星空書簡1-月夜に

第29期(2016年10月-11月)

はじめまして。今日から、まだ見ぬ、名前も知らないあなたに向かって
手紙を書くことにしました。でも、私はすでにあなたを知っているような
こともあるでしょうし、あなたもはたと私とあったことがあるように思う
かもしれません。

今、月齢5の月が南西の空に輝いています。しかも今夜は月のすぐ下に
明るい土星がランデブーしているのですよ。あなたの空には見えているかしら。

月は毎日、星の中を東へと移動していきます。それはまるで、お月さまが、毎日
違う星の宿にとまっているように見えたのでしょう。古代中国では、それを星宿と呼んで、
月の通り道に28種類つくりました。それが二十八宿と呼ばれる、中国オリジナルの星座の
ようなものです。

そうやって毎日渡り歩いて、今月は13日になると、「十三夜」がやってきます。
左側が少し欠けた、風情のある月。あなたの住む街では、十三夜のお月見は
やるのかしら。私は今、山梨県に住んでいますが、山梨の人たちは、十三夜の
お月見を当たり前のようにやっています。それどころか、十五夜(いわゆる仲秋の
名月、旧暦8月15日に行うお月見)を祝ったら、十三夜もやらないと縁起が悪いという
話さえあるのです。どこのコンビニエンスストアにも、十三夜用のおだんごが置かれます。
今年はたまたま9月1日と10月1日が新月だったので、ちょうど15日に十五夜、そして
13日に十三夜となりました。旧暦を生きたころの人たちと心が重なりあうようで、
少し嬉しい気分です。

月の光は、人工の光には到底なすことのできない、心を射抜くような強くて柔らかい
光をもたらしてくれますね。その光に人々が発見し、集積してきた「知」も数知れず、
またそこに馳せてきた切ない思いも数知れず・・
そんなことをあれこれ思いながら、毎日明るさを増す月をしばらく眺めませんか。

来週、ちょうど十三夜の日に、次のお手紙を書こうと思っています。
あなたの場所から、その光が見えますように、と願っています。
秋の気配が押し寄せています。どうぞご自愛を。
手紙