当番ノート 第35期
「地獄寺」―あの世とこの世の境界にある、人間の本音が隠れている場所― タイは国民の9割以上が仏教徒という敬虔な仏教国である。そのため、まるでコンビニのように至るところに寺院が存在する。その数は約3万といわれており、日本のコンビニの数は2017年現在6万ほどであるので、街中のコンビニの半数が寺院であるような感覚である。そして数ある寺院の中には、コンクリート像で「地獄」を模した空間を併せもつ寺院が存…
当番ノート 第35期
こんばんは。はじめましての人が大半だろうに、でも久しぶりの人や、しょっちゅう顔を合わせてる友人にも読んでほしいなと思って、それでどちらかというと近況報告のような心持ちでこの連載をはじめます。週1回×2ヶ月の全9回。ふと思い出して、いつか全部読んでね。 すみだで暮らしています 最近の私はスカイツリーふもと、墨田区向島に暮らしています。早いもので、上京してから12年とちょっと。もうだめだ大阪帰る、京都…
当番ノート 第35期
旅に出よう テントとシュラフの入った ザックをしょい ポケットには 一箱の煙草と笛をもち 旅に出よう 出発の日は雨がよい 霧のようにやわらかい 春の雨の日がよい 萌え出でた若芽が しっかりとぬれながら そして富士の山にあるという 原始林の中にゆこう ゆっくりとあせることなく (高野悦子「二十歳の原点」より) 学生闘争の時代を駆け抜けた二十歳の女学生が、 自殺する直前に綴った一篇の詩。…
長期滞在者
夏休み明けから、あれこれ整理をつけようと、 部屋の模様替えをやったり、ヨガと瞑想を再開したり、 日記やメモを今まで以上に詳細につけることにしたり、 アイロン台を買ってきてもっとアイロンがけに時間を費やすことにしたり、 と手を替え品を替え思いつくものは手当たり次第にやっているところなんだけど、 その過程でなぜか、植物との関わりをもっと増やすと良いに違いない、 という確信めいたものが降ってきて、にわか…
当番ノート 第35期
午前三時のコンビニには客も居らず特にやるべき仕事があるわけでもなかったから俺とアサクラさんは制服を着たまま店の外に出て灰皿の前でそれぞれ煙草を吸った。深夜の空気を少し肌寒く感じた。東京の夏は随分暑さが長引くのだなとつい先日までうんざりしていたのだけど数日前から急に涼しくなった。俺が一本目の煙草を吸い終えて灰皿の中に捨てると駐車場に置かれている自動販売機の脇からサバトラ柄の大きな猫が姿をあらわした…
日本のヤバい女の子
【10月のヤバい女の子/腕力とヤバい女の子】 ●尾張国中島郡の大領・久坂利の妻 ――――― 《尾張の国の女、細畳を取り返す語(今昔物語/巻二十三・第十八話)》 (一) 今となっては昔のことだが、聖武天皇の時代の尾張に久玖利という男がいた。男の妻は糸のように華奢で柔和な雰囲気の女性だった。 彼女は麻の糸から細畳の生地を織るのがたいそう上手く、夫に素晴らしい着物を仕立てて着せていた。 ある時、久玖利の…