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3F/長期滞在者&more

空間と構成

長期滞在者

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ゴールデンウィーク中1日だけ時間が取れそうだったので、京都グラフィーへ行ってきました。
メイン会場だけでも15箇所ありますが、朝から夕方までで一気に9箇所の展示をしっかり見ることができました。

見る前は、先端的で難解な手法が次々と繰り出されてくるのかと思っていたら、全然そんなことはなく、意外とオーソドックスに写真を運用していました。
扱っているテーマも、社会的な題材、メッセージが明確なものなどが中心で、親しみやすい題材であるとか、注目を集めているからとか、日本特有のムラ社会的なバランス感覚溢れる人選はなく、他方、専門的な美術や写真表現の知識なしには理解のきっかけすら持てない様な作品もありません。そればかりか、来場者を楽しませるというよりも、写真を通じて世界の多様性を感じたり、個々の生き方について思いを巡らしたりと、見にきた人々が何らかを考えるためのきっかけを提供してもらっているようなイベントで、そういう意味でも、いままで日本では体験することができないユニークなものだと感じました。

とりわけ、京都の街ならではの、個性溢れる建造物の内部を使った展示も、実に練り上げられたプランで、隅々まで丁寧に仕上げられた空間構成に驚かされました。

行き過ぎた資本主義や拝金主義的なものを皮肉的に扱う作品が地下の廃墟を思わせる空間に並べられていたり、元氷室という、独特の匂いと湿り気を含んだ空間にハリケーンで水没した地域の人々のポートレートは、独特の現実味を感じさせるものがあったし、30年近く前の須田一政さんの作品は、美しい京都の町屋の中で、一枚の紙でできている作品がこれほどまでに美しい織物のように感じられたり、その印象を挙げればキリがないほどです。

特筆すべきは、展示する作品の選び方で、来場者の属性と、独特の「写真のある空間」でどのように見せるのか、何を持ち帰ってもらいたいのかなどを基本に据えて、かなり意識的に写真の選抜をやり抜いているように感じます。
個性溢れる空間の中で僕たちは、空間に飲み込まれるような今まで経験したことがない雰囲気に包まれます。今日の写真界で(主に写真集の現場だと思うけど)使われている写真の並べ方の技巧は、ここでは全く意味を為さないことを主催者はよく知っていると思います。写真の順序づけで、流れを作ったり、止めたり、強弱をつけるための写真の組み合わせと選び方は、一切使われていないように見えます。順路構成を無視して、1枚の写真だけ見たとしても、大凡その意味が変わらないような写真選びをしているように思えたのです。

並べられた写真を一網打尽に自分にインプットしていくような読み方でも、歩きの方向へ軽やかに移り変わるイメージの連鎖を楽しむようなものでもなく、会場をひと歩きした後で身体に染み込むように、いくつかの写真の記憶が残っていく感じが新鮮な体験であり、この辺りが美術館でもギャラリーでも得られない貴重な写真体験でした。

こういうイベントは、遠くにあっても、いくらかの時間とお金を払ってでも毎年足を運びたいと強く思うものがありましたが、ある展示会場の最後で、「東京グラフィー」なるイベントが近々開催予定のアナウンスを受け取りました。

個人的には、来年も京都で次の試みの数多くの経験者の一員として、この街に戻ってきたいと思っています。

篠原 俊之

篠原 俊之

1972年東京生まれ 大阪芸術大学写真学科卒業 在学中から写真展を中心とした創作活動を行う。1996年〜2004年まで東京写真文化館の設立に参画しそのままディレクターとなる。2005年より、ルーニィ247フォトグラフィー設立 2011年 クロスロードギャラリー設立。国内外の著名作家から、新進の作家まで幅広く写真展をコーディネートする。

Reviewed by
鈴木 悠平

写真"を"見せるのではなく、写真"の"ある空間で何を感じてもらうか。その空間に身を置いた人に何かを持ち帰ってもらうことを第一に置くと、写真がもたらす印象もまた変わってくるのだろう。

ゴールデンウィーク中に「京都グラフィー」へと足を運んだ、ルーニィの篠原さんによるエッセイ。

"今日の写真界で(主に写真集の現場だと思うけど)使われている写真の並べ方の技巧は、ここでは全く意味を為さないことを主催者はよく知っていると思います。"

"会場をひと歩きした後で身体に染み込むように、いくつかの写真の記憶が残っていく感じが新鮮な体験であり、この辺りが美術館でもギャラリーでも得られない貴重な写真体験でした。"

長年ギャラリーを営み、ギャラリーという場、また今日の写真界での写真の用いられ方やその文脈を、よく知っている方だからこそ、それとは違うアプローチの新鮮さ、面白さを強く感じられたことだと思う。

「東京グラフィー」なるイベントが近々開催予定とのアナウンスもあったようで、そのときには足を運んでみたい。

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