スケートについて

第6期(2012年12月-2013年1月)

今日はスケートの話をしようと思います。

子がやりたいというので、私も子ども時代以来ひさびさにスケートをやってみました。
私はスポーツの中ではスケートだけが好きです。
というよりスケートは私にとってはスポーツでないというほうが正確なのかもしれません。

-とくに着替えなくて良い(靴だけスケート靴にかえればよい)
-汗をかかない(かく人もいるらしいけど私はかかないし、汗かくほど激しく滑らなくても良い)
-レベルが違う人でもとりあえず一緒に行って楽しむことができる
-転んでも濡れるだけで汚れない
-臭くない

などの点において、テニスや乗馬のような野蛮な他のスポーツとは一線を画していると思います。

それに、ろくに滑れないのに偉そうなことをいってすみませんが、スケートというのは、おそらく、力ではなく、どのタイミングでどこでどう区切りをつけどこに重心をおくかが大事という意味で、ある意味クラヴサンに似ている(クラヴサンについては前回の記事参照)のです。

パリ市役所の前のスケート場

子と最初に滑り始めたのは冬季限定でパリ市役所前に設置されるスケートリンクです。

パリ市役所の前の冬季スケートリンクは、スケート靴を借りたい人は5ユーロ払いますが、マイシューズを持っている人は無料です。そのため、普段ローラーブレードをやってると思われる少年たちが技を見せびらかしたり競い合ったりする冬の戦場であり、屡々リアル血の海となります。

手すりから手が離せないヨチヨチの初心者から、コーチのような初老の男性につきそわれた若いフィギュアスケーターの少女、普段トリックスラロームやアグレッシブをばりばりにやっているインラインスケーターがアイススケート靴に履き替えただけの人が混じり合って滑る、阿鼻叫喚(←私の好きな言葉でここ20年ぐらい一日15回ぐらい使っています)状態の麻薬的な刺激がパリ市役所前の冬季スケート上の魅力です。

すごいスピードで滑ってきて、空中に飛び上がり、ガッとVの字型にスケート靴を開き刃の踵を凍りに突き立てて直前のところで急停止する、といったような、初心者を恐怖にさらし氷に穴をかえるような乱暴な滑り方に疑問は感じるものの、フィギュアスケートでは見たことのない足捌きと、あまりにも上手いのでつい見とれてしまうこともあります。

面白かったので、マルセイユでもスケート場を探して行ってみました。

マルセイユのスケート場は屋内スケート場でした。

マルセイユでは貧民が使える公共のプールやスケート場のような施設は、大抵ZEP(Zone d’éducation prioritaire教育優先地区)、要するに治安が悪めの不便な地区にあることが殆どです。そして、これはフランスでは口に出すとポリティカリー非コレクトで顰蹙なので誰の前でもはっきり言っていいことではないのですが、教育優先地区というのは現在のところ事実上「アラブ人やアフリカ人が多くイスラム教徒率が高いところ」というのが一般的です。

そんなわけで、マルセイユの屋内スケート場は、イスラム文化について学ぶための良い場所です。

豚肉だけは食べないけど酒は飲むみたいななんちゃってムスリムだけではなく、顔だけ出したヒジャブというヴェールにくるぶしまで届く長いスカートをまとった黒づくめのモノホンのイスラム教徒の女性たちが、お母さんおばあちゃんおばさんなど親戚の女性総出で子どもを3人5人7人と連れてやってくるのです。座って子ども達が滑るのを見ている人たちもいれば(兄弟姉妹がいっぱいいるので小さい子はお兄ちゃんお姉ちゃんたちが見てくれるから大丈夫。群れることで楽々子育て、日本人も見習うべきです)、その滑りにくそうな姿でスケート靴を履いてリンクに立つ勇者もいます。

たまたま子どもの学校のお友だち(アラブ人)がいて、家族親戚の女性達が一緒だったので話しかけたところ、ヴェールの種類の話などでいろいろ話が盛り上がったのですが、途中で「あ、お祈りの時間だからごめん」とぞろぞろ連れだってどこかに消えていきました。

その家族はかなり厳格なムスリムで、本当に一日5回お祈りしているそうで、お祈りの前には毎回手・顔・陰部を洗わなければいけないそうです(今まで見た感じフランス人よりもばりばりムスリムなアラブ人のほうが清潔そうだと私もいままで思っていましたが、その理由がここで判明)。
このスケートリンクは一回出たら再度入場料を払い直さなければならないので一体どこでお祈りしたのか、そしてどこで陰部まで洗ったのかわかりませんがしばらくしたら戻ってきました。

それより驚いたのはマルセイユのスケートリンクの男性客のジャージ率の高さです。みんな制服のようにアディダスかL’OM(マルセイユのサッカーチーム)のジャージを着ています。マルセイユではl’OMのジャージは正装と考えられているようです。

