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2F/当番ノート

星空書簡5ー灯りを消して

当番ノート 第29期

こんばんは。
 先日、久しぶりに秋らしい夕暮れ時間を堪能しました。100人くらい集まってくれた「冬の宙と星の一生」と
いう講座を終えたあと、買い物して急いで帰らなくちゃいけなかったので、「堪能」というには、
ちょっと時間が十分でなかったけれど。でも、その講座のあとに、たくさんの方々が声をかけてくれて、
中には、私の本を読み込んでおられて、なんだか立ち話なのに、人生話しちゃったりしてたので、
そんなことごとを思いながらの空は、いろんな色が見えてきたのでした。
 甲府盆地は、全部がぐるっと山に囲まれていて、夕暮れ時間の山シルエットがほんとにきれいなの。
山が高いから、真っ赤な夕日を見ることはないけど、あのシルエットと残照の空に、金星がぎらぎら輝く
ときって、たまらないです。
そう、前回のお手紙で書き忘れちゃって、しまった!と思ったこと。この手紙が届くときに間に合わないなー。
手紙が届く直前に、4日目の月(形としては誰もが三日月というけれど)と、金星と土星が
きれいな三角になっているのです。先日の夕暮れのような空になっているといいなあ。

 この三角は、その日限りの三角だけれど、それよりもっと上に、まだまだくっきり見える「夏の大三角」が
あります。星空は季節時計。これほどまでに季節や時間を正確にきざんでくれるものは他になく、過ぎ去りゆく
季節、来る季節、それを感じるものとしての星空。カレンダーも時計もなかった時代には、肌感覚としてその
めぐりを空からもらっていたようにも思います。夏の大三角の二つが織姫と彦星。夏の始まりには、東のほうに
織姫上位で(笑)のぼってくる2人が、今の時期は、西の空に仲良く横並びに。そして、その二人の間を
とりもつように、はくちょう座の十字架が。この十字架の形は、ちょうどクリスマスのころに、宵の空に
西の山につきたつように見えるのです。そんな過ぎ去りし夏の姿を、天頂に輝く姿とはだいぶ違った様相で
見えるのが好きです。
 そして彦星と織姫の間を、十字架にそって流れるのが天の川。こうやって流れているんだなーと想像して、
よく目を凝らすと、うすぼんやり見えてくる・・かも。あなたのいるところから、天の川は見えるかなあ?

 今年6月、アメリカで出版されている科学雑誌に、世界の光害の調査結果が発表されたのだけど、日本では
70%の人が天の川が見えないところに(感覚的には見えてない地域はもっと多いような気がするけれど)いて
ほぼ全人口が何かしらの光害を受けた空の下にいる、とありました。暗闇や天の川を失っていくことが、
人々の思索や想像力、創造力にどれほどのダメージを与えるものなのか、そこに危機を感じる人たちは
増えているけれども、でも、社会はそれとは別の方向へ行ってしまっているのかな、とも思います。

 山梨ではもう18年前から、そんな天の川と取り戻すお祭りが、1年に1回開かれています。ライトダウンやまなし。
(3年前まではライトダウン甲府バレーという名前でした。盆地内から、県全体に広げたのです)
みんなで灯りを消して、星空を見上げよう、次世代の子どもたちに天の川を残そう、というイベント。
営業中のお店の人たちもたくさん協力してくれるんです。いつもとだいぶ違う空が広がる。
11月5日20時~21時が消灯時間です。山梨にいても、いなくても、ぜひ、その時間に一緒に見上げてもらえると
嬉しいな。星空の素晴らしさは、遠く離れていても、同じものを見られること。そして心を通わすことができること。
FMFUJI(東京78.6、山梨83.0)では、1時間半、ライトダウンの公開生放送があるから、それを聞きながら
星を見上げてもらえるともっと嬉しい(笑)。
ライトダウン活動ににもっとも熱い想いをもって取り組んでいる、私の仕事パートナーである跡部浩一も、
そして私も、山梨県内あちこちでやっているイベント会場からの仲間たちも、いろんな想いが星につながれる
時間になります。
何はともあれ、晴れること! そして、一人でも多くの人が豊かな時間を持てるようにと、祈っていてください。
ご自愛を。

PS. ライトダウンやまなしで、11月4日23:59まで、クラウドファンディングをやっています。
素敵なオリジナル星グッズのリターンがたくさんあるから、こちらもぜひお願いします~!
https://camp-fire.jp/projects/view/10917

nikoniko

髙橋 真理子

髙橋 真理子

宙先(そらさき)案内人。星空工房アルリシャ代表。星つむぎの村共同代表。
出張プラネタリウム、ミュージシャンとのコラボレーション宇宙ライブ、星や宇宙に関する企画、執筆、大学講義などをやっています。近著「人はなぜ星を見上げるのか―星と人をつなぐ仕事」(新日本出版)

Reviewed by
akira kusaka

街の明かりを消して、空の明かりをつける。とても素敵な活動が記されたお手紙。自分の住んでいる街では夜空がくっきり見えないけど、あえて街の明かりを消して特別な夜に。まだ夜空には夏の面影が見守ってくれていて、季節の変わり目に彼らにお疲れ様を言うのもとても大事な事と考えさせられるお手紙です。

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