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2F/当番ノート

これまで・今・これから

当番ノート 第27期

今回は、最後なのでアパートメントで記事を書くきっかけをくれた大見謝さん(みじゃさん)と対談形式で、これまでと今、これからのことを話していこうと思います。
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大見謝:まずは自己紹介からやってもらえるといいのかなと思います。

石橋:今は小学校の先生をやっています。
それが平日の僕。土日の僕はファシグラと呼ばれるものをメインに活動しています。
ファシグラってなんのなかというと、ファシリテーショングラフィックと呼ばれるもので、人と人とがコミュニケーションをとるときとか、話し合いをするときに言葉だけではなかなか通じないものを見える形にして、それをベースに、一緒にコミュニケーションをとっていこうよとか、新しいものを生み出していこうよとして使う一つの手法です。具体的には、模造紙とかホワイトボードとかに絵とか図を使ってリアルタイムに描いたりするのがファシリテーショングラフィックと呼ばれるものです。

大見謝:ありがとうございます。では、初めて聞く方もいらっしゃるので、ファシグラっていうものがどういうもので、ファシリテーションってなんだっていうものを聞きたいなと思います。どんな人に役に立つのかなどを聞ければいいなと思っています。後は、はるくんのこれまでは?出身は?今、横浜にいるけど、僕がはるくんと出会ったのは京都というので、その辺りのことも聞ければなと思います。

石橋:分かりました。僕は、長崎生まれの佐賀育ちで、大学進学を機に京都に来ました。大学入った時は、こういう活動をするとは一切思ってなくて。むしろキラキラ活動している大学生とは、少し距離を置いてました笑
大学入ったら、入ったで大学が面白くなくてゴールデンウィーク開ける前から大学を休み始めました笑。そこから1年は大学にほとんど行かずに、バイトばっかりやってました。

大見謝:ちなみにバイトはどんなものをやってたの?

石橋:お好み焼きやさんでバイト、これは1年ももたなかったな。後は旅館やホテルで接客。そればっかでもなと思っていて、時間をお金で買ってる大学だからこそ、もっといろんなことしたいなと考えていました。
そこで、長期休暇を利用して、リゾートバイトに行くことにしました。そこで、生き方が面白い人にたくさん出会って自分の生き方を見直すことになったんです。
僕の周りの大人は、公務員が多くて、働き方としてはレールに乗ってその中で、生きていくというイメージしか頭になかった。でもリゾバとか行くと衝撃的で、プロのボーダー目指している人とか、40代50代で面白いおっちゃんとか、逆に廃人みたいな人も。そういう人たちに出会えたことは衝撃で、そこからスイッチが入りました。もうちょっと自由にやってみようかなと。なのでそのタイミングで、ずっと行きたかったバックパックに行こうと思いました。2回生の夏に、お金を貯めて初海外、初バックパックでやりました。その中でもまたいろいろと広がりったんですよね。いろんな失敗もしたし、いろんな人に助けてもらったし。例えば、騙されてお金全部なくなるとかね笑。1番の学びは、たくさんの人に助けられ、いろんな人とつながってこそ生きてるんだという周りの人への感謝が生まれてきたんです。これまでは1人で割とぱっぱとこなすタイプで、困らなかった。この旅で、人の中で生きていて、生かされているんだなと感じたんです。助けられた分、誰かを助けたい。そんな気持ちが生まれてきたんですが、その時は、誰かに対して貢献できるスキルとか、なにも持ち合わせてなかったんですよね。

大見謝:ありがとう。バイトについて聞いたのは、はるくんの遍歴を聞きたかったからなんだ。大学時代のこととか全然知らなかったから。そこからは、どうなったの?

