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2F/当番ノート

ゆらぎながら生きよう

当番ノート 第36期

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来年の目標はなに?と友人に唐突に訊かれて、ほとんど頭を抱えたい気持ちになった。これを書いている今はまだ、2017年だ。

一年の抱負を決めてそれを実現することが、恐らく私はめっぽう苦手だ。

2017年の抱負は、英語を上達させることだった。どの程度なら上達したということになるのか曖昧だったせいもあり、これを達成できたかどうか、正直なんとも言えない。

留学して半年が経つけれど、授業は毎日難しくて毎日唸っているような状況で、言葉が上手になった実感はまだあまり無い。自分では会話やリスニングがだめでライティングは得意なほうだと思っていたのに真逆の評定をもらったり、語学の各部分の実力についても推し測りかねている。

2017年の抱負を達成できたかどうかの判定は、保留だ。

その前の2016年の抱負は確か、仕事においてもっと成長して、当時の上司に楽をさせることだった。こちらは完全に未達成だ。

それより前の年は、憶えていない。

いろんなことにかまけて目標を忘れがちだった。何かをするのに思うような速度では上手にならなかった。あまり頑張れなかった。

自分で立てた抱負を一年の終わりに思い返すと、そんな風に少し残念な気持ちになる。

毎年そんな有り様だけれど、それとは別になんとなく抱く希望のようなものはここ数年、だいたい毎年叶っている。

思うのはいつも同じようなことで、自分に影響を及ぼすような素晴らしい人やものに、来年も出会いたいということ。

好きな人たちに会いに行こう。

展示やダンスのパフォーマンスも見に行こう。

静かに暮らして本を読んで、映画をたくさん観よう。

帰国したあと機会があったなら、服をまた作ろう。

そんなこといつもやってきただろう、というようなこれらのことが、自分がなるべく幸せでいるためにいちばん大事なことだと、最近わかるようになった。

なにを大事にするかを芯に定めていれば、ぶれずにいられるだろう。

というより、なんのためにこうして暮らしているのか分かってさえいれば、ほかのことでどう揺らいでも構わない。

最初に働いた会社をあんなに早く辞めるつもりではなかった。

衣装作家を名乗ることがあるなんて思いもしなかった。

海外へ留学することになんてちっとも興味が無かった。

今までとぜんぜん地続きじゃないようなことに、この先また首を突っ込み始めるかもしれない。それでいい。

心動かされるものに対して、いつも素直でいよう。

今までそうしてきたように。

 

明けましておめでとうございます。

冒頭の通りこれを書いている今はまだ年明け前なので、年賀状のような気持ちで書いています。いかがお過ごしですか。

残り半分になった連載も、どうぞよろしくお願いします。

黒井 岬

黒井 岬

服を作る人。
1993年、新潟県生まれ。2011年より東京に移り、専門学校に4年間在籍し服飾を学びながら作品を製作する。
自主製作のほか、ミュージックビデオ、映画、ダンサーなどの衣装製作を行う。

Reviewed by
kuma

ぼんやりとした幸福があるということ。それは幸せの総量をあれこれ語るよりずっと「具体的」で、より切実なものかもしれないと思う。幸せとは明日が来るのが待ち遠しいということだと、誰かが言っていた。

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