スケートは意外と膝と腰をまげるので、私も一瞬ジャージの購入…というアイデアが頭をよぎりました。

だが、しかし。

スケートリンクにはもちろん更衣室などといった管理の難しい高級なものはないので、結局、家からジャージを着ていくことになります。町中でジャージを着るのに慣れてしまったら、きっと、次からは「今日はスケートに行くから」と朝から家の中でジャージを着るよういなるでしょう。そのうち、朝だけですまず、夜もジャージ。結局一日中ジャージのジャージ生活になってしまい、そうなるとマルセイユ原人と同化したことになってしまいます。

そんなことになったら、日本人としては末代の恥。それだけは避けたいものです。

マルセイユのスケートリンク

マルセイユのスケートリンクで驚いたのは路上と同じでスケートリンク上にもゴミが散乱していることです。
(路上の状態についてはこちらの記事を参照してください)

鼻をかんだティッシュやお菓子の包み紙がリンクの上に沢山落ちています。

ゴミはリンクだけでなく、スケート靴をかえるベンチのまわりにも沢山落ちています。
手袋着用は必須(しないと滑らせてもらえないことに一応なっている)なので、手袋をもってこなかった人はその場で買っているのですが、その袋も山のように落ちています。
すぐそばにゴミ袋が沢山さがっているのですが、みんな、ゴミ箱にゴミを入れるのは大罪であるかのように、絶対ゴミ箱に入れません。不思議です。

そして、手をつないだり繋がったりして集団で滑る人たち、
スケートリンクの真ん中にすわりこんで削れた氷で雪玉をつくりだす子ども、
停止もできないのにすごいスピードで逆走して人にぶち当たり病院送りにする少年たち、
滑る人たちの流れ(方向が決まっている)をぶったぎって、他の人たちもひっかけて転ばせながらリンクをヨタヨタ走り回る自分の子どもを注意するどころか満面の笑みでビデオに撮り続けるお父さん…。
そしてそれを完全放置する警備員。

そうした行為は全て禁止事項としてポスターに張り出してある、しかも字が読めない人たちのためにわかりやすい絵にしてあるのですが、ここでは規則を守るということは制度への隷従らしいので、とりあえず、たとえ共存するのにどんなに不便であっても、ありとあらゆる規則を徹底的に無視することがヒューマンであるらしいです。

このイモ洗いの状態で、子は「みんながルールを守らないので滑れない」と私に苦情をいいます。その通りですが、ここはマルセイユ。仕方ありません
ママンには悪いが何もできない、いやなら、滑るのをやめるか、マイケルジャクソンがディズニーランドを借り切りにしたように、お金持ちになってリンクを借り切りにするしかないここでは、皆がルールを守らない危険な状態の中で兎に角自分の身を守ることを学ぶのだ、そのように言い聞かせました。

明日から冬休みが終わり子の学校がスタートするので毎日スケートをする生活はこれで当分おさらばですが、こっそり日中一人で行ってみたい気もします。
逆走する少年たちや、必死になる余り手当たり次第まわりの人を掴みながら全部引き倒して転ぶ下手な大人に怪我をさせられないかハラハラしながら子どもの脇にずっとついていて、自分はちっとも滑れなかったからです。

更にローラーブレード、要するにアイススケートではないインラインスケートもやってみたい。
これについては、一緒にスケートリンクに行った友人も職場に毎日インラインスケートで行けたらどんなにかっこいいことか!という夢を持っています。

トリックスラロームなんかもともと、マルセイユのダーティーな路上で犬のウン○や信じられないような多種多様なゴミを上手に避けながら滑るためにマルセイユで発達したものなのです(これはたぶん嘘)。

が、友人と二人でイメージしてみた結果「マルセイユでは無理。路上の障害物を避けることを学んでも、きっとミストラル(南仏独特の強風)で飛んできた使用済み生理用ナプキンがローラーに絡まり転倒して敢えなく入院ということになる可能性が高く危ない」という残念な結論に達しました。

そういうわけでやっぱりアイススケート…と思うのですが、ここで一つ心配ごとが。

結果

既に腿を触ったところ、いままでになかった大腿二頭筋の隆起が…。
腹の脂肪の下では既に腹筋がシュワルツネッガーのように割れはじめています。
私のように普段運動を全くしない人は、1週間も連日のようにスケートをしてしまったら、あっという間に筋肉モリモリになってしまうようです。

筋肉は維持するほうが大変です。
毎日スケートに行ってつけた筋肉は、毎日行くのをやめれば、そのままただのお肉になってしまうでしょう。

かといって毎日行ったら…。私は女ですからルトガー・ハウアーになりたくありません。

それがあって、このままスケートにはまっていいものかどうか現在大変悩んでいるのです。