「チューリング・パターン : turing pattern」
シマウマはなぜシマ模様なのか、ヒョウはなぜヒョウ柄なのか。
哺乳類、爬虫類、魚類、植物、生き物には様々な模様や造形があらわれています。
それらの模様は遺伝子に描かれた設計図によるものだと考えられてきました。
明治時代の科学者は、キリンの模様と干涸びた田んぼなどにできるひび割れのパターンが似ていることを発見しました。
キリンの模様は設計図ではなく、成長過程のひび割れによってできたものではないかと考えたのです。
自然界のあらゆる場面で似ている模様があらわれるのは、偶然なのでしょうか。
その謎のヒントになる現象があります。それがチューリング・パターンです。
チューリング・パターンとは、数学者アラン・チューリングによって示された空間パターンです。
チューリングは、動植物にあらわれる模様の多くは「等間隔の繰り返しパターン」であると気がつきました。
数学において、等間隔であらわれるものといえば、サイン波などの「波」です。
上記の連立偏微分方程式の値を適当に定めれば様々な波のパターンができます。
つまり、設計図のないところに模様があらわれるのです。
現在では、ある種の熱帯魚の縞模様がチューリング・パターンの通りに変化していく様子が観察されています。
動植物の模様すべてがチューリング・パターンとは言えませんが、世界の成り立ちを解くパターンのひとつであると考えられているのです。
「水銀 : mercury」
水銀は、原子番号80、常温で凝固しない唯一の金属元素です。
この特殊な外見から、古代中国では不老不死の薬として珍重され、秦の始皇帝は水銀中毒で死んだとも言われています。
水銀は主に辰砂(硫化水銀:HgS)という赤い鉱物の形で産出されます。
辰砂を熱して硫黄分を燃やし(二酸化硫黄という気体になります)、蒸留すれば水銀があらわれます。
またその逆に、硫黄と水銀を混ぜて熱すれば、鮮やかな朱色の辰砂があらわれます。
錬金術者達も水銀に注目しました。
錬金術では、冷、熱、乾、湿の四性質の組み合わせで万物が構成されていると考えられていました。
冷たく湿った水銀、黄色く乾いた硫黄、この二つが合わされば、万物をつくりだす基本物質になると考えられていたのです。
水銀は英語でMercury、つまり水星です。
錬金術では、太陽と金、月と銀など、主要金属が星々と関連づけられています。
天球上をせわしなく動く水星と、動く金属である水銀、どちらも伝令神であるメルクリウスの名前を冠しているのです。