長期滞在者
春は天候が荒れる。体調も崩れやすくなる。職場の面子が変わったり、環境が変わったり、出会いと別れの季節だ。波のようにいろんなことが揺れて、揺さぶられて、安定するのがなかなか難しい。わたしにとってもそれは同じことで、様々な変化に適応するために日々必死です。 3月末から4月末にかけて、これまでにはなかったような体調不良が続いていたのも大変だった。身動きが取れないような頭痛が連日続き、急遽CTスキャンを受…
当番ノート 第38期
子どもの頃から兄と私は“1人1つ”だった。好きなお菓子も1個ずつ買ってもらっていたし、部屋もそれぞれ、テレビも複数台あったので、見たい番組でケンカすることは無かった。 その代わり、「兄だけが持っているもの」を使おうとすると、嫌がられることが多かった。テトリス、たまごっち、灰色の初代ゲームボーイ。目を盗んでこっそり遊んでいるうちに、兄が飽きて遊ぶ権利が回ってきたり、母がもう1つ買ってくれたりして、最…
当番ノート 第38期
なんか、バカみたい。 偉大な、とてつもなく広くて穏やかな、大西洋。そこにそびえる、フィニステーラ岬。 Finnistera… Fin、つまり終わりってこと。誰かに聞いたけど、The end of the world(世界の果て)、なんて言われているらしい。 旅を終えた巡礼たちがたむろして、岩にへばりつく牡蠣みたく待ってんのさ。全く、滑稽じゃないか。 何を待ってるかって? そろそろ時間だ。 空は黄金…
当番ノート 第38期
2016年の6月に、ペルーへ行って先住民の儀式に参加しました。その経緯を書いてみます。 (ペルーのクスコという都市の、サンペドロ市場にあるシャーマンショップ。手前の大きなサボテンがサンペドロ) ・サンペドロ ペルー出発の1ヶ月ほど前のある日、ちいさなお茶会が開かれた。用意された『茶室』は、六畳ほどのちいさな部屋だ。先生は和紙に漢文で聖書の一節を書いたものを壁に貼った。「わたしはあなたに、天国の鍵を…
当番ノート 第38期
今回は13星座で登場するへびつかい座のお話と、その前段としてからす座を少々。 ** 神アポロンはテッサリアという国の王女コロニスを妻にしていました。アポロンは太陽の神であり、かつ音楽の神、予言の神、医学の神であったためとても忙しく、愛する妻といつも一緒に過ごすことができずにいました。そこでアポロンは銀色の羽を持ち、人間の言葉を話せるカラスに、毎日妻の様子を伝える役目を与えていました。 ある日、道草…
当番ノート 第38期
私の絵が初めて価値を生み出した時の話。 絵の修行で、成長する方法の1つとして私は(似顔絵)を描く事を指示されていた。 先生の考えた(ecoart)でダンボールにその人の雰囲気を描く絵だ。 先生の元で修行をして間もなくして、このecoartの練習を始めた。これはとても難しかった。今まで絵を誰にも習ったことのない者からしたら、未知の世界で何をどう描けば良いのか分からず、ただ真似をして吸収するしかなかっ…
長期滞在者
稲葉俊郎『いのちを呼びさますもの』(アノニマ・スタジオ) 本棚の前を立ち去ろうとした時、視界の隅で一冊の本が光った気がして振り返った。 血液のように真っ赤な表紙に、金色の箔押しでタイトルが刻まれた本が、棚の左上にあった。その本は、並べられている他の本と比べてどこか雰囲気が違っていて、どうして気づかなかったんだろうと思いながら手に取る。ぱらぱらとめくって、その時は稲葉俊郎さんというお医者さんが命や体…
当番ノート 第38期
私は2011年より2年間ポルトガルのマデイラ島でバレエ教師をしていました。 マデイラ島は一年中温暖で暖かく、色々な花が咲き乱れる、美しい島。花の島とも呼ばれ、一年に一度の花祭りでのパレード、道に飾られる花がとても美しいです。 とても呑気な雰囲気の島でどこからも海がみえます。仕事の終わりには海で果物ジュースを飲んだり、海を見ながらビールを飲んだり。。。ゆっくりとした時間の流れでした。 昼寝をしている…
当番ノート 第38期
数年前の朝、コピー機の前で会った先輩の前髪が、ふにゃん、と前に倒れていた。いつもはワックスで髪を固め、おでこが見えてキリリとしている先輩。朝だからなのか、それとも疲れているからなのか、髪の毛と一緒になって目もとろん、としている。 「今日は髪型違いますね」と声をかけると、「セットできなかったからね~」と、口元だけ笑って答えてくれた。 その先輩から仕事を引き継いで数カ月後、私はマスカラも、ファンデーシ…
当番ノート 第38期
なぁ、どうして、こんな異国の地で、夜中の三時に森の中を歩いているんだ。僕に明確な答えがあるかと言えば、そんなものは無かった。しかし歩き続けるのが僕の精神ならば、それに、ただ柔順に従おうではないか。答えを手にするのは、すべてを終えた後なのだろうから。 二日前、ある不思議な宿に僕は泊まっていた。そこの主人というのは、鉱石をすり潰してできた粉末で絵を描くのだという大それた芸術家であり、いくら飯を食お…
当番ノート 第38期
2016年の6月に、ペルーへ行って先住民の儀式に参加しました。その経緯を書いてみます。 刺繍をするようになって思うのは、どんな大作も、ちいさな1ステッチの集合だということだ。布の裏から針を刺す、表からまた針を刺す。その繰り返し。 ステッチの種類はいろいろあるけれど、複雑に見える図案も、ひとつひとつ分解していくと単純作業の繰り返しによって成立している。 この世界はなんだってそうだ、だから根気さえあれ…
当番ノート 第38期
今回は12星座のひとつで、穂を抱えた農業の神、おとめ座のお話から ** 農業の女神デーメーテールと神々の王ゼウスの間には、ペルセフォネーという一人娘がいました。ある日彼女が仲の良い友達と野原で花を摘んでいると、少し離れたところにとても美しい花が1本咲いているのが見えました。誰もその花に気付いていないようで、ペルセフォネーが近づくととてもいい香りがしました。その花を摘もうとした瞬間、大地がぱっくりと…