石橋:その夏を起点に人生のいろんなもんがスタートしたって感じです。この時から、疎遠になってたサークルにも顔を出すようになり、いろんな人がいて面白いということに気づきました。ただ、月1で集まる会議が面白くなかった。この話は、アパートメントの記事で書いたので割愛しますね。

大見謝:簡単に言うと、はるくんは、組織化されたサークルの代表をしていて、ちょっと経営ちっくな、そういうところの会議の中で言いたいことが言えてない、発言しづらい、本音が言えてない現状にアプローチをしたけど、一回はうまくいったかに見えたのに、打ち上げ花火みたいで終わってしまったていう話だよね。その体験から、どうしたらうまくいったんだろうという問いが生まれてきたんだよね。

石橋:そうですね。だから、僕が最初に始めたファシリテーションは、会議ファシリテーションですよね。そこから、入っていくんですけど、でもそうじゃないんだな。僕が心から求めているところではないんだな。って後々気づいていくんです。

大見謝:では、この辺りで少し休憩を入れていこうと思います。僕らは、ゆるゆると日本酒を飲みながらやっています。

石橋:このお酒は、伊根満開というお酒で、本当に美味しいんですよね。ちなみにこのお酒も、ファシグラをする中で出会った人に教えて貰ったお酒です。

(休憩)

大見謝:では、続きをやっていこうか。

石橋:はい。結局、僕のアプローチは打ち上げ花火で終わってしまい、悶々と過ごしていたんですよね。なんで、続かなかったんだろう?うまくいかなかったんだろうな?と悶々と。
で、たまたま友達に誘われて入ったゼミで、先生がファシリテーションという言葉を使ったんですよ。ゼミの先生は、教師がファシリテーターになるという文脈で話したんですよね。人生で初めて聴く言葉で、めっちゃ知りたくなったんですよ。で、先生が説明を始めるんですけど、その説明が、ファシリテーションとはみんなが対等に話し合って対話を進めていく方法であり、考え方であり、あり方なんだっていうものでした。

大見謝:ファシリテート自体は、容易にするとか、楽にするとか、促進するとかっていうのが元々の直訳の意味だよね?

石橋:あ、そうです。そこから、そこから。先生が言ったのは最初そこです。ファシリテーションっていうのは促進するっていう意味があって、一人一人の考えとか、関係性とかを促進させていくんだ。一人一人の持ってる力を引き出しながら前に進めていくんだって。

大見謝:すごく教育的だよね。エデュケーションって引き出すって意味だもんね。

石橋:そうそう。それを聞いた時に、これってあの会議のことじゃないの?ってはっとして。本当びっくりして、体が震えた感覚があったんですよ。少数のゼミで、普段僕つイッターとかしないのに、授業中に興奮して3ツイートぐらいしたんですよ。そのくらい興奮したんですよね。あんまり伝わらないかもしれないんですけど笑
出会いたいものに出会った感覚。これまで、僕が言葉にできなかったものを一瞬で濃縮して形にしてくれたって感じです。

大見謝:それは、ファシリテーションがもう体系化されてたってことだよね。ある意味同じような悩みを持った人たちがいて、その先人たちが体系化してたって嬉しさはあるかもしれないね。

石橋:僕が知りたかったことを実践している人がいっぱいいて、その人たちから学べば知りたいことを知れる!って思ったんですよね。本当に偶発的な出会いで、大学の授業休みっぱなしだった僕が、そのゼミだけは全部参加したんですよね。そして、もう一段階先の出会いに、ファシリテーショングラフィックがあるわけですよ。その時は、衝撃はほとんどなかったです。こんな感じなんだなと。ゼミの中で、アウトプットをしなければならなかったので、自分たちでワークショップをやると。僕の番が回ってきて、僕はファシリテーションを学びたい、ずっと続けたいと思っているので、それっぽいことをしたかったんですよ。何やろう?ファシリテーショングラフィック?ファシリテーションが見える形になるんだ。ちょっとやってみるか。でやってみたわけですよ。そうすると、ゼミの中での1発目のファシグラは何となくうまくいったわけですよ。そうすると調子乗りますよね笑

大見謝:一番最初に、調子乗るって大事だよね。その一歩がうまくいかなかったら、前に進めないからね。

石橋:それで、調子乗った時に、ゼミの先生が「学会に行くから、来たい人はおいでよ」って言ってくれたんです。
で、僕は何となく行ってみたかったので行ってみたんですよ。行った先で「はる、ファシグラやってみる?今日、学会の中で今までやって来られなかったことをやってみようと思っているんだ。学会終わった後の質疑応答の時間をワークショップ形式でやってみようと思ってるからそれをファシグラしてくんない?」みたいな感じだったんです。

大見謝:普段だったら聞いて終わりだった学会を、聞いたものを参加者同士でアウトプットする時間を作るって意味のワークショップだよね?

