当番ノート 第31期
書き始めてみたものの、逃げ出したくなっているのだ。僕の当番ノートは明日に迫っていたのだった。 もっと先に出すようにと言われながらもこの体たらく。半日後の自分が書いてくれるはずだと一時逃れを重ねていたら、もう掲載前日なのだ。言い逃れのできない現実である。 盗んだバイクがあったら走り出してやろうかとも思うが、盗んでいる時間すら惜しい。そんなヒマがあったら書かねばならぬ。 当番ノートのシステム上、前任者…
当番ノート 第31期
考えるへんな人 ー 独特の価値観を持ちながら暮らしていて、見方によっては近寄りがたいが、噛めば噛むほどに味わいぶかいスルメのように話せば話すほどのめり込んでしまう人。 前回は、つなぐ人として岡田昭人さんを紹介させてもらったが、今回は彼につなげてもらった人について書いてみようかと思う。ぼくの先輩を紹介します。 現在は、プロのMC/DJ/ナレーターとして「声」の仕事をしているリスケさん。…
当番ノート 第31期
はじめに断っておかなければならないのは、この世の中には、サンドイッチを愛する人の数だけ「善きサンドイッチ」がある、ということです。いいですか、しっかり頭に入れておいてください。そうすれば、俺のサンドイッチが一番だの、あのサンドイッチは下等だの、そうした不毛な議論に陥らずに済みます。サンドイッチに唯一絶対の正解などないのです。ピース。 とはいえ、ここで、わたしにとっての「善きサンドイッチ」の条件をま…
長期滞在者
渋谷の街中をぶらりとしていると、キャッキャと甲高い声でおしゃべりしながら、移動する女子大生らしき子たちが4人で歩いている。 自分が学生のときを思い出した。そういえば、沖縄という田舎から上京したのもあって、渋谷というのは行くのにエネルギーがいる場所なんだけど、少しテンションがあがる街だった。 そして、さきほどの女子大生たちも、ぼくらから見ればただ「遊んでいる」ように見えるのだが、彼女たちからすれば、…
当番ノート 第31期
古本屋をやっているので、この先、本がますます読まれなくなり、その結果本が売れなくなるのでは、と少しは不安に思っている。書物という形ではなくても、今ならパソコンやスマホ、あるいは電子ブックで簡単に本を読むことができるからだ。 1995年に、OSとしてインターネットへの接続を標準搭載(正確には追加のバージョンアップで)したウィンドウズ95が発売され、その後1999年にアップルから、比較的安価で可愛い筐…
the power sink
表題:運命は夕暮れに僕を誰もいない泡立った貯水池に導いて、なぜか端っこの方に裸で飛び込ませ、少し膝に怪我をさせた。 今回も絵を載せます。ではよろしくお願いします! ビニールに入った人とビニールに入っていない花 ビニール袋を膨らませる 工場 水の入った大きなお椀を太ももに乗せているゼンマイ式のネジが頭に刺さった動かない人形のような人間 &nbs…
当番ノート 第31期
中学から社会人3年目になるまで住んだ地元に、ずっと仲のよかった近所同士の友人が二人いた。 中学は三人とも同じだったけど、その後、進んだ高校も大学も別々になり、 もちろん専攻や生業も全く違ったものにそれぞれ進んだ。 この年頃の男友達同士の常で、学校帰りなんかに、まあ色々と屈託の無い話を三人でしていたのだけど、 今でもよく憶えいているやりとりがある。 自分の思考や志向や嗜好のパターンを考えた時に三人そ…
長期滞在者
ちょうど一年前と同じく、今、日本に滞在している。 ここ数年、身に染みるように実感していることなのだけど、 日光を浴びる時間というのは本当に大切だ。 ベルギー辺りで極端に日照時間が減る11月頃から、 体調が悪くなり、活気も失せて行くのが毎年恒例のようになってしまった。 そういう場所に住んでいると、そういう状態が普通なのだと思ってしまうのだけど、 ぼくの場合、それを放置しているとまたうつ病になってしま…
当番ノート 第31期
こんにちは、はじめまして。 月曜日当番の、きた えまこです。 まず自己紹介をしようと思い、ハタと自分のことが自分でもよくわかっていないことに気がつきました。そこであわてて数日間、自分の今までのことなど思い返してみたのですが、、、 生まれたのは香川県高松、でもほとんど記憶はありません。すぐに大阪に引っ越し、一度はシンガポールにも住んだりして、小学校は3回転校しました。ほぼ大阪育ちですが、今は以前、数…
長期滞在者
バーカウンターのなかにいると、常連さんから一見さんまで、日々、否応がなしに、さまざなな人と接することなる。 すると、お酒の注文の仕方や飲み方、好みのカクテル、どんな人を連れてくるのか、などの店内の立ち振舞が、その人の趣味嗜好だったり、人間性を知るためのヒントだと気づく。自分のなかだけの法則が見つかる。 例えば、バーカウンターに一人で座って、スコッチなどで通なウィスキーを、ストレートで飲むような女性…
当番ノート 第31期
“世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。誰にも気付かれないように。 ー オノ・ヨーコ” 鹿児島でよく訪れる食堂の扉に、いつからか書かれていた言葉だ。 誰の言葉なのだろうかと気になってはいたけれど、誰に聞く訳でもなくしばらく時間が経った。 今回、アパートメントに寄稿するにあたって、何を書くべきかとても悩んでいた。 名古屋から鹿児島へ向かう車中で、あれこれ考えたりもしたがて…
当番ノート 第31期
夕日を追いかけていた。読み方も知らない町で、僕は夕暮れと夜に境目がないことを知った。黄金色に染まったコンクリート塀の間をひとりで進む。子どもの頃の話だ。アスファルトの匂い、長く伸びた影、湿り気を帯びた暑さ。僕はどこまで行けるだろうか。答えを探していた。見知らぬ風景に身を置くことに感じる不安と期待。夕暮れと夜のようにふたつの感情にも境目はなかった。 どうやって帰ったのだろうか。記憶がすっぽりと抜け落…