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2F/当番ノート

これからのこと2

当番ノート 第27期

前回は、これまでふわふわと使っていたファシグラを、言葉で定義して、その存在の輪郭を明らかにしようと試みました。

グラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィック、グラフィックファシリテーションの3つの類型を合わせて、
日本ではファシリテーショングラフィックと呼ぶことが多いと書いたので、今回は残りの2つを紹介しようと思います。
そして、僕自身が目指しているものはどこなのかをまとめることができたら、自分もすっきりです。

それでは、早速残り2つの説明を!

① グラフィックレコーディング
これは、グラフィッカーと呼ばれる人達が「かく」ことに特化して行うものです。主に参加者の振り返りを目的としてかく。
言い換えれば、絵や図を用いた議事録。だから、ファシリテーターは別にいるし、みんなに見えるところでかかなくてもいい。

また、議論を深めるために参加者の前で行う場合もあるけれど、こちらもグラフィッカー以外にファシリテーターがいるので、参加者1人1人の状態や場の様子などの観察は行わなくて済む。だから、グラフィッカーはきいて、かくということに特化できるんです。

僕が、当初やっていたことはこのグラフィックレコーディングと呼ばれるもの。

② グラフィックファシリテーション
これは、ファシリテーターが行うファシリテーションの1つの形。役割で言うならあくまで、ファシリテーター。グラフィッカーというわけではありません。

ファシリテーターが、グラフィックが持つ「見える化」の力をファシリテーションとして使うこと。そして、重要なのが、かくのはファシリテーターだけでなく参加している人たちという事。
つまり、ファシリテーターは、参加している人達が持っているイメージや考えを、自分たちの力で「見える化」していくプログラムを作ること。それが、グラフィックファシリテーション。ファシリテーターやグラフィッカーが1人でかくのではなく、みんなでかいて、その中で参加している人達が主体性を発揮していく。そんな状態のこと。

一体感や、チーム形成の面で言ってもグラフィックレコーディングでは、参加している人たちのチーム形成には限度があります。
参加している人1人ひとりが問題を自分ごととして捉えるためには、それぞれにファシリテーション、それぞれにグラフィックを発揮する方が効果的である事のほうが多い。誰かの1人のリーダーシップでは、予想もしなかった素晴らしいチームが生まれることはないが、それぞれがリーダーシップを発揮できれば予想を上回る素晴らしいチームが生まれる。

僕が、目指しているのはグラフィックレコーディングでもなく、ファシリテーショングラフィックでもなく、グラフィックファシリテーションなのです。

これらの事を表にまとめてみたので、参考までにあげておきます。
ファシグラ分類表

それでは、ここからはグラフィックレコーディングやファシリテーショングラフィックから、どうすればみんなでかけるグラフィックファシリテーションになるか、僕が試行錯誤した一部始終を見てもらえればなと思います。

☆ WS3.0(2015)
自分たちの団体であるNPO法人EN Lab.の年に1度のイベント、ワークショップ3.0にて
少しでも参加している方と僕が一緒にかけるように工夫をしてみました。

イベントが始まる前に模造紙上に参加者の人に直接その時の感情を書いてもらいました。同じ模造紙に僕がかいていくなかで、それらをグラフィックの1つの要素として融合させていく試みをしました。最初に書かれているものをどの様に、グラフィックに落とし込んでいくか考えるのは、予想だにしないダイナミックさを生むのと、最初に書かれたものに新たな意味づけが生まれるという意味で新鮮でした。タイムラグが生じながらも、参加者の人と一緒にかくという試みです。