石橋:そうそう。あの時はプロアクションカフェだったな。
※プロアクションカフェとは?
https://www.ourfutures.net/session_methods/proactioncafe

まあ、そういうことやるわけですけど、その二回目のファシグラが僕の中では大失敗だったんですよね。全然描けなかったんですよ。どう描いていいかわかんない。その引き出しが全くなかったんですよね。ゼロベースでわかんないって状態でした。必死でやったけど、めちゃくちゃなものが出来上がるわけです。周りの人から見たら良かったのかもしれないんですが、僕から見たら大失敗なわけです。周りの人はそれを使って発表してくれるし、褒めてもくれるし。でもそれがとても悔しくて、嫌だったんですよね。全然できてないのに、そんなこと言われてもって。

大見謝:話の腰を折るようだけど、みうらじゅんとクドカンの本では、2人の初体験の話が載ってて、やり方がわかんないからチューばっかしてたと。結局チューばっかして終わったと。何となく彼女もチューについては褒めてくれると。でも、離れていっちゃうと。

石橋:そうそう、似てるかもしんないですね笑。僕は、そっから悔しくて、ファシグラやってみようと思ってスイッチが入ったんですよね。

大見謝:そうなんだ。そこから、僕がはるくんと初めて出会ったのは、loftworkと呼ばれるクリエイティブ系の会社が主催しているローカルメディアのイベントで、たまたま学生の時のはるくんが絵を描いててって感じですかね。その時は、流しのファシグラやってたんだよね。その時は、いろんなところに売り込みに行ってたって感じ?

石橋:そうか、あの時ですね。写真を撮ってくださったことを覚えてます。あの時は、売り込みに行ってたっていうか、とりあえず自分のスキルを高めたくて、とにかくファシリテーターとかいろんな人がいる場で書いてたんですよね。

大見謝:その場っていうのは、ちょっとした会議の場だったり、僕が行ったようなイベントの場だったりっていうこと?それを一年間に何回もやってたていうこと?

石橋:そうそう、あの時は、自分がイベントを主催したり場を持つということをやっていなかったし、そこをやろうとは別に思っていなかったので、とにかくかく場がなかったんですよね。だから、いろんな場に行くしかないと思ってた。あの時は、ファシグラし始めて1年経つか経たないかの時ですよ。1年間の修行時代の中で出会ってたんですね。

大見謝:修行時代は、1年間どのくらい書いてたの?

石橋:最初の1年は、そんなに多くないんですよね。あの時って、そもそもファシリテーションって言葉自体があまり日本に広まってない状態。やっと世間の感度の高い人たちが認知し始めてた時期ぐらいです。だから、僕はよくネットで「京都、ファシリテーター」とか調べて、ヒットしたところに直接無断で押しかけてやらしてくださいってお願いをしてたんですよ。そもそも、ファシリテーションって広がってないし、ファシリテーターって名乗っている人たちが少なかったんですよね。だから、そんな多かったわけじゃなくて、月に2、3本ぐらい。年間30本ぐらいかなと。

大見謝:そう考えると、芸人とかパフォーマーみたいだよね。場に出て、人に披露するって、ある意味下積み時代があったんだね。それに僕の場合は、書くというライターの仕事をさせてもらう中で、それなりに量を書かないと上手くならないよねっていうのがあるので。舞台を自分で探しに行ったっていうのは、すごくエネルギーが生まれてきていたんだろうなと。そこのエネルギーってなんだったんだろうって気になるんだよね。過去の失敗などが何に向かってエネルギーになったのかな?

石橋:僕の場合は、悔しいから始めたんだけど、ファシグラって僕の中では1つは、みんなの前で大きなノートをとるって感覚なんですよね。ノートをとることは嫌いではなくて、教科書にもラクガキするタイプで、ファシグラはどっちもしていいんですよ。学校では、普通怒られるんですよ。それが真逆になるから、かなり肯定されて、承認の度合いが高まり、自己肯定感が高まっていくわけですよ。

大見謝:それが自己表現の一部になるって感じ?

