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2F/当番ノート

プロポーズと内省 (1月15日から1週間のこと)

当番ノート 第37期

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1月15日(月)

プライベートで2件の約束と会議があった。週のはじめのほうしか体力が持たないので、はりきって予定を詰め込んだ。プライベートの約束の1つめは憧れていた作家さんと、2つめは大学時代の同級生の子と。2人ともずっと気にはなっていたけれど話す機会が持てなかった女性”で、何だかおさななじみと話しているような気持ちになった。また定期的に会いたいな。

恋愛の話もした。昨日で恋人さんと付き合い始めて(初めて会った日から)1カ月経つ。何となく同棲してしまっているというと「早いうちに言っておかないと根が生えちゃうよ」と言われて「そうですね」と笑った。お父さんとお母さんのなれそめについて思い返す。当時にしては珍しく電撃婚だと聞いていた。付き合っているときの写真なども見せてもらったことがあって、お父さんとお母さんのくせにラブラブで気持ち悪いなと思った記憶があるけれど、お父さんとお母さんも男と女で人間なのに、子どもだからとてそんな風に思ってしまったことは申し訳なかったなと帰り道の電車で思った。わたしも子どもを産んだらそんな風に思われるのだろうな。何とかしてそうは思われたくないなと思った。

結婚したら恋人が恋人でなくなるみたいな、出産したら女でなくなるみたいなことはすごく怖いし嫌だし、だけど、そういうものを仕方ないものとしてひたすらに惰性で、タスクのように淡々と刻んでいくような態度も嫌で、わたしは結婚というものから距離を置いていた。怖かった。かと言って法律婚のオルタナティブであるポリアモリーや契約結婚の実践者たちを見ていると、気が遠くなるほどの努力を尽くしていて、わがままなわたしには難しそうだなと思う。何か、もう少し間の、自分にうまいことピッタリくるやり方はないのかな。

良い調子で酔っ払って帰ってきて、セブンイレブンで高級じゃないほうの肉まんを買って歩いていると、恋人さんが向こうから歩いてきた。迎えに来てくれたらしい。こういう恋愛の、おいしくてアツアツがいつまでも続くといい。続かないと思うけど。

家に着いてちゃぶ台越しに座ったときには頭が妙に冷えていて、わたしは「今後のこと、どんな風に考えてる?」と切り出した。

恋人さんもさすがに面食らったようで、わたしも焦ってしまって「どんな風に、というのは、その、具体的に何をするとかそういうことでなく、将来のことは誰にもわからないけれど、“just now”を楽しみたいのか、その後のことを考えているのかそういうことで、短距離走と長距離走で使う筋肉が違うみたいに想定が違うと息切れたりたるんだりするから、そういうことです」というようなことを言った。

もっと言うとあなたの結婚観について聞きたいだとか、たとえば最近わたしは覚えのないところで恨まれていることが多いこと、いろいろと書いているから今後もわたしのことを嫌いな人は増えていく一方だと思うこと、万が一わたしに何かがあったときの東京の家族的な人になる契約みたいな感じ、結婚とはライフライン機能だと思っていること、だから『結婚!ハッピー!イエーイ!』みたいなのは自分の中ではあんまりピッタリきてないということ、などと遠回りしながら、そういうことを言った。

すると恋人さんは「これって、今、プロポーズされているの?」と聞いてきた。

わたしは「まぁ、そんな感じかもしれないけど、たとえばそうだとしたら、どう?」と言って、「半年くらいしたら、僕のほうが言おうと思っていたのに」と言うので、改めて「結婚してください」と言った。気分が高まっていたせいか、言葉のキャッチボールがうまくできていなかった気がするけれど、わたしはプロポーズというものをして、彼はそれを受け入れてくれたみたいだった。

プロポーズ終わった、と言うと、僕が言いたかったのに、と言われた。

ドラマチックな夜景も指輪もない、いきなりの、地味なプロポーズだった。

1月16日(火)

朝起きてベッドで寝たまま、婚約した話をするためにお父さんとお母さんに電話をかける。お母さんは「相手の人もその気になってくれてるの?」と言い、お父さんは「結婚は1人でするものじゃないんだよ、相手の人を脅して承諾させたんじゃないのかい?」と言う。わたしはてんで信用がない。でも、自分で婚約と言ったけれど、結婚の約束をしたことが婚約という意味になるのかという実感はあまりない。もっと何か、とてもすごいことだと思っていた。言葉とかイメージとかって怖い。

