当番ノート 第44期
けっきょく、わたしにとって町とはなんだったか。 アパートメントの連載の話をいただいてから二ヶ月のあいだ、これまで訪れたいろいろな町をよすがに、経験したこと、考えることを書いてきた。わたしはまちがいなく「町」というトピックに惹かれていて、どうにかそれを自分を通して書いてみたかった。 思い入れのある町とない町のこと。同じ町に重なったいくつかのできごとのこと。町に紐づく、あったかどうか不確かな記憶のこと…
長期滞在者
私は心配性である。 えぇ? と言われてしまいそうだが、 一人でいる時の私の心配性はそれはもうひどい。 石橋の上を叩いて叩いて、その下に船を用意していないと怖いくらいの心配性だ。 番組やイベントの台本を自分で作成する時も、 書いていなくても大丈夫かなと思うことも、 「いやいや本番でど忘れするかもしれないし」と、ちょっとでも不安が頭をかすめることは詳細に書く。 友人とのLINEのやりとりでも、送信をし…
長期滞在者
定期的に流れてくる町内放送を聞くと、「その場所にいる」という感覚を強く意識する。なかでもふたつ、好きなものがある。 —— ここ数年間、8月のお盆のあたりには、いつも北海道の礼文島にいる。礼文島では遺跡の発掘調査が継続しており、各地や各国の学生や研究者たちが集まって、8月に調査を進めている。わたしも毎年この調査に参加しているのだ。 真夏とはいえ、北海道の北端の島は、本州と比べ…
当番ノート 第44期
「大切とは」についてそろそろ真剣に考えないと、このさき生きていかれないかもしれない。何かを大切にすることとは、わたしにとって生きることとイコールだとわかったから。 大切だと感じられるものを守ること。「守る」というのは、「庇護する」という意味だけでなく、「遵守する」という意味も含めて。目に見えるもの、見えないもの、全部。生きていく上で必要な、もっというと、死なないための矜持とエナジーは、大切なものを…
当番ノート 第44期
嵐のような雨風の火曜日から一転、爽快な快晴となった水曜日。 朝、いつものように大学の門を通り抜けると、右手に賑やかな雰囲気がある。 近所の保育園児と保育士さんが、のびのびと戯れていた。10数人の園児と、3人くらいの保育士さん。何をしているとは形容しがたいが、とても穏やかな場であることは確かだった。 穏やかな気持ちを分けてもらい、ちょっといい気分で自分の場所へと向かった。 お昼ご飯を調達しに出か…
長期滞在者
日本のビートルズと称されたザ・フォーククルセダーズ。通称フォークル。 フォークルは1965年に京都で結成され、結成メンバーは加藤和彦、北山修という2人の天才と、はしだのりひこ(通称”のりちゃん”)の3人。 帰って来たヨッパライ、悲しくてやりきれない、青年は荒野をめざす、イムジン河など、その他多くの名曲、迷曲、珍曲(多くが作曲:加藤和彦、作詞:北山修)を残してわずか数年で解散。 私の母親曰く、ラジオ…
当番ノート 第44期
目的地のある足が 異なる拍の足音を 道へ打ちこんでゆく スニーカーの四分の四拍子と ハイヒールの八分の六拍子とは 倍数ごとにふれあっては ふたたびはなれる それから革靴のアレグロを聴いたりする 打たれた足音を まちはすべて記憶しているが思い出すことはない ぼくは座って停まっている 座る身体にも目的地はあって 活動はどれもおわりを既に含んでいる いま_にしか打たれない拍 むじゃきな個別のあらわれ ひ…
当番ノート 第44期
――好きなように生きるって、どういうことなんでしょうね。 さあ……。わたし、実はあんまり好きなように生きてみたいって思ったことがないので……。 ――そうなんですか? はい。世間では「好きなことをして生きる人生最高!」みたいな空気ありますけど、困っちゃうんですよね。むずかしい。なんなら、100年くらい前みたいに、ガチガチの社会的な風潮というか、そういうものに縛られてた人生のほうが良かったかも、って思…
当番ノート 第44期
火曜日のこと。 朝、すぐ近くの商店街をいつものように自転車で通り抜ける。 駅まで行く時に必ず通るこの道は、バンや小型のトラックがギリギリ通れるくらいの道幅しかない。なので、それらの自動車と僕のような自転車とのすれ違いは、どちらかが一時停止しなければ難しい。基本的には自動車が一時停止するし、交通ルール的にそうするべきだと僕も思っている。ただ、状況によっては自転車の側が停まることもある。ルールを杓子定…
長期滞在者
岡山に工房を持つガラス作家、平井睦美さんの展示を、2〜3年に一度のペースでやらせていただいています。吹きガラスをベースに、サンドブラストという技法で、表面の削り出しと仕上げを行ったものです。本人曰く、ガラスの成形以上に削る仕事に心血を注いでいるというだけあって、実際に手にとって見た多くの人たちから、驚きの声があがっていました。とりわけ、今年の新作で初めて観た細かなドット柄のグラスや花器は、その緻密…
当番ノート 第44期
なにかにつけては海を見にいく。 比較的町のなかで育ったほうだからか、海のことはいまだにものめずらしく思っている。ものめずらしくて、かっこいい。波のかたちが変わりつづけ、潮が満ちてくるのをみていると、癒される、かどうかはわからないが、うっすらとうれしい気持ちになる。 一部の町のひとたちも似た性質を持っているらしく、SNSでは海や山の写真をよく見かける。町で暮らしていると、どうしても自然のものに触れず…
Mais ou Menos
ぴちゃんへ お疲れ様。GWも終わり、なんだか心ここに在らずな自分がいます。 4月末に精神科に行って、とうとう仕事を休職しようと決めました。つらい状態でしばらく頑張ってきたけれど、GWに仕事から離れてまとまった休みをとって、改めて自分に必要なのは休息だと気づいたの。ぴとも話し合いをしたけれど、今のわたしには考えることや、判断することが極めて難しくなっていて、頭の中がごちゃごちゃしてしまっています。と…