石橋:そうそう。だから、かいてて楽しくなるんですよ。悔しかったのが楽しくなる。しかも、かく中でスキルも上がってくる。人前でやるからこっそり練習するしかないわけですよ。

大見謝:1人で練習するの?

石橋:そうそう。だから、大学の講義をファシグラ風にノート取ってみたり、家で動画やテレビを見るときにそれを模造紙にまとめるとか。イラストの練習をひたすらするとか。いろいろやっていくと、アウトプットの質も高まっていく。成長も感じられるし、自己肯定感も高まる。ファシグラって目に見えて他者に貢献できる。旅の中では、全然貢献できなかったんですよ。いろんな人に助けられてばっかだった。目に見えて貢献できるっていうのは、自分の中ではいいなと思うところで、そこでの嬉しさもある。
もう一つは、いろんな人と出会う事。出会った人たちが次の場を紹介してくれたりとか、出会いの連鎖の中に入っていけたのはすごく面白かったんですよね。ファシグラをやっていなかったら普段出会えなかった人たちに出会えた事は嬉しかったですね。

大見謝:若干、わらしべ長者みたいな感覚だよね。縁で広がっていくみたいな。ファシグラっていろんなん場に行く中で、いろんなテーマがあると思うんだよね。そのテーマってはるくんの関心の外にあるものもいっぱいあると思うんだけどそれをサマリーでまとめるって事は、はるくん自身の勉強になると思うんだよね。それによって、いろんなことに関する分野の人とつながったり、そこに地検が増えることでより繋げれる領域がある意味増えていくっていうのが日常にあるっていうのはいいよね。

石橋:自分のアンテナ張っていないと広がらない知識とかあるけど、ファシグラって向こうからテーマが来るからアンテナ張ってないテーマでも意外と面白いなって。
あとは、一番思ったのは、人を大事にできるんですよね。

大見謝:というのは?

石橋:うーん。普段の会話て結構適当に聞いてるんですよね。適当に話をしたりとか。ファシグラでそんなことしてると全く書けないわけですよ笑その人が何考えているとか、そういうことを僕自身が真摯に受け止めないとアウトプットはできないんですよ。そうすると、一番大変だったのは、だいたいイベントって2時間ぐらいじゃないですか。最初は聞きっぱなしっていうのは、めっちゃしんどいんですよ。体の倦怠感がひどくてファシグラ終わったら喋りたくないし、スイッチオフになるという感じだったんですけど、それがファシグラする中で真剣に聞くという姿勢を続けていくことって、その人のことを大事にしようとか、全身で聞こうとかするわけです。それに気づけたっていうことが一番嬉しかった。今も2時間3時間やると疲れはするんですけど、ちゃんと聞けているかどうかわからないが自分の中では聞こうとか、聞きたいと思っている。人として柔らかくなれたかな。

大見謝:それって五感の使い方だよね。聞くではなく、意識的に聴くとか、味がするではなく、味わうとかちょっと意識が入るだけで違うよね。

石橋:聴くっていう部分をファシリテーションでいうには、listenとかhearとかquestとかももちろん大事なんですけど、そこだけではなくてinquireっていう部分を大事にしたいと思うんです。お互い聴き合いながら、探求していく姿勢がとても大事なスタンスだなと思ってます。そこをファシグラってできるなって思っているんですよね。聴くだけじゃなくて、お互いに思いもよらない問いを投げるっていうのも大事なんですよね。

大見謝:そこらへん、はるくんがアパートメントという記事の中で書いているけど、ファシリテーショングラフィックをする上で行っていることが事前の準備、きく、あむ、かくという4つだよね。今は、きくと言う部分を拡張して話してもらいました。次は、残りの部分を少し話してほしいなともいます。

石橋:ファシリテーションって関係性をほぐすっていうのも技術の1つです。目的としては心地よい空間や、関係性を作るっていうのも1つあるのかなと。なんで、関係性を作るのかというと、関係性をつくると、それぞれの考え方に影響を及ぼすようになって、思考が深まったり広がったりしていくわけです。そうすると、行動に落しこまれていくので、行動の質も変わり結果も変わってくるというのが、一つの考え方です。成功循環モデルと呼ばれています。
※成功循環モデル
http://164s.net/2279.html

