長期滞在者
あなたに言葉を送る時、私はどんな顔をしているのだろう? 深い夜の時間が好きだ。 誰もが寝静まって、朝になるまでは仕事の連絡はまず入らない。 携帯に届く連絡は、極めてプライベートな人間のみとなるこの時間を、私は一日の中で最も好んでいる。 お気に入りのバスソルトをたっぷり入れた湯につかり、 物語の世界に没頭できるような本のページをめくって汗をかき、 オレンジの精油が優しく香るシャンプーで髪を洗い、 季…
Mais ou Menos
————— まちゃんへ 入院お疲れ様でした。 まちゃんの検査入院は、2回目だったから、もう何となく流れはわかってたけど、やっぱり心配でした。検査結果はまだもう少し先やけど、脳のことやからどうなるか心配です。心配しすぎてもあんまり意味ないかもしれんけど、心配です。 私はというと、少しずつですが、自分を楽にするような考え方、動き方を実践しているところです。仕事も探しているけど、なかなかすぐには見つから…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
見知らぬ女の子を家に泊めた、そんなことを最近思い出している。 彼女とはmixiを通じて出会った。どうしてコンタクトを取るようになったのかはすっかり思い出すことができない。大学2年生の頃だったように思う。彼女はひとつほど年下の京都の美大生だった。 思い出せる最初のやりとりはこうだ。 彼女が東京に遊びにくるという時に、mixiで知り合った見知らぬおじさんの家に泊めてもらうという話を聞いて「ちょっと待っ…
Do farmers in the dark
こんばんは!今回は前々回に載せた漫画のような紙芝居のような話の続きを載せています。しかし前回以上に今回全く話は進んでいません。すいません。宜しくお願いします! オレンジ色の部屋に住んでる <前回までのあらすじ>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 オレンジ色の部屋、暑い 仕事に行かないと 向こうの煙が出ている工場に行くんだ 二匹の犬はいつも僕を噛みます くそ!痛いな! あと…
長期滞在者
家族や友人にあらゆる種類の距離感が存在するように、シェアハウスも住人の距離感は多様だと思う。 私が住む家はパーティーといった類のことをしないので、住人であらたまって集まるのは何かを意思決定する必要のある住人会議のときだけ。それ以外は好きなときやタイミングが合ったときに話すくらいだ。 私にとってはその距離感が居心地良いと思っていたけれど、最近ちょっと鍋をしてみてもよいかな、と思う。そういえば昔、庭で…
お直しカフェ
築地がなくなってしまった。天まで積み上がった発泡スチロールも、これぞブリコラージュと言わんばかりのロフトも、ビールケースの椅子もガムテープで補強しまくりの荷台も、もうじきに全部全部なくなってしまう。 私は何かがなくなってしまうことがたぶん人よりもだいぶ苦手だ。それは、今年の春、近所のお蕎麦屋さんが火事で全焼してしまったときに、友人から指摘されて改めて気づいたことでもあった。火事現場の前が辛くて通れ…
長期滞在者
10月1日から、また入院する。 これまでホルモンの補充療法を続けていた中枢性尿崩症とは、まったく別の難病を発症している疑いがあり、再度一週間の検査入院することになった。1ヶ月前にはこんなことになるなんて想像すらしていなかったけれど、今このタイミングで入院することになってよかったとも思う。正直にいうと、自分の体が少しずつシャットダウンしていっていることには、少し前から気づいていたし、自覚症状はたくさ…
長期滞在者
ライターという仕事をしているのに、人と話すのが苦手だ。正確に言うと、できないというより、強烈な苦手意識がある。 インタビューなどであらかじめ決められたテーマがあるときはまだいい。でも、お互いに「これからこの話をしますよ」という前提が共有できていないと、途端によそよそしくなってしまう。正直、視線を合わせることもできなくて、目が泳ぎまくっていることさえある。 雑談が苦手なのかもしれない。そうしたコミュ…
ギャラリー・カラバコ
中秋の名月の昨日、ギャラリーの鍵が届くのを私はなんとはなしに心待ちにしていた。 けれど、届いたのは今日。 満月が中秋の名月とは、限らないのだって。 満月のひかりは特別で、とおくでだれかが歌っているような音がする。 〈前回までの展示〉 『縫い目』 『つむじ』 『鏡』 — 「耳鳴り」 絵: 古林希望 文: カマウチヒデキ ーーーー 共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け…
長期滞在者
笑う門には福来たる。 縁あって、1966年から放送されているテレビ番組『笑点』の公開録画にお邪魔させて頂いた。 一緒に行った人たちと後楽園ホールでの収録会場に入っただけで、みんな笑顔。 子供の頃から見たことがあるテレビ番組のセットは見ているだけでわくわくした。 ラジオでDJをしている私にとって、落語を観る時は楽しむことはもちろん、とても勉強になる機会。 声と音だけで想像して楽しんで頂くラジオトーク…
長期滞在者
阪急神戸線の線路北沿いの道を塚口から園田方面へ、夜遅く自転車で出発する。 山陽新幹線と阪急線が交差する複雑な高架下を掘るようにくぐったその先に、黒々と藻川(もがわ)の水面が見えてくる。 最近僕の中で流行っている「藻川西岸南下・神崎川・左門殿川から2号線コース」(塚口発着で約15km)である。 ここは藻川に散らばるもこもこした中洲群がなんだかシュールな影絵を形作っていて、昼間に通っても不思議な景色な…
長期滞在者
いくつかの作品を引き取るために、先日 レジェンドと呼んでも差し支えない作家さんのご自宅へ行ってきました。今はご遺族がプリントと原版の管理をされているが、アトリエを処分してしまったので、自宅のマンションに棚をたくさん入れて、50年分の写真のことを全部収納してるということで、実際行ってみたら、自宅の一角どころか、自宅の大半がその作家さんが残した作品などで、むしろ塊の中で暮らしているようにも見えました。…