魔法の鏡

第12期(2013年12月-2014年1月)

鏡よ鏡よ鏡さん・・・

美容院が苦手であります。
できることなら避けたいくらいの場所なのだけど、時にヘアースタイルも変えたくなるし
伸びてきたらカットもしたい。
髪型ひとつで印象はガラリと変わるもの、私もまだまだおしゃれを楽しみたい。
だって、女ですもの。
だというのに、どうにもこうにもいかなくなった時の最終手段的な存在とは いかがなものなのか。
それこそ女としてどうなのさ。

若かりし頃、そんなことは決してなかった。
流行の髪型は一通りトライしてきたし、冒険だってしてきた。
朝ご飯を食べる時間が無くても前髪のホットカーラーだけは削ることができない時間だったOL時代が懐かしい。

美容院に行く前は いつにも増し念入りにメイクをする。
髪はすぐにシャンプーとなるのでそのまま帽子ですっぽりと覆い
一大決心をして いざ美容院へ。
大きな鏡の前に通され早くも愕然とする。
私ってこんな顔なの・・・?
家の鏡に映された私とは違ってみえる私がそこにいる。
顔色はすでにくすんでいるかのようだし、パッチリにさせたはずの目元も小さな小さな
つぶらなシジミ。
あぁ、これが現実・・・。
あの大きくて美しく磨かれた鏡は現実そのものを丸映ししてしまい
厳しい現実を私に突きつけてくるのだ。
服のショップにはうぬぼれ鏡なるものが存在するのに、どうして美容院にはそれが無いのさ。
直視できない、この場から立ち去りたい
私を早くシャンプー台へと連れ去って。

しばし安堵の時間が訪れる。
頭皮マッサージの心地よい力加減に、眠りを誘うお湯加減。
ここで大概眠りにおち、ふんがっ。という言葉にならないような声を出してしまい
恥ずかしさと共に目を覚ます。
どうか聞こえてませんように。
夢を見ながら少しばかりの現実逃避。
しかしその直後に更に厳しい現実が待ち受けているのも私は知っている。
頭にはタオルをぐるぐる巻き、顔は丸出しの滑稽な姿で席に案内され、選んでくれる雑誌を待つ。
どんな雑誌を持ってきてくれるかによって 相手に自分がどう見られてるかわかる気がするので
これまたどきどきする嫌な時間だったりもする。
隣のおばさまをチラリとすると女性セ〇ンなどの週刊誌がいくつも置かれている。
この手が来たらもう世間様にあなたはおばちゃんなんですよ、と思われたも同然なのではないかとさえ思ってしまう。
それだけは避けたい。 まだ避けたい。 せめてあと少しだけでも。
たとえそれを持ってきたとしても意地でも見ませんからね、
芸能ネタは気になるけれど関心の無いふりをしてやるんだから。
ファッション誌、どの年代にも無難なHanako、anan、その間にオレンジページといった組見合わせがやってきた。
少し安堵した後にどうでもいい意気込みよね、これ。
と、我ながらアホらしいもがきっぷりに可笑しくなる。

今日はどういった感じにします?
美容師さんとの対話という次なる難関がやってきた。
鏡越しに話しをするのは 直視したくない私としてはかなりきつい。
ある程度の雰囲気を伝えると 話しかけないでねオーラを出しまくり雑誌に没頭する。
気を使って話しかけてくれているのに本当に申し訳ないなと思いつつも
読み漁る、とにかく読み漁る。
ファッションに旅情報、オレンジページの節約レシピや美味しいもの
ananのセックス特集だって オトコノカラダ特集だって なんだって夢中で読み漁るから
どうか話しかけないで下さいませ。

私の馬鹿げたどうでもいい気迫も伝わるもので 会話はほとんどされること無く時間は過ぎていく。
その間にゆるふわヘアーになっていることや、ツヤツヤヘアーになっていることを思い描いてみたり
今よりはきっとよくなっていると 淡い期待してみたり。

「こんな感じになりました」と、仕上がったことをお知らせする声。
鏡を覗きこむと そこには思い描いていた髪型にはほど遠い姿が。
相談もせず、要望もたいして伝えず、話しかけないでねオーラをだしているのだから仕方のないことです。
わかっているのです、わかっているのです。
淡い期待は脆く崩れ
時間の経過で更に疲れた表情を映したそれをぼんやり見つめ
そして私は途方に暮れる。

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鏡よ、鏡よ、鏡さん・・・
魔法の鏡 ないかしら