第5期(2012年10月-11月)


シリーズ「山」より 2012


シリーズ「山」より 2012

「星霜連関」という民俗芸能を撮影したシリーズの他に伊勢へ来て撮影しているものに「山」があります。このシリーズは伊勢神宮の鬼門の方角を守護すると言われている朝熊山という山で撮影した写真で構成しています。昔から「お伊勢まいらば朝熊(あさま)をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭で唄われるように、参宮を終えた人々は、朝熊山に参詣するのが一般的だったようです。その様に朝熊山には霊山としての側面がありますが、作品の方向はそちらへ向けるのではなく、山という一つの存在として朝熊山を撮影したいと考えました。自然の中に自分が立った時、その山という存在と自分という存在を別々のものとして認めるところから始める事で、山と感応する可能性が示唆される様に思います。
幾度か山に入ったある時、しばらく歩いていて足に軽い痛みを感じたのでそこを見てみるとヒルが食いついていました。慌てて引きはがすと血がにじみ足を伝ってぽたりと地面に落ちて、土を赤く染めました。しばらくその血の染み込んだ赤い土を見て、ふと気になって血を吸ったヒルを探してみましたが、もうすでに影も形も見当たりませんでした。考えてみると、山の湧水を飲むように、自分もまた山に住むものの血肉として食べられるものであるという意識を持つ事は、山を撮影する上でとても重要な事の様に思いました。