当番ノート 第7期
365日の365日ぶんの息からどうしても通り抜けることができなかった、わたしがいる。 ゆっくり閉じこもっている場所、そこが、私と本をつないでいるところ。 小学校の時、父に「シートン動物記」を買ってもらった。 とにかく動物が好きだった。 りす、ハムスター、文鳥、セキセインコ、十姉妹。 にわとりとうさぎと柴犬。 ケガしたカラスや雀。 巣から落ちたひなを拾ってきて大きくなってそれがメジロだとわかった。 …
当番ノート 第7期
皆さん。こんにちは。 木曜日のしゃもとです。 今月10、11日とベルギーの首都Brusselsから車で1時間20分くらいの町、Hasseltの文化会館で子供のためダンスフェスティバル (Krokus Festival) があり、踊ってきました。 5歳児からの小さい人たちを対象にした作品を踊るのはこれが初めてです。 小さい人たちはとても正直なので、上演中、作品の流れの歯車が狂いだすと、すぐさま集中力…
当番ノート 第7期
動物園の鳥類は風切羽を切って飛べなくしてあるんだ、などと聞くと、僕も一応動物好きのハシクレであるからして(枕頭の愛読書は今泉忠明『世界珍獣図鑑』)やはり胸が痛むわけだが、だからといって僕は動物園の動物は不幸だから、なんていう言い方には全面的には賛同しない。 動物を見世物にしてストレスの多い環境で飼い殺している、とナジる人がいる。 しかし野生地で生息域を狭められ数を減らしてしまった種類を、保護して飼…
当番ノート 第7期
子供のころ、遊び疲れて足を取られて雪原に倒れこんだ、 あるゆきの日のこと。 空はくぐもっている。 うんと遠くのようで、でも手が届くくらい近くのようで、 なんだか自分がふわりふわりと地上から不安定に浮かんでいるみたいな心地でもって手を伸ばすと、 灰白色の空に溶け込んでいた雪は、とつぜんそのすがたを現して私の手のひらに舞い落ちてくる。 雪が耳のひだひだに絡まり、耳たぶがきゅうっと縮こまっていくのがわか…
当番ノート 第7期
「あのさ、綺麗な日本の言葉を教えてよ」 ふいにそう訊ねられて 口から出た言葉は、「ゐまち」でした。 「ゐまち」とは月の名前。 平仮名のほうがしっくりくる。 ほっこり座って空を眺めたら、ゆっくりと昇り出す月。 月の名前は、風流だなぁと思う。 その昇る様を、名前を聞けば想像できるんだもの。 その人は、月の昇る空を。 わたしは、陽の沈む空を。 背中合わせに湖岸に立って、綺麗だなーとか寒いねーとか 他愛の…
当番ノート 第7期
私の言葉よりアーティスト自身の言葉を聞いて、作品を見ていただいた方が、読者の方々にとって「表現」を感じやすいと思い、インタビューしました。価値観や写真表現について素直に、かっこつけることなく、恥ずかしそうに語ってくれました。 ©Tim Gallo TIM GALLO 1984年生まれ。ロシア出身。東京を拠点に写真家として活動中。 ポートレート写真を中心に、被写体の内面を映し出す作品を日々撮りためて…
当番ノート 第7期
人生でたぶん一番最初にもらっただろう手紙のことを書こうと思う。 幼稚園も年中・年長組になると、盛んに手紙ごっこがはじまる。 小さな子供がはじめて書くひらがなは、左右が逆になったり不思議な絵柄になったりする。 暗号とも受け取れるその奇妙な出で立ちを前にすると、秘密の伝言を解読するような気持ちになる。 こっそりと自分だけに手渡された至福の時間。 子供が自分たちの手でひらく言葉の扉に、名前がある。 鉛筆…
当番ノート 第7期
みなさん、はじめまして。 しゃもと、と申します。 今週は、今月始めまで行っていたアルゼンチンの話。 あちらは夏でした。 暑いところには蚊がいますので、私たちはブエノスアイレスに着くなり蚊の大歓迎を受け、めでたく肌は刺された所とそうでない所の水玉模様。 直撃を避けるため、直ぐさま私たちは避暑地へ。 蚊は極端に少なくなり、そこでしばらく海からのアルファ波を浴び続け、へろへろな日々を過ごしました。 そし…
当番ノート 第7期
十一、二歳のころ、一年にも満たない期間だが、父方の祖父母の家で暮らしていたことがある。 田舎の小さな町で、家の便所は今では珍しくなってしまったであろう非水洗式である。そういう田舎の常として、便所は母屋から少し離れた外にあり、山間の町なので冬の夜の寒さも半端じゃなく、心細さと寒さで便所といえばことこと震えていた記憶ばかりが残る。 寒い季節でなくとも、便所にはもっと心震わせるものがいた。 田舎の便所に…
当番ノート 第7期
手のひらから水が零れるように 記憶は薄れ 時は流れる 写真に残る記憶の欠片は 私に流れた 時の一掬 —————————————————————…
当番ノート 第7期
わたしは現在「Asian Photo Arts(以後A.P.A.)」という国際色豊かな若手写真家が集うプラットフォームを運営している。 多様な価値観を持つ若手写真家達が集うことで互いに刺激し合い、発表の場を作り出し、作品性を高めている。 現在の主な活動は、Asian Photo Arts.blogにて、1枚の写真と短かな言葉をほぼ毎日のペースでアップすることだ。実にシンプルな活動だが、眼や思想を磨…
当番ノート 第7期
これは私が4歳か5歳のとても小さかった頃の話です。 左、右、左、まっすぐ行って坂、上りきって左。 家を出てから幼稚園へ行くまでの道のり。 まっすぐ行って左、ちょっと右で左行って、そのあとまっすぐで坂あがって左。 どっちを行ってもいいし、それとは違うほそ道を通ってもいい。 ほそ道はよその家の裏を通って行く。柿の木やびわ、いちじくの木があった。 歩いて5分とかからなかったおかげで、幼稚園から勝手に帰っ…