20191025

第47期

死にたい気持ちを抱え続けることほど、しんどいものはない。

「こんなにも幸せなのに、まだ死にたいと思うんですか?」
あぁ、そうだよ。
何でだろうな、幸せって誰が決めてくれるんだっけ。
質問の意図もわからないまま、僕はぼんやりと答えている。

「だって、いつも薄っすら自殺志願者ですから」

自殺を考えるのは、明確な理由がある人だけじゃないと思う。
僕のように、無性に死にたくなるような人だっている。
何故か分からないけれど、自殺をしなくてはいけないような気持ちに駆られるときがある。
それは大抵、当たり前の判断が出来なくなっているほど疲れているときだ。

とてつもない絶望感に苛まれて、駅のホームから飛び込みそうになる。
満員電車、通過する電車、駅のアナウンス。
一歩踏み出せば、白い線を越える足。

眠れない夜を過ごして、迎えた朝には何度も吐いた。
それでも、明日はやってくる。
更けない夜も、明けない夜もない。
僕がいなくなっても、必ず地球は回るんだ。
誰かがいなくなっても、必ず朝日は上るんだ。

だけど、神様はそんな僕を見ているのかもしれない。

何だか今日はいいことあるんじゃないかって、神様は僕に思わせるんだ。
また何かいいことがあるんじゃないかって、神様は嘲笑うように僕を翻弄するんだ。
それはたわいもないことなのかもしれないけれど、死だけを考えるようになった僕には
刺激が強すぎると思えてくるほどの、されど些細な、そんな幸せな出来事。

夢を見せるかのように、神様は死を見つめた僕に、甘い現実を突きつけるのだ。
まんまと引っかかる僕は、またもや生きることを選択してしまう。
そして僕は、何度も裏切られた世界に、また舞い戻ってしまう。
世界に見放されたわけじゃない、なんて思ってしまう。

今日も僕は、生きている。
神様に騙されながら、生きている。

薄っすらとした自殺志願を胸に抱えて、踏みしめた地面は思ったよりも柔らかい。
そうして進む足取りは決して軽くはないけれど、きちんと前を向いている。
騙されたっていい。とろけるような甘い夢を見たっていい。
生きてるって、それだけで夢を見るチャンスを手に入れられるのだから。