20191122

第47期

ぼうっと、生きることがどれだけ大切か。

すれ違う街の人々、過ぎ行く喧騒、いつもどこかで急かされているような気がする。
渋谷のハチ公、新宿のバスターミナル、上野の中央改札、待ち合わせの日々。
行き交う誰かを見て、ふと想う。

どうしてこうも、大人は忙しなく動いているのだろう、と。

僕は、煩いのも忙しいのも苦手だ。
制限時間があるテストは嫌いだし、遅刻しそうな時間も嫌い。
東京は、誰かが何かを急かしているような気がする。
携帯電話響く怒号、チカチカ点滅する信号、足を取られて滑る転倒。

朝起きると、窓ガラスが結露していた。
冬の気配を感じる午前6時、布の温もりを感じる午前8時。
こうして時間は過ぎていくのだけど、何故かあんまりにも時間がもったいなく思えて
もう少し待ってくれてもいいんじゃないかって思うのだ。

来週で、このアパートメントを去ることになる。

抱えた生きづらさが詰まった袋の中身は、砂から少しずつ空気になっていった。
僕の中に潜んでいた数々の思い、表現されないままに砂に埋もれていた言葉を
アパートメントの一室で、一つずつならべていけば、僕の砂袋はどんどん、透明になっていった。
だけど、砂袋は浮き袋になったわけじゃない。
そんな袋を抱えながら、ゆらりゆらゆらと、世の中という沼を彷徨っている。

もっとゆっくりでいいのに、もっとゆっくりでいいのに。

時が経つのが早くなる、それは大人になればなるほど早くなる。
どうしてここまで来てしまったんだろう、と後悔するとき、それは生きづらさの袋を見てしまうとき。
俯いて袋を見てしまえば、それは沈んでいく一方だけど
ふと見上げれば、アパートメントで見えた景色が広がる。

生きづらさを抱えて、その袋に詰まった砂が、空気になってほしい。
浮き袋にしようとして、僕は文章を書いてきた。
果たしてそれが実現出来るか分からないけど、この文章を読み続けてくれた誰かに
僕の想いが届いてくれたら、と思う。

なんだか最終回のようになってしまったけど、それは来週のお楽しみだ。

終わってしまうのはなんだか寂しくて、やっぱり時が経つのを恨んでしまう。
僕にはやりたいことがたくさんあるのに。やらなければいけないことがたくさんあるのに。
どうしてこんなにも早く、時が過ぎ去ってしまうのだろう。

また、そんなことを思いながら、僕は立ち上がるのだ。
完全に砂が空気になることはないだろうけど、大きく息を吹き込むのだ。