大阪から来てくれた女の子に会う。細くて背が高くて、長い黒髪に大きなサングラス、きれいな肌と、クールに見えて笑うと愛嬌のある表情とのギャップが印象的で素敵だった。彼女に会うのは初めて。お世話になっている知り合いの女の人に紹介してもらって会うことになった。彼女は大学で福祉の勉強をしたあと、今は百貨店で美容部員をしながら、医療や福祉の現場でメイクを活かせないかと試行錯誤しながら活動しているらしい。

一見、繋がりが不思議なキャリアだけれど、年をとるごとに活気もなくなってくるおばあちゃんにお化粧をしてあげるだけでみるみるうちに気持ちが若返るみたいだ。すっぴんの日とメイクをした日は気分がぜんぜん違うので、その意味は肌感でわかる。おまけに化粧をするときに腕を使うので筋トレにもなるらしい。ただ、新しい取り組み過ぎてなかなかお金を出してくれる組織がなく、続けていくのが大変だということだった。クラウドファンディングで何とかできないかな。彼女の活動がどんどん広がってほしいし、老人ホームでおばあちゃんのビューティーメイクアップパーティーとかがしたい。

来月はアフリカに行くのだという。もうわけがわからない。わけがわからなくて最高。信念を持ってジャンルを越境している人たちは、きまって愛があるし狂ってるし最高だなぁと思うし、引き続きそんな感じでやっていてほしいな。今度会うときは彼女に面白い企画を持っていこう。

そのあとは、学生時代にお世話になっていた編集者の師匠のパーティーに遊びに行く。たった4カ月前から準備して起業されたらしい。相変わらず馬力がすごい。お客さんがたくさんいたので、30分ほどで帰った。師匠と初めて会ってからもう6年ちかくが経つ。ここ数年はほとんど会えていなかったけれど、師匠はやっぱり特別な存在だ。

1月17日(水)

ライターのお友達とイラストレーターのお友達が遊びに来てくれて、みんなで鍋をした。お酒をたくさん買っても3,000円。3人だから1人1,000円。安い。あまり考えないようにしていたけれど、今までは1カ月の飲み代が10万円を超えていた。自慢ではないけれど、人生で自炊をした回数は10回を切っているので、飲み代を含めた食費の割合がすごい。1日7記事くらい納品をしたり2時間しか寝ないで働いたりとか、狂ったように働いていたけれど、エンゲル係数が高かったから、わたしはやっぱり貧乏だったのかもしれない。ハウスレス時代にザックを背負っていろんな人の家に寝泊まりして食いつないだときも、下北沢の風呂なしアパートとか代官山のトタン小屋での生活も、今考えると信じられないし、何もそこまで無理しなくてもと思うし、「もっと良い生活をしたらいいのに」と誰かに言われては「戦闘力が落ちるから嫌だ」とムキになって鼻息荒くしていたけれど、そんな彼女を否定することはできないなと思う。昔の自分のことは、それはそれで褒めてあげたい。

お友達が来たのは21時。わたしの好みでレモン鍋になった。何でもかんでも柑橘系が好き。

いつ話そうかと思っていたけれど、最初のほうでプロポーズしたんだ、と軽く話してしまった。年が近いお友達が結婚したと聞くと、勝手に傷つくことも多かったので、何をどう伝えて伝えないのがいいのかわからないなと思う。わたしはおどおどしていたし、2人とも今までのわたしを知ってくれていただけに入籍することに本当に驚いたようだったけれど、それと同じくらい心の底から喜んでくれたような感触があった。うれしいな。

恋愛の話や仕事の話などなどをしたけれど、2人とも女の人としての魅力もプロとしての志も高くて本当に大好きだ。プライベートの充実も創作も最低限のお金も諦めたくないし、諦める必要がないなと思わせてくれる。わたしも頑張りたい。

23時頃に恋人さんが帰宅してきたので、2人に紹介する。わたしも彼も挙動不審になって、右鼻から鼻血が出た。ライターのお友達は3歳くらいから鼻血が出たことがないみたいで「痛い?」と心配そうに聞いてくれて、笑ってしまった。楽しかった。