石橋:関係が悪い中で考えると、なんであいつはちゃんとできないんだよとか、これやんないんだよとかと言う考えになって、だから俺がやるしかないなという思考の質になっていくんですけど、これが関係の質が変容すると、じゃあ一緒になんかやろうよとか、こういう風にもできるんじゃないとか思考の質も変化し、一緒にワクワクしながら安心して取り組めるよになるんですよね。そうすると、行動や結果も変わっていくわけです。

大見謝:何を言うかというより、誰が言うかっていうのが大事だということもそういう観点から説明できるね。後は愛情や尊敬があるっていうのが大事で、しかもそれをその場で赤の他人同士やぎくしゃくした関係の中でやるっていうのがファシリテーションのエッセンスっていうことかな?

石橋:ファシリテーションってステークホルダーを集めて、その人たちと一緒に対話を進めていくとよくう言われますがそれも一つの側面で、もっと掘っていったら、自分自身と向き合わないとファシリテーションってできないわけですよ。自分との対話が一番重要になってきます。

大見謝:それは参加する人がっていうこと?

石橋:参加する人もファシリテーターもですね。特にファシリテーターは。関係性を作ろうとするっていうことは、自分の中からどのように関係性を作ろかとか色々な考えやその人自身から滲み出るものがあるわけでしょう。その出てくるプロセスの中に自分の考えや、なんでそういうことをやりたいのかっていうのをわかってやらないと意味がないわけですよね。めっちゃだから、ファシリテーターって進行するから場におけるランクが高いわけですよ。権力を持っているっていう意味です。だから、それを自分で自覚しないと、言ったりやったりするとことでいろんな影響を及ぼすことになるんですよ。ファシリテーターの存在ってすごく影響力があるので、それが自分のどこから来てるのかなとか、自分のあり方や言葉の使い方などを何度も捉え直す必要があるわけです。

大見謝:それは、ある意味ファシリテーションをやっている自分を客観的に見ないといけないっていうことにもつながるね。僕はファシリテーションに対して人と人の間に入るっていうイメージを持っているんだよ。仲人的な。これってファシリテーションの1つの部分?

石橋:そうですね。一つの見方として聞いてほしんですけど、ファシリテーションって生成的なファシリテーションと調整的なファシリテーションがあるんです。みじゃさんの話でいくと、仲人的なファシリテーションは調整的な部類に入ります。例えば、会議の文脈で話をすると、めっちゃ1人の人が話してる。それをつまんなそうにきている人がいる。めっちゃ話している人の話をストップとか沈静化させて、消化させて、別の人に降るとか。1人1人が喋る機会を作り出すのが、調整的なファシリテーションですね。別の軸がもう一つあって、それが生成的なファシリテーションです。こちらは、待つわけです。一人一人のエネルギーや考え方とか価値観みたいなものが湧き上がってくるまで待つわけです。はたから見れば、ファシリテーターって何やってるの状態なんですけど、でもそれは、ファシリテーターは場に存在していて、かつ観察しているんですよ。観察していることも他の人には話kっていないかもしれません。どこで、介入した方がいいのか(極力介入はしない)、どんな探究する問いを発するかなどを考えているわけですよ。

大見謝:ある意味沈黙みたいなのも肯定するっていうことだよね。嵐の前のしづけさも作るってことだよね。バランスをとるためのものと生むためのもの。

石橋:最初の僕は、調整的な会議のファシリテーションをやりたいと思って始めたわけですけど、本当にここをやりたいのかなって。サークルの話とは少し違う文脈で、僕は人とコミュニケーションをとることが苦手だったこともあって、常に自分自身の中でひたすら考えていた時期があって、それを考えていた時に、人って一人一人力や愛を持っているわけですよ。可能性みたいなところ。言葉にすると難しいですけど、そういう感じのものを持っているわけです。

大見謝:ざっくり言うとクリエイティブな力

石橋:それをどう出すか。それは、ファシリテーターが助けるより周りの人たちが助けた方が、それぞれのオーナーシップを前に出していけるわけですよ。自分の人生は自分のものなので、自分で選択して前に進んでいくとかできる。そのきっかけやサポートをするのがファシリテーターの役割かなと。参加している人たちが人との関わりの中で気づくことによって、変わっていくというのをサポートしたいな思うようになったんです。だから、どちらかというと生成的なファシリテーションを身に付けたいと思うようになったんです。

大見謝:そうなってくると、その人の個性や良さを生かして会議やアイディア出しもできるってことかな?
喧嘩したカップルがって礼をさっき出したけど、同じ条件の中では生成的って場合だったらどうなるの?

