSケース
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iQOS(アイコス)は革新のたばこヒートテクノロジーにより大ヒットしている紙巻きたばこの代替え品です。 こちらはそんなアイコスをオシャレに演出するアイコスケース(カバー)となります。※IQOS2.4 Plusにも対応しています。転写プリントの技術により擦れや熱に強く、出し入れの多いハードな場面でも色落ちしにくくなっています。プリントについても正面しかプリントしていない製品も多い中、側面プリント技術によって、側面までプリントを施すことによりアイテムの一体感がより増しています。ヘビーにアイコスを使用する方にありがちな本体のプッシュボタンが故障してしまうのを、 保護してくれるプッシュアシスト機能を搭載しています。側面のインジケータはスリットがあるため電池残量も確認していただけます。充電もケースをしたまま可能です。※アシスト機能で完全に故障を防ぐわけではございません。
■対応機種
IQOS(アイコス)/ IQOS2.4Plus(アイコス2)

パスポートケース
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チケットホルダーなど機能性にも配慮
パスポートの収納だけではモノ足りないのでチケットホルダー、カードホルダー(2枚)、ペンホルダー、ストラップホール(上下)が付いています。またスナップにより閉じた状態がキープできるよう工夫しています。サイズ:縦150 × 横210mm 材質:PUレザー インクジェット印刷・UVインク加工

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※イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢・・・ピエール=オーギュスト・ルノワールが描いた少女の肖像画。Mlle_Irene_Cahen_d'Anvers

小林 舞香

小林 舞香

画家・イラストレーター。アクリル絵の具を使用し、手描きによる精密な写実画を特徴とした絵画を中心に作品を展開している。2009年よりフリーでの活動をスタートし、翌年に初のNY個展を開催。木製パネルに貼られたケント紙に絵の具で描く以外にも、壁画や舞台美術、ファッションデザイン、グラフィックデザインなど手法・表現は多岐に渡る。個展やイベントをベースにオリジナル作品を発表しながら、企業とのコラボレーションでイラストレーターとしての活動の幅も広げている。2017年11月ロンドン個展、12月にアムステルダム個展を控えているが、今回のコラムでは2018年4月に開催される銀座での個展に向けた制作を綴っていく。

Reviewed by
黒井 岬

一人の人と関わる形でものを作るとき、作品のイメージを深く掘り下げるとともに、必然的に相手のことを常に考えなければならない。小林さんは記事の中で、自分が肖像画を描くこの人のことを何も知らない、と繰り返している。けれど絵を描き上げるまでの間、自身の中の相手の像と、言葉のない対話を幾度となく交わしたのではないかと想像する。知らないからこそ、きっと深い敬意を持って。
では彼に、この肖像画をおくろう。
という言葉の添えられた絵から感じられる、知性と色気に目を見張った。

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