1月18日(木)

生理でもないのにここ何日間か下からの血が止まらない。そのことを恋人さんに話すと、急いでググりをして「妊娠した後に出血することもあるらしい」と言う。ピルも飲んでいるのにそんなバカなと思いながら、頭の中でそろばんを弾く。子どもが欲しいとか欲しくないとか以前に、おでこのあたりが湿気でボワボワして膨らむみたいな、何となく気分が重くなる心地がする。

ご飯を炊き忘れていたことに気づいて、大急ぎで食べてわたしだけ先に病院に向かう。結果、今月はピルがあまり効いていなくて、先どりで生理もどきになってしまったというようなことを言っていた。今月は月の初めから関西に行ったし、重めのnoteも出したし、引っ越しもしたし、プロポーズもしたので頑張りすぎてしまったのかもしれない。昨年末は子宮頸がんに引っかかって大きい病院で検査をしていたこともあったので、何もなくてホッとした。

最近ずっと家にいたので、散歩しながらの軽いデートをしようと提案してみた。一緒に暮らしていると無駄に待ち合わせがしたくなる。意味もなく歩いてコーヒーを買って、1時間ほどで帰った。

夜ご飯を食べたあと、恋人さんがぽつりぽつりと話し始める。首を傾ける角度からして、けっこう落ち込んでいる。今まではわたしが急にヒステリーやプチパニックを起こすことはあっても、恋人さんの感情の浮き沈みを見たことがなかったからびっくりして、ちょっとうれしかった。

ここ数年はずっと彼氏という立場の人がいなかったので、好きな人にどんなに優しくしても遠いフェンス越しに「ありがとーう」という言葉が聞こえるほかは打ちっぱなしで、ラリーにならなかった。好きでそうしていたので、それはそれでよかったのだけれど、全身全霊で優しくして、優しさが返ってくることのありがたみが身に染みる。セフレだろうがセフレじゃなかろうが関係が築けていればいいのだけど、わたしはそれをすることができなかった。

恋人さんは弱い部分を見せるのがカッコ悪いと言っていたけれど、わたしとしては安心する。それはちょっと失礼な気もするけれど、求められて安心するのは染みついた性質なのだし、それ自体は悪くない。ただ、思えば今まで男の人との関係は支配と従属の関係か、共依存かのどちらかしかやったことがない。ずぶずぶにならないようにだけ気を付けてうまくやっていきたい。

プロポーズの答え合わせを日々しているような感覚。
こうやって更新をしていきたい。

1月19日(金)

2カ月ぶりに行きつけの美容室に行く。代官山と渋谷と中目黒の間くらいにあるお店。ネイリストさんに紹介してもらってから1年弱通っている。初めて行ったときは黒髪のセミロングで、毛先だけ青くしたいと言ったのだけどやめたほうがいいと言われて、結局全部ブリーチしてピンクにして、髪の長さもボブになった。思い描いていた髪型とは全然違ったけれど、びっくりするほど似合っていたので、それからというもの、わたしはその美容師さんをとても信頼して通っている。

時間を少し過ぎて駆け込んだら、ネイリストさんがいた。と言っても、髪の色が変わっていて声をかけてもらうまで全然気が付かなかった。心なしか美容師さんがいつもよりうれしそうで、わたしもうれしい。美容室に行けばネイリストさんの話を、ネイルサロンに行けば美容師さんの話をしていたので、何だか妙な身内感がある。楽しいな。

猫を飼える家に引っ越したと言ったら、僕は結婚しなくなりそうだからペットを飼いたくないなと美容師さんが言って、結婚の話になった。ついこの間まで「結婚しないで遺伝子だけもらって子どもを育てたい」と言っていたばかりなので、何となく言いづらいなと思っていたら、わたしのことは何も聞かれなくて安心した。

アシスタントの子が新大久保の公園に野良猫がたくさんいることを教えてくれた。週末に網を持って新大久保に行こう。

夜は連載の打ち合わせで中目黒へ。連載の打ち合わせと言っても、わたしが日記を連載にしたいと言うと「書きたいものを書いてほしい」という一言でほぼ終了。参考リンクを送ってくれて、そのまま飲み始めた。

