アラブの石油王は家来をつれて庭に出てきました。
庭のすみっこでつながれている、きもちわるい鳥の悪口を、わめきちらしています。
「あの、暖炉の上のタンチョウヅルの置物も、この、ハシビロコウの
ぬいぐるみも、わしのカツラにくっつけるクジャクの髪飾りも
ぜんぶ、きもちわるい鳥が口に入れて、つばまみれにして、ぺっぺっと吐き出して汚してしまった!
ゆるせない」
鳥は悲しそうな顔をして黙っています。
「だいたい、この鳥は、よく見ると全然かわいくないじゃないか!
いくら鳥好きのわしでも、こんなに汚い鳥はみたことがないぞ!
あっちこっち、びろびろの皮膚がでていて、いつもよだれを垂らしていて、まぶたは眠そうだし、羽だってぼろぼろだ
羽飾りなどとてもできそうにないし、明日かあさって焼いて食べてやる!
肉だって、大してうまくないかもしれないな、フン」
家来たちは怒りの矛先がそろそろじぶん達に向いてくるんじゃないかと、
怖くなってしまいました。そうなると、じぶんたちのうちの一人は
石油王からお仕置きを受けないとなりません。
鳥好きの石油王の大好きなお仕置きといえば、
裸のまま小鳥がたくさんいる鳥小屋に入れられる「ついばみの刑」です。
くすぐったくて、泣いて小屋から出してくださいとお願いしても許してもらえません。
家来たちは、「困ったことになったぞ…」と思いました。
鳥に向かって文句をいっていた石油王は、
ふと、
「そうだ。あんな鳥がリオンで売っているとわしに教えたのは、どの家来だ!?」
と思いつきました。
そして、家来たちの方を向きなおりました。
家来たちは
「いよいよきたぞ・・・」
と思いました。
石油王は
「あんな鳥がリオンで売っているとわしに教えたのは、どの家来だ!? 懲らしめてやる」
と宣言しました。
ところが、家来たちに、声が届かないのです。
家来たちも
「ご主人様、お口をぱくぱくされていますが、なにをおはなしになったのでしょう」
と不思議がっています。
石油王は気を取り直してもう一度、
「あんな鳥がリオンで売っているとわしに教えたのは、どの家来だ!? 懲らしめてやる」
と大きな声で言いました。
ところが声は届きません。
鳥をみると、石油王の言葉を捕まえて口の中に入れ、ぺっぺっと庭の芝生の上に吐き出しています。
石油王が、何度懲らしめてやろうと思って大きな声をだしても、鳥に言葉を食べられてしまいます。
鳥の周りには、つばまみれの言葉が山のようになっていました。
ねこはおどろきました。
「鳥さんはすごいなあ。ことばまで食べることができるのか」
(続く)