長期滞在者
先日、パートナーがマッカランの12年をお土産に買ってきてくれた。わたしはウイスキーが好きだけれど、実のところいつもおなじ銘柄ばかり飲んでいてウイスキーについてはちっとも詳しくない。パートナーの職場の人が、良いお酒を飲んだら楽しみの幅が広がるという話をしていたらしく、それならばといろいろ調べてマッカランを買ってきてくれたのだった。 土曜日の少し遅めの昼食。昼間っから、お酒を飲む幸せ。ふたりでどんな味…
当番ノート 第32期
フランス人に書を見せると、決まって飛んでくる一番目の質問は、「これは一体何が書いてあるの?」だ。 「かな」もあるけれど、「かな」の書だって変体仮名交じりだったりして、今の日本語の感覚から読み解くには少々時間がかかったりする。漢字のカテゴリーだと大体中国語の古典文献から取ってきたものを書くことが多い上、私は中国語が分かるわけではないので、こういう反応が飛んでくると正直困る、けれど好奇心旺盛なフランス…
当番ノート 第32期
先日、中目黒にあるCafe & livespot FJ’sというお店がリニューアルすると言う事で、partyとやらにお呼ばれしてきた。そんなpartyなんて滅多に行かないし、その後の用事もあったもので少し顔を出すという生意気な感じでお邪魔する事となった。お店は大きい通りに面してはいるが、駅から少し離れた場所でのんびりした空気の中。路面に向かって扉が開いており、晴れた夕暮れがとっても気持ちよ…
当番ノート 第32期
2ヶ月間あっという間でした。 3月にアパートメントで記事を書くことが決まり、4月に1店舗、5月に1店舗の立上げに参画する事になりまして、考えていた10倍くらいの忙しさになっていまいました。 アパートメント関係者の皆様には大変なご迷惑をおかけいたしました。 (いつも原稿が遅れてすみませんでした汗) やっと仕事が落ち着いたところで、ラスト投稿です。 今思えば全8回(9回かな?)の構成組みをすればよかっ…
ギャラリー・カラバコ
ここはとあるアパートの一角にある、小さなギャラリー「カラバコ」。 白い壁に空っぽの額縁が無造作にならび、その下には題字だけが添えられています。 タイトルだけを頼りに、二人の作家が別々に文と絵を寄せ、2つが合わさった時に初めて作品が完成するのです。 01 桟橋 02 物差し 03 帯 04 時化 05 吃り 06 影絵 07 隠者 08 ウミネコ 第9回は「うぶすな」 我々はどこから来て、どこへ行く…
当番ノート 第32期
隣の男性が、囲炉裏の火を前に、焼き加減を細かく調整しながら真剣にほっけを焼いている。 その様子を私とサザエさんはにこにこして眺めている。 いい具合に焼けてきたところで、ほっけをお皿にうつして、3人は互いのおちょこに日本酒を注ぎ合う。 そして、3人で杯を交わす。 「乾杯!」 ゲストハウスの部屋に戻ってきた時、既に先客がいて、見慣れたヘアスタイルの女性の後ろ姿だと思ったら、サザエさんだった。 「あれ、…
当番ノート 第32期
二カ月の連載を振り返ると、これまでの自分のこと振り返ってしまった。 こうして、文章を書いているけれど、昔から文字を読むことは好きだった。 他の人が何を楽しんでいるかはよく分からない。 誰かを喜ばせようと行動することもほとんどない。 自分がしたいことをするばかりで、今もそうなってしまっている。 文字とは、絵本や小説が好きだったのではない。 ゲームの説明書をよく読んでいた。 家にはゲームの説明書が多く…
長期滞在者
Maysa Tomikawaさんの文章を読んで、以前から気になっていた津村記久子の『浮遊霊ブラジル』を読んだ。72歳のおじいさんが楽しみにしていたアイルランド・アラン諸島への旅行を前に急逝し、その未練から浮遊霊となって、いろんな人の体を乗り移りながらアラン諸島を目指す表題作のほか、全部で7つの作品が収録された短編集だ。 Maysaさんはこの中の4つめ、「地獄」という短編を取り上げている。突然のバス…
当番ノート 第32期
この記事が掲載される頃には、私はもうブルターニュの田舎へ行っている予定なのだけど、この記事を書いている今、私は日本にいる。 一年ぶりの日本。実家のある街まで帰ってきたのは、実に二年ぶりのこと。二年も家へ帰らなかったことは初めてではないか。最近ではYouTubeのおかげで、日本のテレビ番組が少し遅れて、しかし次の日には観れるということを覚えて、たまに観たりして、『ふむふむ、日本は今こういう感じなのだ…
当番ノート 第32期
「いつまで音楽続けるの?」「どうなりたいの?」 要は将来のビジョンとか目標とかを問いたいのだろう。それでも、どう答える事を求めているのか迷う事が多い。ちょっと長く深くなりすぎない程度に、答えになるかどうか分からないけど気持ちを紐解いてみる。 ある時、知り合いがライブを見に来てくれた時に私に言った。「ちょっとひどい言い方かもしれないけど、自分はミズハちゃんの歌を聞きに行ってるんじゃない。音楽に対する…
当番ノート 第32期
「樋口さんは最初とっつきにくい人だと思いました。」 会社の女性スタッフに最近言われた言葉です。 僕は多くの方にとってとっつきやすいタイプ(自称)だと思います。 そんな僕がなぜそんな事を言われなきゃならないのか。 それは僕のせいなのです。 わざと話しかけたり目を合わせないようにしているのです。 なぜそんな事をするのか・・・ それは、僕がセクハラと思われるのを恐れている臆病者だからなのです。 スズメの…
長期滞在者
今月の藝術草子は、東京とパリ、それぞれの場所で出会った、人と人とをつなぐ場所について. 髪は女の命、と昔から言うけれど、幼いころから黒髪ストレートロングヘアで過ごしてきた私にとって、髪の毛は自分のアイデンティティーそのものだ. フランス育ちの私は、小さいころから輝くようなブロンド、甘やかな栗色、知的なブリュネットに囲まれていた.そんな中、私の漆黒の髪は彼らに珍しく映ったようだ. 「つやつやで綺麗ね…