第30期(2016年12月-2017年1月)

Photo by Ryo OnoderaPhoto by Ryo Onodera

映像制作をしている友人に久しぶりに会い、あるミュージックビデオに衣装を一着作ることになったのが、ちょうど去年の年末だった。

彼の知り合いのミュージシャンの曲で、彼が映像の脚本を書き、監督を務める作品だという。
私はその頃会社に勤めていて、仕事に日々追われていた。

衣装の製作とか興味があるし、いつかはやってみたいな。
じゃあ作ってよ。
いいよ。
そんな軽い感じで約束をしてざっと構想を聞いて別れたのだが、その日のうちに送ってもらった音源を聴いて、もうほとんど瞬間的に引き込まれていた。

それから毎日のように聴いた。
Satomimagaeさんというミュージシャンの、『塔』。

色々なことが上手く行かず、滅入っている時期でもあった。
潜れるところまで潜ってゆらめくような歌がその頃の自分には、ひどくしんと響いた。

その後配役や撮影日程が決まり、スタッフと意見を交わしながら衣装のデザインを決め、製作を行う。
月並みな言葉ではあるが、撮影が終わるまで総じて刺激的な日々だった。
クランクアップの日、本当に寂しかった。

完成したミュージックビデオは私の心にとって、大切な映像になった。

そして、satomimagaeさんの音楽をもっと色んな人に聴いてみてもらいたいなと、個人的に思う。
このほかの曲も、丹念で朴訥としていて、どれも柔らかい。
ぜひに。

塔 / Satomimagae

鉄線の塔は
今真下に深く這って
そびえ立つ幹の根を掴み
鉄線の塔は 白む塔は
煌然と融けて
音も無く焼き払った

鉄線の塔は
欠伸をこぼした

tou