当番ノート 第15期
五月、しっかり育った苗とともに、いよいよ田植えのとき。 うちでは、まず、田植え機という機械で植えていきます。 そのあと、人が田んぼに入り、植えたばかりの苗の間を歩きながら、手で植えていく。 苗が抜けてる所を補ったり、整えたり。 本数の少ないところに足したり、激しい雨風で流れた苗を拾ったり。 田んぼの中を、ひたすら歩きながら、じっと苗をみつめながら、手で植えていく。 それが、刺し苗。 七歳(小2)の…
当番ノート 第15期
2003年の10月のある日、ぼくは会社の同僚と仕事帰りに東京駅近くの丸の内ビルヂングの中にある焼き鳥屋で、灰色のスーツと白のワイシャツを着た無個性な会社員達がとりとめもなく酒を飲み干しながら上司への愚痴や小言を繰り返しぼやいたり、というシチュエーションで飲みニケーション中だった。その当時のぼくはアメリカのボストンにある大学院でMBA(専門は国際銀行論)を取得して帰国後、再び何事もなかったように以前…
the power sink
こんばんは。自分はなんでか無意味な絵が大好きで、今回もここに載せる。 今回少し気持ち悪い絵が多いので、申し訳ありません。ではよろしくお願いします! 僕はシートにつつまれている。地中に埋まっている。栄養が少し出ている。 花々 棒を持った恐ろしいおじさんがいるんだ。帽子をかぶっている 黒い、綿状の突起物をくわえている。触られると、とても痛い 横風が吹いているんだ 限界だ。本当にどうしようもないくらい限…
当番ノート 第15期
手のひらの上に火のついたマッチが乗せられる。靴べらが折れるまで打たれた体は痛みなど感じなくなる。そんな風にしてわたしは育ちました。そして10代の終わりから10年ほど、現実を現実として認識することがひどく困難な病にさいなまれることになりました。 この連載のお話を伺ったときに真っ先に思い出したのは大学の、とあるゼミの選抜試験課題のことでした。「取るに足らない自分について語る」そんなようなものだったかと…
長期滞在者
子どものころ、夏になると千葉県の養老渓谷に川遊びに連れて行ってもらっていました。川で遊んだという細かな記憶は殆ど残っていないのですが、内房線の五井という駅で乗り換える小湊鉄道のディーゼルカーに乗った記憶は良く覚えています。昭和50年頃だと思いますが、甲高いエンジンの音と、冷房のない暑い車内が妙に記憶に残っていて、子どもながらにも古臭い電車だなぁと思ったものでした。 その小湊線が今も廃線にならずに、…
当番ノート 第15期
お米農家のやまざきです。 今、この文字を打っているのは、農家に嫁いで10年のヨメです。 旦那といっしょに、農薬に頼らず、お米を育てています。 こどもも、ふたり、育てています。 茨城県の南西部、常総市というところで、無農薬・減農薬の米づくりをしてきました。 今まで、胸を張って、無農薬です。と言えていたものが、原発の事故によって、変わってしまいました。 収穫のたびに、念入りな検査を受けて「定量下限値1…
イルボンと小鳩ケンタの空席商会
◇出てくる人(順不同・敬称略) イルボン(詩人):以下、車掌 小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩 HELLOAYACHAN/ハローアヤチャン(絵描き・プラスチックアクセサリー作家):以下、ハロー 曽田朋子(造形作家):以下、曽田 土師洋之(会社員):以下、土師(はじ) ◇◆◇◆◇ 【2014年4月の相席】 4月20日、gallery yolchaにて収録。 HELLOAYACHAN×曽田朋子「NEWSH…
風景のある図鑑
「 麻 : cannabis 」 麻は様々な表情を持つ植物です。 麻の繊維は、夏服の代表的な布として広く使われています。 種子は、唐辛子にも入れられているポピュラーな食品です。 皮を剥ぎ取った麻の茎は燃えやすく、オガラと呼ばれ盂蘭盆の迎え火やお切り火に使用されます。 まだ受粉していない雌花をシンセミアと言い、その先端から得られる樹脂にテトラヒドロカンナビノールという化学物質が含まれています。 これ…
当番ノート 第15期
ヨチヨチ歩きの子供の頃から植物や昆虫、動物と触れ合う事が大好きだった。人といるよりも自然の中で一人、命ある全てのものが見せる穏やかさ、静けさや時折垣間見せる生死をかけた荒々しさを、静寂な森の中で肌から、目から、呼吸から、そして流れ出る汗から感じ取るのが今でも好きである。今、私は40代半ば、そんなに長い人生を生きてきた訳ではないから、これから先の道はまだまだ長く、人生の道半ばなのかもしれないし、今、…
当番ノート 第15期
「『いついかなるときも希望と喜びが傍らにありますように』という言葉が今も胸に残って生きているからです。」 2年前の春にわたしが放った言葉が思わぬ角度から返ってきた。そしてわたしはこのアパートメントに入居することを決めた。 みなさんこんにちは。フープダンサーのAYUMIといいます。 フープダンサーってなに。ただの踊るひとじゃないの。 はい、フラフープと一緒に踊るひとのことです。あまり、どころかまった…
長期滞在者
白くってふわふわしていて地面に落ちているもの、なーんだ。 この時期になると家の外にも部屋の中にも、このふわふわしたものが現れる。外にあるのはポプラの種子で、綿毛を身にまとっているため風に舞いふわふわと漂い、地面を白く覆う。初めて見たのは19の頃、大学のキャンパス。私の目の前、気まぐれに飛んできたこの大きな綿毛はいったい何なのか、と辿ったらそこには大きなポプラの木があって、季節外れの雪景色に…