石橋:たとえばですけど、調整的だったら「まあまあ」と火消しに入るじゃないですか、でも生成的だったら「いいねいいね」と思うんじゃないんですか。いってもいいし言わなくてもいいし、その場で静観しつつ介入が必要ならばそのタイミングややり方を考えているって感じですかね。イメージとしては、生成的なものをやるんだったら、彼氏が彼女はなんで怒っているんだろうって考えるようになるプロセスをサポートすることに近いと思います。

大見謝:なんで(Why)の部分を掘り出すのが生成的なもの?

石橋:最終的には、Whyの部分を自分で掘り出すことができるようにサポートする。っていう方が近いですかね。

大見謝:では、話を見えることにすることでどんな影響を及ぼすの?ファシリテーショングラフィックとグラフィックレコーディングの違いは?

石橋グラフィックレコーディングって初めて出てきた言葉なので、説明しますね。グラフィックレコーディングっていうのは、ファシリテーターが別にいて、その横で主に振り返りを目的として書くことに近いですね。振り返りのための記録。ファシリテーショングラフィックは、僕の中では、1人の人がファシリテーターも兼ねてグラフィックもやるってイメージです。

大見謝:連続性があるよね。どういう場を作るかって、企画の部分から関わるからね。ライティングでいうと、企画の部分から関わって、書いて、編集もしてて感じだよね。

石橋:そんな感じですね。僕の場合、グラフィイクレコーディングから入ったので、グラフィックをやってると徐々に徐々にファシリテーションもやりたくなるんですよね。それは、原付乗ってたら徐々に大きなバイクに乗りたくなる感じと似てます笑
でも、バイクに乗ろうと思ったら、原付とは違うスキルを身につけなければならないんですよ。免許をとりなおさなければならないですからね。僕はファシリテーションがベースにあったけど、入口がグラフィックだったっていうことですね。海外の場合は、ファシリテーショングラフィックではなく、グラフィックファシリテーションなんですよね。もうだから、グラフィックをファシリテーションとして使っていこうという趣旨です。だから、僕はファシグラをやりたいんです。もっと言ったら、一人一人がファシリテーターになってほしい。もちろん、すべての人がファシリテーションを身につける必要はないんですけど、その考え方を知っておくといいとは思うんですよ。そうすると、相手のことを知ろうとかなんでこういうことを知ろうとか一つ一つが起きてるプロセスやコンテンツを丁寧に見るようになるんじゃないのかなと思うんですよ。そしたら、相手のことをもっとわかろうとして、さっきの話ですけど、関係性が良くなって、好循環が進んでいくんじゃないのかなって。

大見謝:人って、他人が何を言ったかってとこに注目しがちだけど、その言葉が出てきたプロセス(背景)があるんだよね。いじめっ子が何でいじめっ子になったのか、例えばその子の家庭環境が悪かったとか。そうやって相手のことを考える必要があるんだよね。
後は、ファシリテーショングラフィックをやっていく中で、みんながやれるようになるために進めていることってあるの?

石橋:二つぐらいあって。一つは、グラフィックレコーディングをする中で、これをどうやったらファシリテーションに繋げられるのかなって。例えば、参加者の人に付箋を渡しておいて、僕が書いている横でどんどん思ったことや感じた事学んだ事などを張り出してもらう事をしてました。そうすると双方向のコミュニケーションも生まれて、ただ書いただけで終わらないものになったかなと。もう一つは、書いたものを切って再構成するっていうこともやったかな。そうすると、参加者の人が事象の関係性を考えたりとか。

大見謝:はるくん自体は、プレイヤーとして(ファシリテーターやグラフィッカーとして)動いていたものから、今はそういう人たちを増やすために動いている部分もあるんだよね。