創作の話とプライベートな話が中心。言語が同じ人種の人でうれしい。わたしはお金をどれだけ稼いだかとかにあまり興味がないし、元々「ライター」にアイデンティティがないので、仕事はきちんとこなしつつもその方向でキャリアを積んでいくイメージが最初からない。「良い編集者になるには」という話をされながら叱られるたびに、ありがたいなぁと思いつつも酸素がうすくなる心地がした。「作家とかそういう方向にいきたいんです」と言えば「世の中をナメている」とまた叱られた。良かれと思って言ってくれていたのかもしれないけれど、良かれだろうが悪しかれだろうが、必要のない助言に足を引っ張られる必要はなかったのになと思った。回り道したけれど、ちゃんとこの方向で地を固めていけつつあることがうれしい。ようやっと呼吸の仕方がわかってきた気がする。

プロポーズの話をすると、あまり驚かず「展開が早くていいね」と一言言ってくれた。「どんな人なの?」と聞かれたので、「恋人として、生活をともにする人として、表現者としての魅力のバランスが良い人」と答えると「それは希少だね」と言ってくれた。わたしもそう思う。

彼にプロポーズをしたのは、お互いに表現活動のウエイトが高いので、アツアツの恋人時代がすぐに冷めて、全身全霊をかけて表現をしたくなったときにすぐに別れてしまいそうだと思ったこともある。もちろん恋人としても大好きだけれど、今後表現を続けていくうえで彼は安定した生活の基盤になってくれると思ったし、そういう約束をしたほうが恋人としても長続きすると思った。結婚は恋愛を長続きさせるためのインフラだと知人が言っていたけれど、本当にそんな感じだ。今日もまたプロポーズの答え合わせをした。

白子のてんぷらと魚がまるごと鍋に入った骨酒というものが特においしかった。ここ、また来たいな。

1月20日(土)

のっそり起き出してランチタイムにハッピーな年下の男の子と打ち合わせをする。彼にはずっと「恋人が欲しいから良い男の人がいたら紹介ほしい」と言っていたこともあって、会ってすぐに「あけおめ~!恋人できたね!」と言ってもらえた。実はプロポーズして入籍をするんだと言ったら、「イエーイ!いいね!」と言った。最高のハッピー野郎。この軽さ、楽でいい。

企画をぼやっと話すと細かい部分を彼が詰めてくれた。彼は終始ハッピーな人だけれど、頭がキレるので頼りになる。個人的には良い企画だと思っている。楽しくなるといいな。

お昼過ぎからは引っ越しパーティーと銘打って、ただダラダラと飲む会を始めた。都合がつかなかった人もいたけれど、10人以上集まってくれてジーンとする。ジーン。人間っていいなという気持ちになる。何かと理由をつけてまたみんなを呼びたい。

ある程度の人数が集まったので、お店に移動する。お寿司と焼き鳥のお店だった。たくさんの人が好きなものを2つ看板メニューにするなんてズルい。スシスミビ。名前だけでもう好きになってしまった。みんなに来てくれてありがとうと妙に改まってお礼を言って回った。中身のないことを書いているけれど、本当にうれしかった。

帰り道、タコ焼きとアイスを買って帰っている間に、親友から電話がくる。一緒に歩いていた恋人さんが電話をかしてくれとせがむので渡すと、何かよくわからないけれど、何かを一生懸命しゃべっていた。これまでも好きな人を親友に会わせる機会は会ったけれど、何か変な感じがした。

タコ焼きを食べたらお腹がいっぱいになって、アイスは食べなかった。
アイスを2種類買ったのにどちらもイチゴ味で、どちらか1つをチョコ味にすればよかったかなと思いながら寝た。明日食べるなら、パリッテよりもジャイアントコーンがいいな。

1月21日(日)

恋人さんとデートに行こうと言って昼過ぎに外に出ると、猫の鳴き声がした。ドアを開けて右に小さい三毛猫がいて、左側にはペルシャ猫を抱いたペルシャ猫みたいな婦人が立っていた。ペルシャ婦人という言葉がよく似合う、高貴でありながらちょっとマンガっぽい見た目の婦人だった。

