当番ノート 第54期
「こんな場所で死ねたらしあわせだろう」 中学時代、地理の資料集で厳島神社の写真を見て、そう考えた。 こんなに静かで、美しくて、神秘的な場所にひとりでいたら、誰も悲しませることもなく、誰にも悲しませられることもなく、石や草みたいに平和な気持ちで死ねるんじゃないか。そんなことを考えていた。 中学生の頃は、学校にうまく馴染めなかった。「自分」というものにも馴染めなかった。けがらわしい獣の肉体に自分が閉じ…
当番ノート 第54期
ずっと伝えそびれていたことをここから君に宛てる。 先生は大人になってからできた初めての男友達だ。 私たちはまったく違うタイプの人間で、共通点は同い年であることと音楽が好きなことぐらいしかなかった。でも何故か一緒にいて面白く、気楽で、なんかよくわからんがウマが合う奴ってこういう友達のことなんだろうなと思っていた。 県庁の展望台、パンケーキの美味しい喫茶店、いちご狩り、ライブハウス、遊園地……。当時の…
当番ノート 第54期
年末、そして年始を迎えた。クリスマスを過ぎ、家々の玄関には正月飾りがぶら下がり、デパートには凶器みたいな門松がぼんぼんと立ち、スーパーの鮮魚コーナーの海老は日に日にでかくなる。 日付に比例して、「もうそろそろ正月だからがんばらなくてもいいんじゃない」という雰囲気の濃度が上昇していき、31日にはほぼ原液くらいになる。 こんなときだけ社会の雰囲気に合わせる私は、ちょっといい食べ物を買い込み(普段は6枚…
当番ノート 第54期
みなさんこんにちは、イラストレーターの高松です。 この連載は神奈川県の西の、山の途中にあるあなぐらのような自宅から、誰かに届けとラジオ波を発信するような気分で書いています。全8回の5回目です。 – 先日、とあるインターネットラジオを聴いていたら「二度見知り」という言葉が耳に入ってきました。人見知りの間違いでは?と思ったのですが、聞いてみると納得。というか自分にドンピシャな言葉でした。 …
当番ノート 第54期
銀シャリのラジオを聞くともなしに聞きながら、ふたりは今、あの青いジャケットを着ているのだろうかと、ふと思った。いや、そんなわけない。音声だけなんだし、きっとトレーナーやらパーカーやらラフな格好に違いない。でもラジオブースを想像してみると、やっぱりふたりは青いジャケットを着ている。それ以外の服装が思い浮かばない。銀シャリといえば青のジャケット。青が板についている彼らが、少しうらやましい。 数年前、イ…