石橋:そうですね。今は講座もやってて。僕の究極の目標は、それこそ参加者一人一人がファシリテーターになるってことですよね。それは民主主義にもつながるかなって思うんですよ。一人一人が考えて、一人一人が相手のことを思いつつ自分のことも大切にしながら進めていくってことを大事にしたいんです。正直もう、1人でかいて進めることをしたくないんですよ。

大見謝:ファシリテーターは促進すると同時に、自分が離れるってことも考えなければならないんだよね。この離れるっていうことは、地域や会社の組織に関わってる場合、大きな意味で言って離れなければならない時が来るんだよね。そういう意味では、どの人が持っている必要がある感覚だよね。もっとざっくり言うと、空気を読むっていうことをできる人が増えるのも大切だよね。実は空気を読むてない人の方が多いんじゃないかな。

石橋:ファシリテーションも日常に生かさなければ意味はないのかなと思います。ただそれが難しんですよね。コミュニケーションの一つの手段なのでどこでも使えるんですけど、それが一番難しい。そういった意味では、別に落とし込まなくてもいいのかなって思います。ファシリテーションって言葉に限定しちゃうと、コミュニケーションの中で大事にしていることがポロポロと零れ落ちたりする気もしていて。無理矢理ファシリテーションに繋げる必要はない。ファシリテーションって言葉を知らなくても気持ちのいいコミュニケーションをとったり、相手のことを考えて一緒に乗り越えようとしている人もいるわけじゃないですか。

大見謝:テレビ見てて思うのは、例えばクリームシチューの上田晋也とかは、MC力が高い。そういう人たちって、ファシリテーターとしてのセンスって高いんだろうなって思うんだよね。この人喋ってないから、この人に振ろうとか。こういう人は、こんな話持ってるから振ろうとか。そういう風に番組を見てるんだけど、それって必ず日常にも生きるわけで、例えば恋人同士だったり、家族の関係性をよくするとかもそうだしね。
あと、僕が気になることがあるんだよね。僕は京都でファシリテーションって言葉に出会ったんだけど、京都の場作りってファシリテーションって言葉が必ず付いてくるな、と。それで、沖縄に戻ってセミナーとかに参加すると講義形式なんだよね。めちゃくちゃゲストに向かって並んで、喋ってそれを参加者はインプットして終わり。どっちかっていうと、ゲストのフォロワーの人が来るから、聞いて満足で終わってるんだよね。聞いて満足だから、さっきの話でいくと生成には繋がらないんだよね。それは昔から。
それが京都では、参加者もゲストも横並びなんだよね。一緒に造り出そうって感じ。それを踏まえて東京に戻ると、結構沖縄に近いと感じてるんだよね。だから、ファシリテーションってところでいうと、西はhome’s vi、東はエンパブリックっていう会社が場作りを牽引している気がするんだ。それで、どっちかっていうとエンパブの方がビジネスライクな感じがする。そもそも西と東で性質が違うのかなって感じる。はるくん的にはどう感じる?

石橋:みじゃさんと前そういう話をした時は、京都を中心とした西の方の場作りって一人一人を見捨てない、ボトムアップな気がするって話をしたんですけど・・・
4月からこっちきて、場を体感すると、対話っていう部分では共通して大事にしている部分がいっぱいあるなって感じています。

大見謝:僕の肌感覚でいうと、ここ1年ぐらいで京都のような対話が大事だよねって気付いた人が多くなった気がするんだよね。あと、多分はるくんが呼ばれるってことはそういうことを意識している人が読んでるって可能性もあるよね。

石橋:確かに僕は、営業とかをかけているわけではなく、知り合いの人との出会いや繋がりの中でファシグラをさせていただいてるので、傾向としてはそういう人たちからの依頼が多いですよね。あんまり、全く知らない人からの依頼っていうのはないですからね。だから、こないかいた場もすっごく温かかったんですよね。京都の場に似てるなって。それは、京都でも大事にされてる、意見を出し合おうっていうより、相手の話を聴き合おう、相手の話に耳をすまそうとか相手の考えや価値観を自分の体の中で響かせるような聴き方をしてみようとかいう感覚を大事にしてるからなんだと思うんです。それをやっぱり場が始まる前にきちんと伝えるし。
あとは、みんなで最初にグランドルールと呼ばれるその場での約束事とか決めることもあるんですよね。

