はたらきかた、がつくるもの

第16期(2014年8月-10月)

Processed with VSCOcam with g3 preset人から聞いて「はぁ、なるほどなー」と思った話がある。人間は「土の人」と「風の人」に大きく分けることができるそうだ。土の人は、その土地にずっとくらし続けている人。土地に根ざして、土地を守って、仕事や生活を営んでいる人たち。反対に、風の人は、同じ土地にとどまらず、さまざま土地を動き回る人たち。土地から土地から移動するからこそ、土地にある情報やものを持ち運べる人でもある。

話はさらに続いた。土の人がある土地でずっと育んできたものを、風の人が他の土地まで運ぶことができると。それによって、生まれるものがある。これはミツバチが花から花へ蜜を運んで「受粉」させることに似ている。だから、土の人も風の人も、大事な役割がある。

ただ人間タイプがあるから、自分がどっちのタイプかわかるか良いよね、で話は締めくくられた。ぼくは、この話にかなり腹オチしたのを覚えている。幼少時からの3度以上もの転校、7年ほど住んだ東京での5度にわたる転居、1年以上も西日本各地を生活実験としてまわっていたこと、ぼくは根っからの風の人らしい。言い方によっては飽き性で、すぐ同じところにまんねりを感じてしまう……

自分の職業について、風と土の考え方をちょっと取りいれてみよう。まずライターについて。ライターとしての仕事は、まさに風の人だな、と感じる。あちこちを動き回ってて、情報を遠くに運ぶことができる。Web媒体に書かせてもらっているので、その感覚は特に感じる。

ぼくが関わるもうひとつの仕事、バーテンダーについて。本題はこっち。バーテンダーという仕事は、そのほとんどがお店を守ることにある。土の人の職業とも言える。週6日とか、場合によって週7日お店に立つ人もいる。家と店の行き来がほどんどの生活を占めることだってある。

そのため、よくもわるくも「狭い業界」だとぼくは思っている。だれかと遊んだり、他のお店に勉強に行ったり、旅行に行ったり、仕事に関わったりする時間が少ないからだ。お店と、バーテンダー協会などの縦のつながりが強い。だからか、へんな体育会系のような、少しふるくさい匂いがしてしまうのは、ぼくだけなのか。

そういう問題と、ライターの経験もあるからこそ思う。もっと風の人としてのバーテンダーはいてもいいじゃなかと。もっとお店とお店、バーテンダーとバーテンダーをつなげるように。さまざまに土地にあるカクテル素材はもちろん、技術などもバーテンダー同士で共有することもできる。あとはカクテル視点で、土地に関するライティングもできたらいいよね。すこし話に熱が入り過ぎてしまったけど、これがぼくのやろうと思っていること。

そのためには、結局は「はたらきかた」の壁が大きい。バー業界として、例えば週3-4勤務や、他に副業を認めたりすること。あるいは、オールバックのような身だしなみをゆるくするとか、もっと他の職業とコラボできる余地をつくったり、バーテンダーとしてはたらく間口を広げることじゃないか。バーテンダーのはたらきかたに多様性を、と。

はたらきかたに幅がでれば、職業人口が増えやすくなる。それによって、バーという空間、新しいカクテルについて考える人の分母が増えることになる。これは飲みて側からすれば、バーの楽しみ方にもつながっていくはずだよね。

はたらきかたが多様化できたらって話は、どの職業にも言えることだし、少しずつ「パラレルキャリア」の流れもできつつある。ただただ、バー業界はかなり遅れをとっているように感じる。

冒頭の話からピューッと飛躍しちゃったけど、人間のタイプだけじゃなくて、はたきかたにも土と風の概念は当てはまる。土の人も風の人も、おたがいに敬意を払ってないといけない。それによって、風の人はいろんなところへ、ものひとことを届けることができる。そうやって、発展とか進化って訪れるんだとぼくは思う。ある種、クリエイティブの可能性はここにある気もする。

ぼくはどの職業もクリエイティブになれると思っている。ただ、そこで閉じこもっていたり、とどまるだけで、新しい風をいれれなければ、だれかを喜ばせるクリエイティブは生まれにくいのかなぁと。はたきかたを整えること、それから、つくれるものも広がっていく。たしか、日本はものづくりの国だったじゃないか。風よ吹いておくれ。