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2F/当番ノート

僕とファシグラ

当番ノート 第27期

今年の4月から先生として子どもたちと関わっている。30人の子どもたちとわちゃわちゃ。30人いれば個性もそれぞれだし、その日の状態もそれぞれ。
だから、子ども同士のちっちゃないざこざはときどき起こる。

いざこざが起こった時は当事者をよんで、話を聴くのだが、子どもたちの意見は噛み合わないことの方が多い。

そんな時に、僕が用いるのがファシリテーショングラフィック(以下:ファシグラ)と呼ばれるものだ。

会議の現場で用いられることの多い手法で、話し合いの要点を明らかにするために、その場で話し合いを模造紙などに書いていく手法である。

子どもたちの話で意見が食い違い始めたら、僕は大きめのノートに黙々と要点を絵や図を用いて整理しながら書き、「これでいい?」と確認をする。

すると、子どもたちは、書いたものを指差しながらしゃべりだす。
「この時は、◯◯さんがこう言った。」
「ここの順番が違う。」
「そうそう、そう言うこと!」

1つのノートを複数人で見て「指差し」と「こそあど言葉」が生まれてくれば、多くの問題は解決される。

ただし、この時1番大事にしたいのは、
子どもたちからその時に起こったことを聞くだけでなく、

その時何を考えていたのか

その時自分の感情はどのように揺れ動いていたのか

そして、感情の裏に付着している本当の想いはなんなのか

ここを子どもたちと共に探求することだ。

子どもを詰問するのではなく、教員も「共に探求する」仲間としてその時間を大切にする。僕が、ファシリテーションで大事にしたい部分の1つだ。

今から、5年前、
ファシリテーションを学ぶ中でファシグラに出会った。

最初に見たファシグラの定義は「議論の空中戦を避けるために模造紙にリアルタイムに可視化していくこと」こんな感じだったと思う。
初めて知った時の印象は、これってノートを取ることと同じじゃないのかな?そのくらいの認識だった。

だから、ファシグラについてはあまり気にしていなかったのだが、少し、いや大きく事態は変わってくる。

当時(3回生)のゼミは、ちょっと変わったゼミで、インプットをすることよりも自分たちでワークショップを設計してアウトプットすることの多い、そんなゼミだった。

ファシリテーションという言葉に出会ってから闇雲に本を読んで、変に知識を得ていた僕は「一度どこかでファシリテーションを実践したい。」そんなことばかり考えていた。だから、ゼミ内のワークショップの実践はまたとないチャンスだった。

しかし、やると言っても、ファシリテーションをやるって具体的にはどういうことなんだ?で止まっているレベル。事例集を読みあさっていたもんだから、安心して話せる空間のレイアウトも、対話が生まれるようなプログラムの設計もそんなの全然知らない。

そこで思い出したのが、ファシグラ。

明らかに、ファシリテーションって名前がついてるし、これをやればファシリテーションしたことになるだろう。中身よりも、ファシリテーションという覚えたての武器を使いたいという子ども心で、ファシグラを中心に添えたワークショップを設計した。

やったこともなかったファシグラだったが、やってみると意外にうまくいった。

初めてのファシグラが割とうまくいったのには3つの理由がある。

1つ目は、整理するのが好きだったこと。
勉強したことをノートに書くことが好きだった。論点を整理しなければ、頭の中がごちゃごちゃになるので毎回ノートは工夫をしていた。また、1回目で書いた子どもの頃に書き出していたノート。あれも役に立った。あの時間を通して、原因と結果、今と未来など、書くときの軸を探し出す作業は子どもの頃からずっとやっていた作業だった。

2つ目は、
質問の定型文を勉強していたこと。ミーティングを進めるファシリテーションの中では、質問のやり方はとても大事にされる。この時の質問は、定型文を覚えただけで自由闊達とは天と地との差があったが、初めてのファシリテーションには、定型文だけでも効果は大きい。

3つ目は、
書き始める際に、フォーマットを準備していたこと。先に、こちらでフォーマットを決めておくとファシグラはしやすい。後々気づくことになるが、最初にフォーマットを決めてしまうことはデメリットもある。このことについてはまた別の機会に。

この3つがあったから、なんとなくファシグラとして黒板に要点を整理しながらまとめることができたのである。

これに味をしめた僕は、ファシグラやってみようかなと思うようになった。

しかし…

2回目、
初めて参加した学会で、ゼミの先生に「ファシグラしてみたら」と、今思えば無茶なお願いをされた。この時の僕は、「俺ファシグラうまいんじゃね?」ぐらいの変な自信があったので、二つ返事で了承し、その場でファシグラをすることになった。

しかしこのファシグラが、自分史に残る大失敗。

後々知ることになるが、
ファシグラの基本的なルールも知らないでやっていたので、すごく分かりづらいものになった。初の人前ということもあり、緊張で字は震え、色づかいも赤一辺倒という散々なものになった。

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(この時のファシグラ)

それでも、参加されていた方々は、僕の書いたものを使って口頭発表してくださるし、「よかったよ」とフォローも入れてくださる。

僕は、悔しかった。

うまく書けなかったことも、
失敗をフォローしていただいたことも。

ここで、変な自信はなくなった。
逆に、ほとんど気にかけていなかったものを、
僕はこれから真剣にやってみようと決意することになる。

この悔しさを起点に始まるファシグラの道。
この日から、ファシリテーションとファシグラを軸に
僕の道は進んでいく。

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(4年目のファシグラ)

いしばしともはる

いしばしともはる

NPO法人EN Lab.の理事として全国各地の企業や団体で、まちづくり、組織開発、教育分野を中心にグラフィッカー、ファシリテーターとして活動中。年間100ヶ所以上でグラフィックファシリテーションを用いた場づくりを行っている。また、ファシリテーションの教育現場での活用と、公務員の新しいキャリア形成に向けて2016年4月からは小学校教師として教壇に立っている。

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