ねこはわくわくして空港にきました。
マグロよりも、いや、くじらよりももっとおおきな飛行機が、
空港にたくさんとまっています。
でも、待っていてもなかなか鳥が来ません。
飛行機に乗りこみ、シートベルトを締める時間になっても、鳥は来ませんでした。
とうとう、飛行機は動き始めてしまいました。
羽田上空からの東京は、大田区の工業団地のコンテナが積み木みたいに小さく見えました。
ねこは少し寂しくなって窓から外を眺めました。
「鳥さん、とうとう来なかったなぁ……あ! 鳥さん!」
鳥は窓のそとから、機内のねこを覗き込んでいたのです。
飛行機に乗り遅れたので、鳥はしかたなく飛行機と一緒に飛ぶことにしたのです。
ねこを乗せた飛行機は、「おいしい島」の小さな空港に着陸しました。
すこしおくれて、お空の向こうから、きもちわるい鳥がやってきました。
空港に降り立った鳥は得意そうです。
「鳥さんはすごいな」
ねこはすこし感心していました。
するとすぐに、人間のおとながやってきて、鳥を取り囲んでどこかに連れ去ってしまいました。
「あ!鳥さん!」
ねこは、「おいしい島」で、人間のおとなに連れ去られてしまった鳥をさがし歩いていました。
じゅうにんの一人が、有力な情報を提供してくれました。
「おいしい島」に唯一ある大型ショッピングセンター「リオン」のペット売り場で、そっくりの鳥が売られているのをみたというのです。
ねこはおおいそぎで、「リオン」に出かけていきました。
売られていたのは果たして、きもちわるい鳥本人でした。
「なんでも口にいれるとてもめずらしい鳥。オス。45万円」と書いてあります。
鳥は、せまい檻の中ですごく窮屈そうです。
「ぼくたちのおそば屋さんの売り上げじゃ、とても鳥さんを買えないなぁ」
仕方がないから、夜、リオンに忍び込んで鳥がいる檻の扉を
開け放って逃がしてあげることにしようと考えました。
夜になりました。リオンの店内はまっくらで、静かでした。
くろねこの目ライトの光をたよりに、さんびきはペット売り場にちかづいていきました。
売り場のこいぬやこねこたちは、おかあさんの夢をみて眠っています。
さんびきは、すこし心が痛みましたが、ぜんぶの子のおかあさんを探してあげることはできないから、みてみぬふりをしました。
いま、確実にできるのは、鳥をたすけてあげることです。
ねこは、檻の前でびっくりしてしまいました。
「あ! 鳥さん!」
鳥がいないのです。鳥は、お昼のあいだに売れてしまっていました。