読書会について

第31期(2017年2月-3月)

クラリスブックスでは、月に一度読書会を開催している。これは、参加者の方に決められた課題図書を読んできてもらって、いろいろと感想などを語り合うというもので、私もスタッフも参加する。

そもそもこの会は、私が古本屋を営んでいるにもかかわらず、あまり本を読んでいないので、このような会を自ら開催すれば否応なしに本を読むのでは、という、とても利己的な考えから始まったものだ。
店がオープンしたのは2013年12月で、読書会は2014年1月から始めているので、今月を含めると、もう38回開催したことになる。募集人数は10名で、始めた当初はあまり人が集まらず、スタッフを含めて数人で小さなテーブルを囲んでの開催ということもあったが、今では多くの方にお越しいただき、定員10名はすぐに埋まってしまう。大変ありがたいことである。

読書会では、学術的なテーマを決めたり、皆で統一したまとめを最終的に作成する、などということはせず、単純に読んだ感想を言い合う。参加される方のおかげで、かなり高度な内容に踏み込めていると思われる場合もあれば、あまり掘り下げられなかったかも、と反省する場合もある。
人の意見を聞くのは面白いし、また、自分の感想を述べて納得してもらえるのは嬉しい。自分と考えが異なる意見を聞く場合も、もちろん多い。全く違った視点から読んでいる方の意見を聞けるというのは、まさに読書会の醍醐味だと思う。毎回毎回、いろいろな点で、多くの事を気づかされる。

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取り上げる作品は、日本文学から外国文学、SF、哲学書、評論など、古典から現代まで、あまり偏らずに選んでいるつもりだ。自分自身、確実に本の読み方の幅が広くなった、と思う。そして、ものの考え方すら変わった気がする。

→クラリスブックスの読書会については、こちらのページをご覧ください。

読書会を始めた理由が、このような、自分たちの都合によるものなので、これを開催すること自体が店としての利益になるということはない。商売上手な人なら、うまくやりくりするのかもしれないが、私にはそういう能力がないので、その点は無視して、ともかく、定期的に読書会は続いている。

ただ、直接的な利益にならなくても、読書会を開催することで、店にとってはいい副作用が生まれる。
まず当たり前だが、人が店に来てくれる。それだけでもありがたい。当店のような小さな、しかもビルの2階の店、なかなか来ていただけることも難しいので、読書会への参加が目的にせよ、来ていただけるのはありがたいことである。そして、店の本を見ていただいて、なにかあれば買っていただける場合もある。さらに、当店では随時本の買い取りを行っているので、読書会にご参加いただいたついでに、本をお売りいただけることもある。
他にもいろいろある。読書会を開催するにあたって、店内中央の棚を移動するのだが、そうすると、必然的に棚整理や掃除ができる。棚整理は心がけているつもりだが、日々の仕事に追われ、なかなかできないものである。本の見せ方や置き方を変えただけで、新鮮な店に生まれ変わることもある。本を棚から下ろして、少しでも棚を軽くして移動するわけだが、元通りにはならない。しかしむしろそれがいい。前から在庫してある本でも、見せ方が変わると、手に取っていただける場合もあるのだ。

このように、読書会を開催することでいろいろと思わぬ副産物が生まれるが、特に大きいと思うのは、人との出会いだろう。よく参加していただける方と友達になったり、みんなでご飯をしたり、そういった繋がりは、読書会をやらなければなかなかできないことだろうと思う。
読書会を自ら開催し、少しでも本を読む古本屋になりたいと思って始めたのだが、それ以上に、得るものは大きかった。

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私は小さい頃からモノを作る職人というものに憧れを感じていた。家具を作ったり、服を作ったり。芸術作品ではなく、人が日常的に使うものを作る人、職人に憧れていた。古本屋はものを作る商売ではなく、古本を売ることが目的なので、ものを作ることはしない。しかし、それはできないけれど、人と人との交流を生み出すことはできるのかもしれない。

読書会自体は古本屋の本業ではないが、店というものは、どんな業種であろうと、多かれ少なかれ、目には見えない繋がりを作るものである。そういった繋がりが大きくなって、地域に根ざし、社会性を生み、文化を育む。そういう流れのごくごく小さな一部にでもなれれば、古本屋の店主として、嬉しい限りである。
特に大きな目的を持って始めた読書会ではないし、これからもその姿勢は変えないけれど、人の意見を聞き、そして自分の感想をしっかり述べるということ、本当に当たり前のことだが、なんだか今の社会、こういう当たり前のことが見落とされているように思える。プラトンの対話篇ではないが、実際、人と面と向かって語り合うということ、このことなしには、何も生み出されないと、つくづく思う。

これからも、淡々と、コツコツと、読書会は続けていくつもりである。