大見謝:約束事っていうのは、参加した人がその場でどう過ごしたらいいんだっていう安心感を与えるようなきっかけ作りだよね。人見知りな僕は、この質問していいのかなって、自分で自分を縮こめちゃって過ごしている時もあるんだよね。それが、みんなにいいよって言われれば過ごしやすくなるよね。それがグランドルールなんだよね。

石橋:なんで、安心安全な場を作らなければならないかっていうと、一人一人が持っているものを自分から出していけるよ抜いするためなんですよ。オーナーシップを発揮できるように安心安全が大事にされるんですよね。一回場において、声に出すと二回、三回と声を発しやすくなるじゃないですか。最初に喋るのは、勇気がいるけど、喋っちゃえば楽ですよね。
さっきの話ですけど、典型的に西と東ってわけたら、やっぱり東の方はビジネスライクの方が強いですよね。それは、多分文化や習慣からの影響も強いのかなって思います。東京って日本の首都であり、経済の中心と言われているわけじゃないですか。その文化の中で生きている人たちって、知らず知らずのうちにその文化から影響を受けるから場作りにもその影響をは出ると思いますよ。京都は、対東京や対経済っていう軸よりも対文化っていう軸の方が強くなってきてますよね。だから、文化庁とかも京都に移動になったりしてるわけです。元々、京都市の戦略の大元に、鷲田清一さんの哲学とかが入っているわけですよ。

大見謝:文化と経済を捉えるときに、場を作るっていう面から見たら違いが出るとも思うんだよね。東はビジネスっていう面から見てどれだけ数値化できるかっていうところに価値を置いてるけど、西の文化っていう側面から見たら、あえて数値化しないっていうことが価値なんだよね。じゃあ数値化しない価値ってなんなのって話だけど、出会いから生まれるものって多いわけだよね。場で出会った人たちが対話を通して、一緒にプロジェクトを起こしたりとか、カップルになって結婚したとか。そういう化学反応的な部分はある意味価値だよね。数値化できないけど、これが大事だよねっていう部分が文化につながるっていう部分は若干思ったところかな。そこは、難しいよね。東京って場を持つことがそもそも難しいよね。それが京都に行くと場を持ってる人ってかなりの数がいるんだよね。場を持ってるからこその悩みを共有しやすいことも京都の特徴なんじゃないかな。でも、東京の場合はそれがなかなかできないし、コミュニティが分断されているから余計に、他の領域と重ならない。だから、ビジネスよりにこの場はこのくらいの料金だから元を取るためにこの価格に設定しようとか、2時間のプログラムの中に詰め込んだりするんだよね。そうすると、参加者同士の声とかいらないよねとかなっちゃうことが多いのかなって。そういうしがらみの中で場を作ろうとしている。だから、はるくんのファシグラに合うような場を作ろうという人は場をそのまま提供できる安心感のある人たちが多いんじゃないかな。

石橋:今、場って言っているのは、ハードな箱物の部分の方ですよね?

大見謝:そうだね。ていうのも、僕も場作りに関わらせてもらって1年ちょっとなんだけどその中で感じることかな。
そしてら、別の質問でこういう人はファシリテーターに向いてるとか、はるくんの中でそういう条件はあったりするの?

石橋:わかんないですけど、僕が目指しているファシリテーターだったりすごいなって思えるファシリテーターの人って、無条件に応援してくれる人かな。条件付きの関わりではなくて、一回関わったらその関係性をすごく大事にしてくれる人かな。そういう人がファシリテーターやってくれたらいいなって思います。

応援できる人って僕の中では、やっぱり面白がれる人、そういう才能がある人かな。

いしばしともはる

いしばしともはる

NPO法人EN Lab.の理事として全国各地の企業や団体で、まちづくり、組織開発、教育分野を中心にグラフィッカー、ファシリテーターとして活動中。年間100ヶ所以上でグラフィックファシリテーションを用いた場づくりを行っている。また、ファシリテーションの教育現場での活用と、公務員の新しいキャリア形成に向けて2016年4月からは小学校教師として教壇に立っている。

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