ペルシャ婦人は「その子、1カ月前からこの辺をウロウロしているのよ~、うちはもう2匹飼っているからこれ以上飼えなくてエサだけあげていたの」と言った。「かわいいなぁ、欲しいな」と言うと、ペルシャ婦人は「ちょっと待ってて」と言って、ピンク色のケージに野良猫を詰めた。ゆったりした喋り方とは真逆の手早い動きに圧倒されて、目を丸くしていたら、エサやトイレシートと一緒にケージごと猫を渡してくれた。

ペルシャ婦人はわたしのアパートと同じ敷地に住んでいる人のようで、「何かあったらいつでも言うのよ~、がんばってね!」と言って、ペルシャ猫と一緒に家に戻って行った。ペルシャ婦人のペルシャ猫は毛並みがすごく良い。きっと良いものを食べているんだろうね、と恋人さんと話した。

猫をもらえたのはうれしかったし、欲しいとは言ったけれど突然のことで、わたしも恋人さんも不安でいっぱいになった。しかも息をするときにゴロゴロ言う。恋人さんが「猫 ゴロゴロ」と検索すると「肺気腫」と出てきた。調べると、手術代が60~100万円かかったという記事まで出てきた。ますます不安だ。

恋人さんが目に見えて憂鬱そうにするので、何か好きなものを食べに行こうと言って、外に連れ出した。結局、スパイスラーメンというものを食べた。あったかくて辛かった。おいしかったのだけれど、そのくらいの感想しか出てこないほど、猫のことで頭がいっぱいだった。

同世代のライターのお友達と女子会をする。恋人ができたことは伝えていたので、その話になったついでに入籍する話をしたけれど、みんなあんまり驚いてくれなかった。わたしが突飛なことを言い出すことに慣れてしまったらしい。驚いてほしかったわけではないけれど、驚いてほしかったのかもしれない。

そのあと、同棲するとセックスレスにならないか心配だというような話になった。わたしは「セックスレスは人間であれば生物学上ほとんど誰しもがなるものだから、なったときのことを想定して早めに取り決めをしておくことが大切だと思う」というようなことを言った。プロポーズしたときも、セックスレスになったら話し合って工夫して、それでもダメなら恋人をつくったり別れたりしようという話をした。

結婚も離婚もしたことがないので偉そうなことは言えないけれど、結婚するときにセックスレスとか離婚したくなったときの話をしておけば、もしものときもショックが和らぐ気がする。縁起でもないと言う人がいるかもしれないけれど、3人に1人が離婚する時代なのだから、わたしと恋人さんの間にも当たり前に起きうることだし、結婚する前に話し合っておいたほうが良い気がする。入籍して、話し合いをして、努力をしてうまくいかなかったら別れればいい。もっとカジュアルに結婚したり離婚したりしたい。まぁ、できれば離婚はしたくはないし、しなくて済むように全力は注ぎたいけれど。

猫をかまっていると、わたしも恋人さんもくしゃみが止まらなくなったので、名前をくしゃみちゃんにした。くしゃみのみいちゃん。今まで動物を家族だとかいう人のことを、わたしは多分バカにしていた。くしゃみのみいちゃん。家族が1人増えた。

佐々木ののか

佐々木ののか

書くことが生業。実体験をベースにした物語みたいなエッセイやインタビューを書きます。メインテーマは、家族と性愛。

Reviewed by
トナカイ

みなさんこんにちは、トナカイです。佐々木ののかさんの記事のレビューを任されました。さっそく読みましたが、1話目からクライマックスを迎えています。どんなクライマックスなのかは読んでいただくとして、僕がこの記事で好きだったのは、佐々木さんが良い調子で酔っ払っていても、コンビニで高級じゃないほうの肉まんを買ったというところです。佐々木さんは、酔って気が大きくなっていても、勢いで高級な肉まんを買ってしまうひとではないんだな、と僕は思いました(僕なら高級なほうを買ってしまいそうです)。

誰かのことを知りたいとき「そのひとが何を選ぶか」はひとつの重要な手がかりになります。例えば、たこ焼きとアイスを買ったけど、お腹がいっぱいになったからアイスは食べなかったとか、そんな選択のひとつひとつが僕のあたまのなかの佐々木さんを形づくっていきます。

無意識になされた小さな選択が、その後の大きな出来事につながる瞬間、というのが人生ではときどきありますが、僕は佐々木さんに訪れたその瞬間を見せてもらっているんだな、とひとり感慨にふけっています。来週も楽しみです。

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