また、この時はもう1つのチャレンジをしています。それは、参加している子どもたちにカメラを渡し、参加している人たちの話し合いの風景を写真に撮ってもらった上で、その写真をどんどん模造紙に貼るということです。グラフィックの持つ「見える化」の力は、何も誰かのペンだけで表す必要はないと思っていました。写真も1つの見える化の手法です。どんどんコラージュされていく様子は、僕も思いもしない形になって、模造紙がみんなのものになっていくそんな感じでした。
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☆ 複数人で(2014〜)
日本では、あまり多くはありませんが、海外のグラフィックレコーディングやグラフィックファシリテーションの場合、複数人でかくことがあります。その役割分担は、いろんなパターンがあります。文字と絵で分担する場合、コンテンツごとに分担する場合、メインとサブで分担する場合など状況やかく人のスキルなどに合わせてそれぞれです。僕も、1人ではなく多くの人と一緒にかきたいと思っていたので、様々なパターンに挑戦しました。その都度、たくさんの失敗はしたものの学び多いことばかりでした。参考までに、最近、3人でかいたものをあげておきます。
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☆ わかもん会議ミーティング(2016)
ここでは、僕がファシリテーターとしてかきつつも、後半は1つのフォーマットを用意しそこに参加している人に付箋でどんどん貼り付けてもらいました。僕は、その時はほとんどかかずに、参加している人の様子を観たり、時折質問をしたりしていました。模造紙を介して、参加している人同士に様々なやりとりが生まれていて、これも1つのグラフィックファシリテーションだなぁと感じていました。
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☆ 切り貼りワーク(2014〜)
これは、僕が試行錯誤して考えだしたものの中で参加者同士のチームビルディングにもつながるおすすめの方法です。まずは、参加者にワールドカフェと呼ばれる対話の手法を実践してもらいます。4人ぐらいで円になり、話していくことをそれぞれが落書きするかのように模造紙に書いていきます。普通のワールドカフェならここで終わりなのですが、僕は、ここから書いたものをみんなで切って再構成するという方法をとります。そうすることで、振り返りになったり、再構成する中で色々な事象が繋がったり、新しい意味が生まれたり。さらには、それらの活動を通して、お互いの考えを知ることにつながりチームが形成されていきます。うまくいけば、一石何鳥にもなる方法です。
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☆ WS3.0(2016)
今年のワークショップ3.0では、さらに新しいことにチャレンジしました。
それは、キューブ型の巨大な箱にグラフィックをするということです。これは、僕だけでなく何人ものグラフィッカーに書いてもらい、同時多発的に様々なグループの話し合いを可視化しました。これのいいところは、持ち運びができ、参加した方が僕らがかいたものを持って説明などをされるところです。グラフィックの二次利用という面で、新しい形を提供できたかなと思います。
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今回、記事にあげているのはグラフィックファシリテーションになるように試行錯誤したプロセスの一例です。
本当は人に見せたくない失敗もたくさんしています。今回は、ちょっといいとこ取りで紹介させていだきました。

改めて…
僕が身につけたいのはグラフィックファシリテーションなんです。

正直、
ファシリテーターを目指している僕は
グラフィッカーとして見られるのが嫌で、
もうグラフィック(レコーディング)をしないと宣言した時がありました。

でも、最近は、グラフィックをしてきた過程で身につけたことが
自分の強みだし、そこでの、たくさんの出会いと学びが
僕自身を成長させてくれているんだと肯定できるようになりました。
そして、何よりどの類型もそれぞれによさがある。

そう思うと、僕が目指すべきところは

グラフィッカーだけでなく、
ファシリテーターだけでもない、
グラフィック(も)できるファシリテーター。

ここだと思うんです!

これから、どんどんここを目指していろんなチャレンジをしてこうと思います。
その道の途中で、この記事を読んでくださった皆さんに会うこともあるかと思います。
その時は、このなかなかまとまりのない長々とした文章を読んでくださった感想を率直にお伝えください。
いつか、あなたにお会いできることを楽しみにしています。読んでいただき、ありがとうございました。

来週に最後の1本がありますが、最後は対談形式でこれまでかいたことをもう一度消化していく予定です。
それでは、また!

いしばしともはる

いしばしともはる

NPO法人EN Lab.の理事として全国各地の企業や団体で、まちづくり、組織開発、教育分野を中心にグラフィッカー、ファシリテーターとして活動中。年間100ヶ所以上でグラフィックファシリテーションを用いた場づくりを行っている。また、ファシリテーションの教育現場での活用と、公務員の新しいキャリア形成に向けて2016年4月からは小学校教師として教壇に立っている。

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