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皮膜一枚の内と外。
自分と世界を隔てるもののあやふやさ。
でも人はこの皮の中で生きて死んでいく。
物理的な意味でも、陳腐を承知で比喩的な意味でも、自分と世界の関わりはこの皮に生じる摩擦係数の物語である。
その摩擦を、親和を、振動を、温度変化を、痛覚を、愉楽を、違和感を。
それが頑健であったり、逆に儚く溶け失せたりするさまを。
記録していく。
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言語でしか僕らはものを考えることが出来ず、言語に依ってしか世界が見えないというのに、その言語自体は常に言語化以前の混沌に憬れ、その混沌を注視している。
言語は世界を構築する柱であるとともに檻でもある。
言語の檻から出ることはできないけれど、檻に隙間があることはわかっている。
写真は、その隙間を掬う手段の一つであると考える。
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写真を撮るっていうのは、ものすごく心細いものだと思う。この心細さっていうのは、他のジャンルにはあまりない質のものなんじゃないかな。
この寄る辺なさ、頼りなさはどこからくるんだろう。
だからって、技術とか流儀とか思想とかにしがみついたら駄目なのだ。寄る辺ないままでいなければならないと思う。
結局何を根拠に撮っているか、という話になると、僕は自分の経験とか美意識的なものを、根本のところでは信用していない、という、その猜疑心が元になっている。
自分を信用しないというあやふやな地べたに立って、写真というあやふやなものに関わっている。あやふやさに楔を打つ誘惑はそこかしこにあるけれど、それを逃れて、寄る辺ないままでいなければならないと思う。
理屈はよくわからない。ただ、寄る辺ないまま行く。
(2011年9月 ビーツギャラリー『ダイドー・トリビュート』展より)
http://kamauchihideki.sakura.ne.jp/mju/mju00.html
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カマウチヒデキ写真展#3『Book of Monochrome』
3月18日(月)ー31日(日)[金曜休廊]
13:00-19:30 [月曜のみ13:00-17:00 / 最終日は16:00まで]
birdie photo gallery
〒650-0022 神戸市中央区元町通1丁目11-7 千成堂ビル4F
Tel / 090-3654-2304
http://motomachi-birdie.net/index.html
開催中です。
今回はモノクロームでの展示です。