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2F/当番ノート

燃えるスカート

当番ノート 第10期

 
won


生まれたときから、女は、女の価値をしっている。
あるいは無自覚にそう振る舞える。
あたしもおそらく知っていた。記憶もないむこうがわですらたぶんそうだった。


女であることを こわく思ったのはいつだっただろう。

こゆびひとつみても、おそろしかった。
おなじ形状であるのに、あの人とあたしは全くちがういきものだ。
みんなとおなじにみえるのに、あの人とあたしの遺伝子は全くちがう。
けれど、母親の遺伝子だけが半分、全く一緒なのだ。こわい。こわいこわいこわい。

母がこわいわけではない。あるいはこわい。
女であることを、うけいれ、あの煩わしさを誇りとして堂々としている人たちがこわい。
そうなってしまうのがこわい。
いつかはあたしも女になることがこわい。
しかし、なのに、ときどき女であることを誇示したくなってしまう自分がこわい。
なにか呪いにかかった気さえする。

ときどき、狂ったように、嫌で嫌でしようがなくなる。
すべてをとっぱらって、ぜんぜんちがう、なんにもない いきものになってしまいたい。
どこか深海の奥へ。なにか目につかない小ささへ。
なんの汚れも手あかも視線もずっととどかない遠いところへ。
性に価値など。数字に価値など。それはいつかは失われてしまうのに。


いまは、赤いスカートを風にゆらしながら歩くことさえ平気でできる。
まえほど女であることも、そうすることも、こわくはなくなった。
「女であることがうれしくなるの」
あるひとはそう言った、けれど、まだ、そうは思えない。
ずっとかみさまのこどもでいたいかった。そう悔やんでばかりいる。

赤堀 あゆみ

赤堀 あゆみ

1990年生まれ、
写真をとっている。
夏はアイスが手放せない。

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