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3F/長期滞在者&more

ウェイト・スケイル・ブルース。

長期滞在者

先月初め、娘の誕生日を彼女より少し年上の息子と
彼らの母親と一緒に祝うためにヘルシンキに一週間ほど滞在した。
到着して数日間はまだ5月初めとしては異例の寒さが続いていて、
天気は良いのだけどダッフルコートが手放せなかった。

彼らの住んでいるところから徒歩20分くらいのところに
とても設備の整った室内プールがあるので、
ヘルシンキに行くときは必ず何度か泳ぎに行くことにしている。
そこは10レーンもある50メートルプールの他、
飛び込み用、水中エクササイズ用、子供用、
ジャグジーなどリラックス用のプールがあり、
サウナ(すごく暑いのとぬるめのとがある)と蒸し風呂も完備されていて、
ついつい長居してしまう。

今回そのプールを訪れた時に、何を思ったか体重を測ってみる気になった。
おそらくもう10年以上体重計には載ってないのだけど、
たまたまプールサイドにあったので載ってみたのだった。
そしてその上に乗ってみると我が目を疑う驚愕の結果に
一瞬思考が真っ白になり、その5秒ほど前からの記憶を
なんとか消去できないものかと、何ごとかを画策しようとしている自分を見つけ、
そういう隠蔽工作はいかんぞ、
現実にあったことをなかったことにできるのは
日本の役人の特殊能力らしいが、お前にそんな能力はない、
くやしかったら今から東大法学部にでも入学してみるか?無理だろう?
ならば現実を直視するがよい、とその多少パニック気味の自分に言い聞かせた。
が、それにしても、である。
ダンサーとしてベストコンディションを誇っていた20年前に比べると15キロ増し。
15キロというと10キロの米袋より重いじゃないか。当たり前だが。
いや、増量分がもし10キロだとしてもだ。
粘土を買うと1パックがやはり10キロだ。米袋と一緒だ。当然だが。
けっこう重い。あれを担いだまま生活しているということか…

友人に見せたら、誰これ?と言われたw 大学在学当時はかなり痩せてたのは確かだ。

友人に見せたら、誰これ?と言われたw 大学在学当時はかなり痩せてたのは確かだ。

そんなことを考えていて思い出した事がある。
あれは確か1999年のはなしだったと思うのだけど、
日本でとあるダンスのイベントに参加し、ソロを踊った。
で、その打ち上げの時に何かの拍子に、
最近体重が増え始めて困っているという話しになった。
すると少し年長のダンサー、某Y崎K太氏が
「あぁ〜、それはね、心配ないですよ〜。
40過ぎたらもう太らなくなりますからねぇ〜」と宣った。
おそらくぼくはそんな根も歯もどこにあるのもかわからない、
しかもただでさえ普段から何を話してるのか掴めない人が
酔っ払って話してることを割りかしすんなり信じ込んでいたのだ。
なんたるお人好し、お花畑だろう。おそらくそのせいだろう、
ぼくは40代の10年間にほぼ何のダイエット的努力をしてこなかった。
40になったら自動的に痩せていくだろうと刷り込まれ、
思い込んでいたらしい。遅ればせながら「失われた10年」である。
なんてこった。
パンナコッタ。

そして50歳になって、今更のようにこうして少し慌てているわけだけど、
周囲にこのことを話すと、反応が二つに分かれることに気づく。
ほとんどの場合、ベルギーでの反応は、
「いや、別にデブってわけじゃないし、君の年齢なら普通じゃない?
ダンサー基準で考えるのは普通ではないからね。」となる。
一方で日本からの反応は「えー、それはちょっと太り過ぎかもね。
昔は細かったのにね。久しぶりに会ってむっちゃ大きくなった感じで
見違えちゃったし、少し痩せた方がいいんじゃない?」となる。
なので西に向かっては、
「そんなにのんびり構えてて体重がこのまま右肩上がりに
増え続けたらどうするんだ?無責任なことをいうのはやめ給え。」
と言い、東に向かっては
「太り過ぎとか昔は細かったとかいらん世話だし、
いらんストレスはさらなる体重増加を促すかもしれんから、
もしもポジティブな助言が思い浮かばないならば、
何も言わずに放っておいてくれ給え。」と言い、
双方から、「じゃあ最初から相談すんなよ」
という反応が返ってくることになる。振り出しに戻る感、無量である。
が、ここで「なんて不毛で非生産的なやりとりだろう。時間の無駄。」
などと思うべきではない。
確かに最終的には一見意味の無いやり取りに見えるが、
そして、そう見えて当然だと言えなくもないのだが、
そこは考え様である。

例えば、「この友人知人たちとのやり取りは、
面と向かってであれ、音声のみであれ、
お互いの映像を視ながらであれ、
音声や光が情報を載せてぼくと彼らの間を行き来したわけで、
しかも地球上の複数箇所でやりとりがなされているので、
これらの情報を三角測量的に使えばぼくの地理上の居場所がわかるだろう。
同時に、このやり取りを身体感というか身体観的見地から眺むれば、
その西洋的アプローチと東洋的志向が
概観されるようなことになっていると言えないこともない。
つまりこのやり取りの中に身を置くことによって、
自分の地理的立ち位置を知り得ると同時に、
西洋文化と東洋文化の差異という文脈における
自らの存在論的それをも確認できるような感じに
なっているのではないかと思われるのだ。」
というような感じの観点に立てば、
それほど無意味でなかったとも考えられるのだ。

と、まぁ今のこれは単なる思い付きとこじつけで、
本当はこんなことを真剣に考えているわけではないのだけど、
とりあえず行き当たりばったりでさらにまたもう一つ
一見無駄な思考をさらに上塗りしてみて思うのは、
「とりあえず5キロ減を目標にダイエットしてみようか」
ということだ。
そして、それを今年中に達成しようとするのか、
一年後なのか、5年を目処にするのか、ハタマタ10年なのか、
決めかねているところなのだけど、
それはなんだか住宅ローンを何年にするか?に似た
そこはかとないプレッシャーを含んでいるように感じられ、
なかなか興味深いプロセスになりそうなのだった。

現状、これであるw

現状、これであるw

ひだま こーし

ひだま こーし

岡山市出身。ブリュッセルに在住カレコレ24年。
ふと気がついたらやきもの屋になってたw

Reviewed by
カマウチヒデキ

年を食えばある程度太るのは自然だし、老いたならば健康のためにはそこそこの皮下脂肪も必要だ、とどこかで聞いた老人皮下脂肪必要論を鵜呑みにし、自然、自然、と高をくくっている間にいつの間にか医者に

「痩せなさい」

と言われるようになった。
皮下脂肪、必要って言ったじゃんかよぅ、と恨み言をいっても、必要だと言ったのはその医者ではない。

「人間、そんなに食べなくても生きていけます」

って、あらためて言われると、自分がものすごく餓鬼的に感じられる。
そんなに無駄なものを食っている意識はないのだが。

医者に厳命されて、3年前にダイエットをした。
やれば凝る方なので、2ヶ月で10キロくらい痩せた。
食べる量を減らせば体重は減る、という当たり前の体のメカニズムを思い知った。
3年かけて今は元の体重に戻ってしまったが、また医者が痩せろ令を発した。
痩せ方は知っている。知っているから簡単にできる。
と、思っていた。

しかし、本気になり方を忘れてしまった。
どうしたらもう一度、ダイエット魂に火がつくのか?
それがどうしても思い出せない。

ひだまさん、いっしょに頑張りましょう。

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